しかし、fenestrae 師匠とメディさんはいつになったら長い夏休みから帰って来るのであろうか。スイスはベルンのmari 姫はスロー・ウェブ・ライフを送ってるらしいし、天神茄子氏も内装工事中のようである。
だからというわけでもないが、って言うより実際は対アドミ戦争に専念してるはずの私にブログ書いてる暇はないわけで、でもこの大騒ぎ。黙ってられない気性なわけです。東京は下町生まれよお。おまけに今頃になって気づいたけど読売新聞の書きかたって、なにこれ。
というわけで今日はantiECO 氏のブログで書きたい放題させていただいた。しかしなんだ、あの誤字の多さはみっともない。で、antiECOさんって大手の方だったのですね。今頃反省しています。
さて、ECOさん(と書くとウンベルト・エコみたいでかっこいいです、彼は世界のおっさんの鏡です、会った事ある)に“フランスの階級”なるエントリを書きまする、とお約束してしまった。書いてみます。
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参考文献 1 内田教授の La nuit violent en France
参考文献 2 春 具さんのJMM の昨日届いた文章から、部分コピー
フランスでの今度の事件は、再分配する資源はあるのにその資 源があるグループのひとたちに対してだけ人為的に抑えられてきていた、そのことへ の「憎悪と攻撃」であるようにわたくしには思えます。そのあたりのなにかが変わら なければ、“ブルゴーニュ”で蝸牛を食べ、“サンドレンス”でジビエを食べ、“プ ティ・ジンク”で牡蠣を食べ、“エディター”でコーヒーを飲み、デュラスを読み、 “ボン・マルシェ”で買い物をする、ごくふつうのフランス人が営むごくふつうのフ ランス的な生活を、彼らはおそらく一生経験することがないままだ。
では、どうしたらいいのか。
内田教授にしても春具氏にしても、私がいつも愛読しているネットでの書き手である。年齢的には60年後半のドタバタの向こうに両氏はおり、私は手前の方に位置します、はい。
antiECO氏のところでのお話と重なるのですが、フランスを良く知る上両氏のディスクールにはどうも現実とぶれる部分があるように思えます。
20年前、こちらに来る前フランス語を習っておった学校の名物教師が、初級語学講座でいつも“フランスは階級社会であるが、日本には階級がない。これはすばらしいことだ。”と言っていた。まだフランスの地を踏んだことのない若い猫屋は“は?”と口あけたまんまでありました。
ようするに両氏のフランス理解はあの頃、つまり20年ぐらい前のまま、フィジェ/固定化しているのではあるまいか。
フランスがなんだかんだ言っても、そしてあれだけ大きな問題を抱えながら、ここまでやってこれたというのはある意味奇跡的な事実であります。そしてそうやって生きながらえてくるために、フランスはそれなりに変わってきたのも事実です。
特に、ヨーロッパの概念が現実になった。同時にユーロができた。それ以前の1989年、ベルリンの壁が消えたことが大きい。なにより、グロバリゼーションの大波でフランスも大きく変わったと思います。
この大きく変わった事項の中に“フランスの階級”が入るでしょう。
確かにUMP/仏保守第一党の幹部はWASP ならぬWASK で固められていますが、私の友人に何人かいるシヨンズ・ポ/国立政治科学院を出た連中はみな、ごく普通の勤め人とか高校教師とかの子息・子女です。ENA出も一人知ってるけど同様。逆に言うと、アッパー・クラスの友人が私にはいないってことかもしれませんが。
20年前、ソルボンヌの先生が“フランスではタクシーの運転手がゴンクール賞を取ることは想像できません”と言っていました。ことしゴンクールを取りそこなった Michel Houellebeck/ミシェル・ウェルベックはしかし、(なんか薄暗いオタクな人物で)ハイ・ソサイティーとは何の関係もない。TGVで見かけたけど、手つくり風ショルダーバッグ抱えた田舎の教師風で、まだ映画《 être et avoir 》の本物の先生の方がかっこよかった。
何が言いたいかというと、フランスの階級は20年前に比べればかなり流動的なものに変化している、と言うことです。
だが、“階級”あるいは、クラス間の明確な差異がなくなって、それでいい社会が出来るのかというとそうともいえない。
後に来るのが、単に階級のない成金社会であれば、これも困るわけです。
“平等”とは、すべての人にチャンスがあることを言う。だが問題は金持ちになるチャンスだけがチャンスではないことに、気がついてない人が多い。金持ちになることを拒むのだってチャンスでありうる。たとえばマイケル・ジャクソンに猫屋はなりたくない。選択の自由の問題です。すべての人間にチョイスするチャンスがあるべきである。そういった意味ではフランスは良い国です。大きな赤字問題があるにせよ、最低賃金も国民健康保険も高等教育を含めた学費の国家負担もある。
だが今問題になっているのはそれではない。ベースにあるのは失業問題だという気がします。そして今回の騒動に関して言えば、シテの若者が労働市場から“忘れられた”と感じていることでもあるだろう。
前のブログで今回のシテの騒動と合衆国のハリケーンの被害者を比べたのもこの点に関してです。生産性の向上と、中国などの低賃金諸国への産業移転から起こる失業問題にもっともさらされているのが、もっとも弱い立場の人々だと言うことです。それではイギリスや日本のように、社会保障の薄いまた長期就業が難しいサービス業をどんどん作り出せばいいのでしょうか。でもメイド・カフェはフランスに似合わない。(コスプレ娘はおととい眼にしましたけど。オスマンのデパート横。)
シテに住む若者の多くにとって《成功》とは、TVやラップで眼にするスパースターであって、そのスターが所有するランボルギーニや純金チェーンやプールつき邸宅を持つことです。これはホリエモンになりたい日本のフリーターにも似通っているといえなくもない。
しかしシテに住む若者の多くは、自分の住むアパートの周辺を仲間とうろつくことぐらいしかしない。学校で苦労はしたくない。パリは自分の場所とは思えないし、大体そこまで行くのに車がないと一時間半かかったりしますね。ここでの問題は、階級でも、貧富の差でもない、それは将来の捕らえ方でしょう。そのまま疲弊した団地の同じ場所で、何もしないで年を取っていくことへの怖れと不安なのだと思えます。そして彼らはゴミ箱に火をつける。
“移民”と言う言葉についてはすでに多くが語られたと思うので、ここでは書きません。一言で言えば今回の騒動を起こしているのは“移民”ではない。今日のル・モンドにエマニュエル・トッドが“移民の子供たちとその他の社会を隔てるものはない”、今回の騒動が示すのは“marginalisation/アウトサイダー化 への拒否だ”と書いています。これには私も同意するしかない。(なおトッドの全文はまだ読んでいないので、読み次第またコメントします。)その記事。←天神様、訳してくださーい、駄目かしら。
結論なしの尻切れトンボですが、この宿題ここらで切り上げ、スイマセン。むちゃくちゃ眠いのです。(こんなこったからネブロは大手になれるわけない。)
なお春さんの堪能したパリの味を味わえるのはごく少数の人々、観光客・ビジネスランチの招待客・とってもお金持ち、のどれかでしょう。ちなみに私がブラッスリーで牡蠣を食したのはたしか2年前、当時市民戦争中だったアフリカ某国に駐在していた仲間が一時帰国した時か、、、ヤツのオゴリだったですよ。
追記:(まだ寝てないよ、やだね。)“はてな”って不思議な世界ですね。なにがなんだかまったくわからん。
追追記:翌日一部書き直しました。
窓は一応締め切りで春事にふけるのがよし、ということに定めていましたが、花火に誘われてそろそろと起きだしてきました。枕の文がぴんとこないトラック・バックの代わり、無沙汰の挨拶をば。
投稿情報: fenestrae | 2005-11-13 06:29
おお、“後だし”fenestrae師匠(ってなんだかヒワイですね、もちろん冗談ですが)。
フランスの地にはもういらっしゃらないのか、などど思っていました。正確なフランス・メディア読み手が少ない気もしたし、猫屋は血の気が多すぎるし。
トラック・バックって時として、妙な連鎖効果を及ぼすようです。
投稿情報: 猫屋 | 2005-11-13 14:38
お世話になっています。antiECOです。
猫屋さんのところをハブとして、あちこちに飛んでみました。皆さん豊富な経験と知識、私の勉強不足に恥ずかしくなるばかりです。
今回日本のたくさんの人がフランスに少しでも近くなったり興味を持ち、いろいろなルーツを持つ人々とのつきあい方、暮らし方などについて興味や理解が深まることをちょっぴり期待していたりします。
話は変わって、ラファエル君は我が家にとって気になる存在です。彼の姿がテレビに映ると妻子の視線がそちらに釘付けになります。ファンという訳ではないようですが、なにかとても不思議な魅力があるようです。
投稿情報: antiECO | 2005-11-13 19:28
どもども、ECOさん、ハピィ・フュウのネブロにようこそ。
今、そちらのコメント欄が“炎上”っぽい現状を見てきました。ども、私の軽さは通じないみたい。困ったな。
ラファエルは男女の別なくもててる。私もCD買っちゃいました。フランス語を使いまわしてるところがなかなかいいです。
日本向けにフランス情報を伝えるのも難しいけれど、同国内にいて同言語を使っている人とコミニュケーションするのも難しいですね。まあ、2chが和気あいあいの平和サロンかと言うとそうでもないわけですから当然か。
どこに住んでいて、どういったメディアから情報を得ているかで、邦人でも仏人で考えかたにかなりの差が出るのは当然なのでしょう。
そしてどこでも、大手ブログからは遠く、でも深ーい識者がおるのですよ。猫屋は駄目だす。
投稿情報: 猫屋 | 2005-11-13 23:27
おお、スタンダールの読み手でおわしたか・・・
ラファエル>EuroNewsでファンの中心は若い女性、と言ってましたよ。でそのファンの若い女性、中学後年か高校生くらいが『誰とも寝てないのがイイワ』とオッシャッテマシタ。
fenestrae師匠もお元気そうで何より、何より。
投稿情報: 天神茄子 | 2005-11-15 10:40
天神茄子様、←最後一文字Bのつもり、トッド訳文見ました。ホヨ。改装中御多忙のところありがとうございます。さすが本職!!いや私めも始めては見たものの、第一パラグの真ん中あたりでひっかかったまま。かくなる猫屋、これで乱文剣士としての道に励むことができまする、かたじけない。
え、スッタンダールどこ(キョロキョロ)。高校以来読んでない。
投稿情報: 猫屋 | 2005-11-15 14:10
>シテに住む若者の多くにとって《成功》とは、TVやラップで眼にするスパースターであって、そのスターが所有するランボルギーニや純金チェーンやプールつき邸宅を持つことです。
そうなんですよね。私もこのステレオタイプにはあきれます。こんな生活している人、フランスにはそんなにはいないでしょう。また、この生活をするだけの援助を国がしてくれ、といわれても困ります。以前NTMのシンガーがテレビに出ていた時にジャーナリストから「今お金持ちになったあなたとしては郊外の若者に対して何かしようとお考えですか」と突っ込まれて「郊外の問題はぼくには関係ない、政府がどうにかすべき問題だ」と答えていました。つまり自分さえ「一抜けた」となればあとはどうでもよいと。払う立場になると世界が違って見えるのでしょうね。
投稿情報: ふらんす | 2005-11-18 14:15
ふらんすさん、お久しぶりです。
なんだかCNNがかなり激しいフランスバッシングしていて、それに日本のメディアがおんぶにだっこ状態って感じがした。
でもこういった“出来事”を通して、地元コミュニティ内の対話ルートが整っていったり、外部との交流ルートが出来上がったりして社会が成熟する部分もあると思います。
今回出来てきた在仏ブロガーのリンクもそのいい例だと思います。
投稿情報: 猫屋 | 2005-11-18 14:45