まず最初のル・モンド記事(12/24付)。またしてもサルコジの名が出てきてしまうのですが、
M.Sarkozy prend date sur terrain de la mémoire
サルコジ氏、記憶領域上に日付を決める
Quatre pétitions contradictoires et deux missions concurrentes ; des historiens aussi exaspérés que divisés, des politiques (désormais) attentifs mais très embarrassés ; l'outre-mer meurtri, des Arméniens inquiets, la communauté juive sur le qui-vive : voici le bilan provisoire que l'on peut dresser, dix mois après la promulgation de la loi "portant reconnaissance de la nation et contribution nationale en faveur des rapatriés".
四つの互いに矛盾した署名運動とふたつの競合する調査;分裂しまた激怒する歴史学者たち、(やっと)この問題に注目するが当惑する政治家たち、傷ついた海外仏領土、危惧するアルメニア人、警戒するユダヤ・コミュニティ:これが“(植民地からの)本国帰還者の国家貢献に対する仏国民の感謝”法が公布されてから10ヶ月目の中間決算である。(以上記事冒頭部)
05年2月23日閑散とした議会でほぼ人知れず可決され公布となったこの法律は、もともと南仏に多く住む、ピエ・ノワール/足だけ黒い人、つまり北アフリカ旧植民地から諸国独立の際本土に帰って来た人々の票をねらったものだった。ところが、まず何人かの歴史学者が怒りました。3月25日に“植民:国が決める歴史は教えられない”という反対署名があった。1000人からの署名が集まったところで、人権リーグ・MRAP・教員リーグがジャーナリストを集めて記者会見を行った。それからムーヴメントはどんどん広がる。元植民地に住んでいた植民たちと被植民のふたつに、フランスの記憶が分断された観がある。
それからも、もちろん皆さんご存知のバンリュウ騒動も絡むし、ポリガミだの、イスラミストだのと騒ぎは収まらない。ここでサルコ氏が(何故かと言うか当然と言うか)出てきてしまうんですね。内務相はユダヤ系若手弁護士 Arno Klasfeld に調査を依頼する。これはどういうことかと言うと、アルノ・クラスフェルド弁護士の父親はセルジュ・クラスフェルド弁護士でありまして、親子そろって元ナチス戦犯の追っかけ専門なんです。大作Shoahを撮ったクロード・ランズマンにも近いからシオニストと言っていいと思う。サルコジ氏はいつだって問題を横にそらすのは上手いんですが、しかし挙句はユダヤ問題まで行ってしまう可能性が高い。ここまでのサルコの攻撃目標はシラクとドブレ(仏議会議長、同法に関するもうひとつの調査をすでに始めさせていた)だとル・モンドのジャーナリストは読んでいますが。
一行で言えば、この“植民地”問題はどんどん拡大しているのでありますね。
そして24日付ル・モンド社説 Loi et mémoire 法と記憶
もともと2月23日法は教科書に植民地政策をポジティヴに(も)記載するべし、という法でありました。で、ル・モンド編集部は実際に使われている教科書を取り寄せて読み込んでみた。結果は問題なし、つまり植民地時代は相対的に扱われていて、必ずしも植民地マンセーの何行かを付け加える必要なし、だそうです。で、疑問は同法案を提出した議員自身が、実際の教科書を丹念に読んだのか?という点です。どうもそうではないと同紙は結論する。だとすると現在行われている議論は、だいたい火のないところに火がついたわけです。
では国家と歴史、国(人民)の記憶は別物と考えるべきなのか。
だが、実は問題点は別にある。国家(=法)は国(人民)の記憶に介入できるのか、と言う問題。これは“人類に対する罪”否定を唾棄する、アルメニアの虐殺を認める、また奴隷制があったことを認める国家(=法)はどうなのよ、と言うことになる。
やんぬるかな、歴史と記憶と国家は難しい。さて次エントリは同じくル・モンドのチャットで仏歴史家が読者の質問に答えるの編をご紹介の予定です。
参考:
関連毎日新聞記事 歴史認識:植民地支配の評価巡り論議 暴動起きた仏で
chorolyn氏のとこ経由で日本ブロガーの書く 歴史への介入
以下原文
人種差別・反ユダヤ・排外国人主義的行動を戒める 1990年7月13日法
アルメニア人ジェノサイドに関する2001年1月29日法
奴隷性に関する2001年5月21日法
植民地政策のポジティヴ性を教科書で教える目的の2005年2月23日法
精力的ですね、歴史関連記事を追うのが。当方もモーリタニアがフランスによって植民地化された歴史を読んでいる最中なので興味津々です。
ところでfenestrae師匠はどうしたんでしょうね、忙しいのかな?
投稿情報: 天神茄子 | 2005-12-27 16:54
いや天神茄子氏に精力的といわれるとどうもアレですが、、それはよいとしても歴史オンチが歴史に興味持っても、まあしゃあないんだが、今回の出口がどっちに行くか次第で2007年以降のこっちの身の振りどころも変わってくるわけで、、人事じゃあない。ブログに書きはしないけど、母国もとてもソレですし、ねえ。
師匠はホント、鞍馬天狗みたいな人です。どーこの誰かは知らないけれど。だーれもがみいんな知っている♪これは月光仮面か。
投稿情報: 猫屋 | 2005-12-27 20:56