EU憲法国民投票ペケ後のフランスおよび欧州動向はあんまりにも暗い。おまけに政治的経済的社会学的おまけにジオポリ地理学的複雑性は、その解説の“か”の字さえ、猫屋には扱いきれませぬ。
分からないことは分からないとちゃんと言いなさいと母はいつも言ってたですし(って私がどんなにほらふきだったかバレル訳ですが)、街中で気がついたことと、仏メディアを活性化させてるサルコジ・ネタについて。
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バスや列車で切符コントロールがやたら多い。メトロではまだ見てないですが、切符なしで乗ってる若い連中、貧乏人がやたら罰金払わされてます。
先日は私も引っかかりそうになった。いや、ちゃんとカルト・オレンジ(定期)は持ってんですが、たまたま乗った郊外電車すいてたもんで、Ipod でなんか聞いてて何気なしに足を(靴はいたまま、おかーちゃんゴメンナサイ)向かいの座席に載せてたわけ。そしたら肩をたたかれた。切符コントロールです。定期は見せてOKなんですが『座席に足載せると罰金45ユーロ』だそうで、ビックラこいた。郊外ゲットー系の顔はしてないつもりだったが、そうか。ま、そこはそれ貧乏人の知恵で、膝手術したばっかりで痛むのなんのって、とオーヴァーアクションで切り抜けました。45ユーロ=訳6000円ですよ。がんばり我意はある。
シャトレ近くでは、60歳代と見受けられる女性ホームレスを数人のポリスが取り囲んで“撤去”最中なのに出くわした。マットレスとかショッピング・バッグを抱えた婆さん、そこいらに住んでたんだろう。同じ界隈のスクワット、つまり住人のいないアパートに若い連中が住みつくってやつだが、これもそのうち“退去”処置になるのだろうな。
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日曜日パリ郊外クールヌーヴで11歳の子供が弾丸を受けて死亡。翌日、クールヌーブの家族を見舞ったサルコジがTVカメラを前に言ったのは以下
"Les voyous vont disparaître, je mettrai les effectifs qu'il faut, mais on nettoiera la Cité des 4000." “不良どもは消えてなくなるだろう。私はそれに必要な人員を送る。シテ・デ・4000(該当公営団地の名前)をクリーン・アップして見せる”(以上意訳)と言った。関連ル・モンド記事
これに対して批判の声が上がっている。郊外のゲットー化したHLM/公営団地での問題の根本には、失業率の高さや公共施設の不足が原因で麻薬の売買、売春、そしてグループ間の抗争が起る。単に犯罪者、あるいは予備犯罪者集団を検挙しても、警備を強化しても原因は消えてなくなるわけではない。おまけにこのゲットーでの警察官の数は前回サルコジが内務相だった期間に減員されている。
39歳の女性殺人事件容疑者が釈放された。それを受けて、憲兵士官を前にサルコジ内務相は、(容疑者釈放を決めた法務官は)«payer pour sa faute»、つまり“失敗を高く支払うことになる”(これもかなり意訳)と発言。これは現法務相も“法はすべての人間に対して平等であり、釈放の是非を決めるのは法務官。内務大臣ではない”とけん制。社会党サイドからも、三権分立の原則が危ぶまれている、とクレームがついた。ヌーベロプス関連記事
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これらのメディアでの扱いを、UMP党内2007年大統領候補のド・ヴィルパンとサルコジの“仁義なき戦い”メディア版一環としてみることも出来るわけだが、同時に、パリ市内でのポリス・憲兵の姿が急に目立つようになったり、上に上げたようなコントロールを眼にする機会が多くなっているのも事実だ。貧乏移民には生きにくい季節が始まったようだ。