やっと天気がまともになった。3月にイッキに夏、4月は冬に逆戻りで寒い日が続き、4月下旬の今になって春、というよりは初夏と言う感じである。この週末は上天気で気温も25度を越えそう。スペイン・ポルトガル・イタリアをのぞいた西ヨーロッパは一年の半分は冬、と思って間違いはないのだ。天気がいいのはパリでいえば5月から9月始めか。良く考えると4ヵ月足らず。ロンドンなんてもっと夏は短いのだから、不平を言ってる場合ではないが、北ヨーロッパの天気の悪さは住んで見ないと分らない。ストックホルムの公園で裸になるのも、イギリスの退職者たちが小金を出してフランスの田舎に移民してくるのもこの気候のせいである。
そのせいか北西ヨーロッパの住民はある種の集団躁うつ病的傾向を持っている。5月29日にあるEU憲法批准国民投票結果の予測では、憲法否定に投票する率が50パーセントを越すというポール/アンケート結果が出て大騒ぎなのだが、案外ひっくり返るかもね、天気が持てば。政治をバカにしているつもりはない。ただ、浮動票が多いこういった選挙での揺れ動く投票者たちの心持は、理念や論理よりも日本で言う“空気を読む”のその空気=天気で決まるかもしれないのだ。
大体今回の国民投票は、一度でいいから国民投票をやってみたかったあの誇大妄想シラクの考えであった。シラクは、ド・ゴールに、そしてミッテランになりたい人である。イコンになりたい。大騒ぎや大事が大好きな人である。一回、国会解散をやって選挙で大負けという大失敗をやったが、それでもコリなかった。ちなみにあの国会解散の仕掛け人は詩人ド・ビルパン。
イタリアやドイツのように議会での憲法承認をすればよかっただけだ。ところがシラクは“EUを現実化するためには、フランス国民の意見を直接反映させるべし”風の大見得を切ってしまった。あの人はソーユーところがある。気前のいいところを見せるのが好きだ。パリ市長やってたときも気前が良すぎて、市財政を使って派手に飲み食いしてしまったりした。大物である。そんな流れでたいそうな日本美術コレクションもお持ちになっている。
おまけに、まあこれは社会党前政権も使った手だが、なんか上手くいかないことがあるとすべてブルッセル/EU議会、のせいにした。失業率が下がらないのも、農業政策がうまく行かないのも、物価が上がるのも、医療危機も、すべてはブリュッセルの官僚の頭が固いせいであるということにした。EU統一を理想化、同時にEU議会を悪の根源とする論法期間が長すぎた。まあ、今はブッシュ政権がすべての悪の根源的論説の火消しに大変なわけだが。
EU憲法批准キャンペーンもひどいもんだった。あのシラク犠牲者ナンバー1としか言いようのないラファラン首相にキャンペーン開始演説させた。告別式の挨拶みたいだった。アンケートで否定派が増えた。こんどはシラク自身が批准肯定演説をした。また否定派は増えた。もと社会党党首ジョスパンが3年の沈黙を破って、TVでインタヴューに答え憲法肯定論を語った。シラクはほっとしたが、ジョスパンもなにやら告別式挨拶風であった。
フランスが憲法批准肯定を出さなくてもEUはなくならない。ただ大もめにもめてフランスが大幅に譲歩した悪名高きニース協定が、これからのEU構築基盤になるようである。そうするとEU内でのフランスの比重はかなり軽くなってしまう。まあ、おフランスの自業自得でしょ、とツッコミも入りそうだが、それも困るわけだ。こちとら、そこに住んでるわけでして。
2002年の大統領選挙悪夢の再現か、という下馬評もある。一次選挙でジョスパンがル・ペンに敗北し、ル・ペンvsシラクという最悪の二次選挙でシラクが大勝した、アレである。反シラクの何人かは掃除用ゴム手袋をはめて投票した。投票権のない18歳未満中学・高校生がシラクに投票、じゃないとフランスの恥、というデモをやったアレである。アレ以来、大きな選挙はこのEU批准国民投票が始めてなのだ。この3年間、物価高と雇用不安もしくは失業と将来への展望のなさにあえいできたフランス国民は現政権への“NON”提示の機会を待っていたのだ。困ったな。
政府もメディアも、先日のエアバスジャンボ機の試験飛行だの、カルロス・ゴーンのルノー社長就任だのを使って、欧州の未来は明るいとか、フランス企業の大躍進とか言ってるが、ここは中国じゃないって。エアバステスト飛行に駆けつけた見物“庶民”たちはエアバスに乗ることもないだろう“庶民”なのだ。
元68年の闘士、EUエコロジスト議員ダニエル・コーン・ベンディットがEU肯定派キャンペーンにのりだした。このオッサンは元気がいい。私は元気のいい若干太めのオッサン(注:自分よりも年上であるのでこのネーミング、他意はない)が好きである。好ましい。ああなりたい。(やせ気味神経質タイプは単なる爺さんと勝手に決めている) で、いつも本気のコーン・ベンディットやクールなジョスパンの奥さん(哲学者にして元デリダ夫人)とかが上天気のフランスで流れを変えたりしないかなー、と思うこの頃。
いや、選挙の週末天気良すぎてみんな田舎に出かけて投票率最低、というシナリオもあるわけだ。またしても困る。
どうも。こちらもやっと天気がよくなりました。季節性ウツは覚えがあります。いやスイスでもこの冬は危なかったです。
EU憲法批准国民投票どうなるんでしょうね? その頃はまた休日続きではなかったですか?天気がいいと現政権肯定になって気分が良くなり、つい外出。投票忘れる。国民投票に慣れてるスイスでも投票率は意外に低いそうな。 これは慣れてるからこそ、かな?
まあブリュッセルが悪の中枢というのは ある意味ホント。相方が暫く働いていたので散々悪口を聞かされました。
いつもフランスに憧れてるゲルマニアの人々は、フランスでの批准を大いに気にしてると思います。 好きなのに向こうは好きになってくれない、でも一緒にやっていこうよ。みたいな。
天気がよいのでアップルワインを頂くことにいたします。批准されることを祈って乾杯だす。
(スイスのシェンゲン条約の投票も6月でした。これも気になるところ)
投稿情報: Mari | 2005-04-30 10:36
おはようございます。気持ちのいい朝ですね。
目覚めて昨夜遅くに叩いた本文読み返してみたら誤字ばっかり。ま、いつものことですが、そこを突っ込まないmari読者は本当に優しい方なんだと納得。伯爵様は幸運である、と猫屋が言っていたとお伝えください。
もう少し距離のあるところに生息してたら、はは愉快だな、で済まされるんですけどねえ、欧州憲法。なんか米国の行方もあやふや、、ここは欧州がふんばらなきゃ、と思うまでの余裕はたぶんないんでしょう。休暇や出張で遠地に出かけるのも多いけど、不在投票するぞ、と言うのにはお目にかかってないです。ガイジンには投票権ないんですしねえ。
ウチは今日韓国焼肉大会です。アペリティフ、シャンペンにしちまおうか、今のうち。
投稿情報: nekoyanagi | 2005-04-30 11:04
Guten Tag.
Nihongo nite sitsurei tsukamatsuri sourou.
..
Shousei wa kojinteki kagakusha nite,sugaku ni
oitemo samazama na seika o ete sourou.
Saikin eta mono tositewa,"Kiyoku tadasiku wak
ariyasui Fermat Yosou no shoumei","Goldbach Yo
sou no shoumei" nado ari.
Mata saikin,Tokushu soutairon no machigai(?)
o mitsukete sourou.
Gokansin areba yubin matawa denpou nite ohay
ameni gorenraku o onegaisitai.
Gifusi,Nagara,Sin M.apart. Hori made.
Auf Biedersehen.
投稿情報: T.Hori | 2005-06-01 05:58