本来、土曜は全国的に家庭の日であって、買い物や床屋、医者歯医者などに行く日なんだが、パリ圏が2週間の冬休み(別名スキー休暇)が始まったこともあり、住民はすべてだらけておる。私もだらけることにして、生産的なというか消費的な活動はしないと決めた。で、ためしに今日だけ日記。
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昼ごろから、うだうだと東京帰りの友人宅に頼んであった本をとりに行く。人形焼を御馳走になり、雷おこし・ヒヨコなどの東京名物のみやげまでもらってしまう。持つべきは下町の友人である。感謝。ライブドアとフジのTOBをめぐる騒動と、韓国ドラマの流行振りなどの話を聞く。きょとん。友人に暇を告げ、またひとりでふらあと街路上、どこに行くべか。
風が冷たく、バスを乗り継ぎサンジャック通りまで出て中華ファーストフードでホーを食す。チリとレモンでうわっと身体が温まる。春巻きでビールのオプションは今日はなし。ブログ書きながらワイン飲みすぎ。
5区の大通りを渡ろうとしたらにいちゃんに『もし、タイの人ですか。』と聞かれる。『違いますが、なにか。』『いや、タイの人と思ったですよ。スイマセン。』 ナンパされるにはちと年食いすぎ、タイボーイ的でもないし。単に界隈ではどのタイレストランが一番美味いか知りたかったのかもしれない。あるいはタイの津波後復興情況を知りたかったのかもしれないが。謎。
セーヌ沿いのカフェカウンターでコーヒー。1ユーロ、良心的。カフェは英語圏の学生で部分的に盛り上がっている。隣にシェークスピア&カンパニーという歴史的古本屋があるが、表の平台の本を眺めるだけ。なるべく早く帰って新しい日本語の本を読みたいのだ。セーヌ沿いのブキニスト(古本カウンター売り)も無視、寒すぎる。
橋を渡り、ノートルダム寺院。案外観光客がいる。東欧あるいは露系。中国人。アメリカ人がパリに戻ってきた。日本人は少ない。デパート、ブティックのほうに卒業旅行系は流れてるんだろう。久しぶりのノートルダムである。入り口前で5分ほど並ぶ。並ぶのは初めて。注意書き(タバコすうな、フラッシュたくな...)の垂れ幕に 『Welcome. Bienvenu.』 と書かれた下にひらがなで 『よこそう』 とあった。ん ?デジカメ持ってこなかったことが悔やまれる。
結局、人多すぎ。入り口付近でヴート(アーチ型天井)の高さと、支柱をしっかり見て退場。ファサッド(正面)の彫刻と大きな木製扉をちゃんと見る。以前に比べたらきれいになっている(なりすぎかもしれないが)。でも相変わらず修復工事中でした。排気ガスで石がもろくなっている。森有正の頃のノートルダムはもっと黒ずんでいたという気がする。
隣のオテル・デュウ(病院)の前を曲がって、植物市場を冷やかす。カメリア(椿)を見る。探している《侘びすけ》系はやはりなし。あっても植える庭はなし。椿姫風椿の横の竹に気を惹かれるが、ベランダにちょうどいいようなのがない。結局バスに乗り帰宅。出費:7ユーロ。
家では、すっかり冷え切ってしまったので、やたらと暖かい飲み物を取る。読書。家族から電話。簡単な掃除。TVでエアフランスのスト、フランス雪だらけのニュース。昨日の夕飯の残りを暖めて食べる(オッソブッコ、飯)。食後に頂いた人形焼、美味い。
テレビ atre でバーミアンの仏像復興の番組を見る。タリバンに破壊された55mと38mの石立像復興計画の様子。ドイツ考古学者が岩登りしながら残骸の写真を取っている。少なくとも独仏日のチームが入って現地チームと協同の様子。まずは地雷探知から始めるようだ。
そばの考古学発掘所ではアフガン考古学者(亡命後、現在はストラスブール大教授)が編み針を使って作業中。七世紀にこの地にやって北中国巡礼人が書き残した全長推定300mの横臥仏像を探しているのだ。夏のジャガイモ畑からギリシャ彫刻のような石頭が出てくる。そしてそれらを掘り起こす、現地の労働者たちの横顔は、アリストテレス風だったりジンギスカン風だったりする。1998年の立石像のヴィデオ、壁画、石像のドラペ(衣服の皺)は唐招提寺の石像の、またフランドル派絵画のそれを思い起こさせる。ガンダーラ(と思ったとたん、♪ガンダアラ、ガンダアラ♪と頭の中でリフレインが聞こえてしまう。結局高尚な人にはなれない。これも運命)。それにしてもガンダーラである。ロシア・ムージャイディン・タリバンも通ったわけだ。
このドキュメンタリーが撮られたのは夏。アルテ・ニュースでは今時点のアフガニスタン高地の報道があった。雪で峠は閉ざされ、奥地にトラックは入れない。80人の子供が下痢・百日かぜで死んだという。バーミアン仏像復興基金を人道援助にまわせと言う批判がある。けれど、仏像復興は雇用を生み出す。すでに仏教諸国から巡礼/観光客が入っている。
今夜イギーポップのでる歌番もあったはずなのだが番組表にない。これから(大衆系)インド映画特集もあるらしい。休暇中は社員が少ないのでこうゆうもんでごまかすからうれしくなるのだが、読書とどっちが勝つのか。To be or not to be. 人生は絶えざる選択である、悩みである。
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