9日間のPCなしケーブルTVなし日本語なし環境での休暇も明け、なにやら頭もキーボードをたたく指先も完璧にキュウカモードのままである。暖冬のまま終わるかと思われたこの冬も2月中旬から本格的になり、3月に入って欧州中雪だらけ、アフガニスタンでは寒さによる死者が急増、日本の名古屋空港も雪で閉鎖という話も聞いた。スイスの仏国よりでは零下33度まで下がったそうだ。
ね式nekoyanagi がひたすらぶおーっとしている間にも、地球は几帳面に回転し、悲惨は紡ぎ出され、人間喜劇は回転寿司のごとく回転し、情報は消費され続けていたわけで、そのなかからいくつか拾ってコメントしてみたい。
元仏財務大臣ゲマール氏の放浪
月額200万円を越す家賃を“正統的に”財務省に払わせていた正統派カトリック信者ゲマール氏は、事実の重大さに気が付かなかった/仕事に忙しく、適切な対応を取れなかったなどの自己の過失を認め、閣僚間新住居規定を超える金額と内装工事の財務省負担金額の返済負担を約束、大臣職は辞任、(現仏外務相バルニエの地元でもある)自己選挙区サヴォアでの職務に専念すると発表。なお、ENA(国立行政院)では同級生だったが主席卒業、父親が著名医学博士だった関係で現仏大統領シラク夫妻とも近い外交官クララ夫人(45歳8児の母、フランス企業海外開発促進担当官)の役職進退については今のところ情報なし。
今回のスキャンダルのネタもとについては明らかにされていないが、先週のカナール・アンシェネは、12週間という短い任期だったゲマールの前任者サルコジ(現在フランス第一党UMP党首)財務省内チームからの漏洩らしい、と書いている。ちなみに、今は一時的失脚状態の元首相ジュペの住居汚職、現大統領シラク夫妻の子息の住居費国家支払いを過去にすっぱ抜いたのもカナール・アンシェネであった。半分冗談週間新聞のカナール・アンシェネ、現在の情報グローバル化で守備範囲が国内に限られてるし、どうすんだろ、と思って内心心配したが、そこはそれタレコミ人口がいなくならない限り、言い換えればタレコミされるようなアコギな人間がいる限り、この新聞は安泰なのであるな。
こんな新聞、日本にもあれば、、、などと夢想するわけだが、これは精錬潔癖日本の皆様にラテン系になれと言うようなもんであるからコメントなしです。またシラク大統領のキャラはこのところますます魅力的になってきた。個人的には嫌いなんですが、いつかシラク特集も組んでみたい。
中国は脅威なのか否か
現在の時点では脅威ではないでしょう、と言って収まるものではないですね。私のいるところから見ると、かえって北朝鮮の脅しのほうが怖いと感じられる。これは冷戦時代、東側の核脅威の重さを陸続きでひしと体感してきた西ヨーロッパ感覚なのかもしれない。一方で中国は遠い。核搭載潜水艦についてはこちらでの報道もないし、第一イメージしにくいという面もあるんじゃないか。もちろんパリでの中国観光客の急激な増加は人目を引くし、空港税関で一個のヴィトンバッグをたらいまわしにして面税額を現金で受け取る中国人観光客たちの話も聞く(彼らはクレジット・カードを持っていない、実際の商品は別ルートで現地売りか、、)。けれど(軍備も含め)輸出市場としての中国のイメージは、感嘆といった意味での興味は引くが脅威の粋にはまだまだ達していない。若干ずれるが、対中国武器輸出に関しての仏世論について言えば、《もちろん軍備生産も販売も善ではないが、米国がアラブ諸国や日本にこれだけ売り込みをしている以上、米国傘下にない、あるいは入れない諸国が自己防衛のために軍備を米国以外から調達したいと考えるのは理解できる。欧州も自己防衛力をつけるためには武器開発が不可欠だし、軍事産業開発のためにはインヴェスティゲーションが必要。そのためには輸出が必須》といったロジックが働くかと思う。多極主義には軍事多極主義も含まれるわけです。
話を元に戻すと、これからの世界情勢は、ブッシュ大統領の(あるいはネオコン集団の)目指す世界保守革命で一国引っ張り型安定に世界は向かうのか、あるいは逆に軍産一国引っ張り型永遠テロ戦争運動に向かうのか、はたまた多極冷戦型に向かうのか。そして最後例の場合、多極とは米vs欧州あるいは、メランコリックに冷戦再現の露vs米と行くのか、はたまた新型共産資本主義の問題をクリアした後の中国vs米国が大局となるのか。(と書きながら、冷戦時のあの不安を思い出してしまいましたが、それはさておき)
先日中国事情に詳しい仏人とも話したんですが、結局、ハーバードで勉強してきたり、ワシントンのシンクタンク経由してきたような人材が日本で官僚職につき、日本政治がどんどん米国政府に近くなってきたように、中国のビジネス系や官僚系の子息がたしか(数が正確かどうかは自信ないが)15万人ほど米国に留学してる事実からは、将来の中国が米国と直接な形で対立するとは簡単には信じられない。また逆に、華僑系米国人も台湾の企業家も大規模に中国本土に資本投下をしている。(これは華僑系ばかりではない、米国資本自体が中国に大量資本投下をしている、もちろん日本からも欧州からも行ってるですね) グローバリ化して資本の動きの中での利害関係が錯綜する次元でオールドタイプの国境意識をベースにしても、あまりリアリティがないと感じられる。ただ、中国というハイパーリアリズムな、また同時にハイパー個人主義の方々の国家内で、一党独裁共産党と新興資本家がどうやって(クラシックな言い方をすれば)階級闘争をクリアするのか、というある意味21世紀的実験は、かなり剣呑な話ではあるな、と思うわけであります。
スイスで起こった若手銀行家の殺人事件
これはリベラシオンから拾いました。
先週火曜3月1日に、スイスのジュネーブの自宅でフランス人銀行家エドワール・スタイン/Edouard Stern (55歳)の他殺死体が見つかった。スイスでの銀行家殺人事件ですから、スイス当局はあくまでも慎重に情報をコントロールします。危ないお金をたくさん預かってると苦労も多いんでしょう、いくら貧乏でもそのぐらいは想像できる。というわけでミステリアスな事件の内容が、でも、少しずつだがポロポロ出てきてます。
なんと死者は黒ラテックス製コンビネーションを着用していた。アパートには鍵がかかっており、アラームも解除されていた。SM愛好家だった銀行家はお楽しみの最中に“あやまって”3発の弾丸を受けて死んでしまったのか、あるいはそれは偽装であるのか、が問題です。黒ラテックスなんとかでバットマンを想像してしまうね式はちとついてけないんですが、実はこのやり手金融業者、目的を果たすためには手段を選ばないキラーな男だそうで(なんとなく別エントリであげた村上本/アフターダークのコンピューター悪男を想像してしまいましたが)、危ないお金も扱っていたようだ。モスクワ出張の多かったこの銀行家、ロシアマフィアのマネーロンダリングをやってたんじゃないか、というのが巷を走る最新陰謀説であります。
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なお上の写真はパリのプレタ、ディオール・コレクションからのもの。エントリ内容と一切関係ありません。たんに貼ってみただけ。
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