この頃映画館に出かけるのも、美術館にでかけるのも、きわめてまれになっちゃった。なぜかというと金欠病だからである。
物価上昇率、とくに暖房費やパンやパスタ・肉・乳製品などの食料品価格高騰で、外食だとか文化系出費(新聞・雑誌購入、美術館・映画館)や衣料・靴の購入は最低限に控えるようになった。
本も、狭い我が家にモノが増えるのがいやなこともあるが、結局読まずに積んどくのは単なる自己満足だよなあ(実は読んだところで、自己満足には違いないのだが)と、本屋通いはたまにしても、ほとんど手ぶらで帰ってくる。
でも、なんか元気が足りなくて、久しぶりにオスマンとマドレーヌの間あたりのビストロで昼食。カン風臓物の煮込みを食べたら、下ごしらえがしっかりしてるんだろう香り高く仕上がってた。13ユーロだったかな、値段。カンで食べたのより上出来。店のマダムに選んでもらったグラスの赤ワインも正解だった。
気分がよくなって近場の大型書店フナックへ。
サルコ本の花盛りであるね。あと、フォンダモンタル、つまり哲学系とか宗教系、地政学系の本も(実際に売れてるかどうかは分からないけど)平台に多し。
この頃気になってるエドガー・モラン/Edgar Morin、それからレジス・ドゥブレ/Régis Debray も最近はやりのパンフレ、つまり10から15ユーロ(とはいっても1000円近くだから買いやすいわけではないが、元来の20ユーロを越す書籍に比べれば精神的負担が軽いし、ページ数も少ないから読み終える可能性は高い;日本みたいに新書というのははやってないわけ、)の小冊をそれぞれ出していて、手に取ってパラパラ斜め読みしてみる。
だいたい、モランとドゥブレを比べちゃいけない。
モラン先生は、いつかちゃんと読んでみたい気はする。読まないまま、で終っちゃう予感もする。時として話が抽象的すぎる。わざとやってるのかなあ。
ドゥブレ先生は、ゲバラやカストロとカマラッド(仲間)付き合いをしてた人らしいが、イロニーというか辛口ユーモアなのか、独特に話をコンガラカセル癖があって、読むぶんにはスリリングでも、まあ、自分の脳タリンのせいだろうけど、読み終わってもぜんぜんスッキリしない。結局先生がどういう場所でどっちを向いてるんだかわかんなくなる。本は買わず、ル・モンドに書いてる批評をネットで読んで面白がるべしと判断。
ウンベルト・エーコ先生のほうが(なんでここでエーコが登場するのかは不可解であるが、出てきちゃったんだからしょうがない)素直でいい。
さて、本題に戻る。本屋に来たのは、気になってた新刊を買うかどうか確認しにきたのだ。アマゾンでは、本にさわって立ち読みして、あるいは店員さんを捕まえて質問してみたり、ってのができない。その気になる本とは、
アスーリンがブログで扱ってた、(なお、アスーリンのブログ・コメント欄はトンデモなので読まないように、、時間の無駄なり)ジル・カペル(Gille Capel)のTerreur et Martyre である。結局購入。Flammarion 22.50euros
タイトルは、なんだ、これ大げさすぎの「テロールと殉死」。副題は Relever le défi de civilisation つまり「文明の挑戦を掲げる」になるか。タイトルはフラマリオンのマーケティングかなあ。テロールとは米国の推し進める永久戦争外交政策、殉死はイスラム狂信者による自爆を指すようだ。ここは微妙。ネオコン・ブッシュとアルカイダの位置関係は、パラレルなのか鏡の両側なのか、原因と結果なのか、、、。
内容は、911以降の中東の様子、また米国の展開する「聖戦」の実情と分析、それからヨーロッパがなしうる政治的危機脱出への可能性の提示。
特色は、アラブ語使いの筆者が、アラブ語圏ネットを読み込んで現状分析してること。シーヤ派とスンニ派の抗争や、オランダ・英国での移民政策の失敗、フランスバンリュウ問題、もちろんイスラエル・パレスティナ、レバノン、イランの中東混乱、ネオコン米国の責任なども、多くの文献(ネット文献含む)を参照しながら、分析していく(らしい)。
なぜこの本に興味を持ったかというと、カペル氏のル・モンド記事を翻訳していて、うまくいえないけど、この研究者の文章構成の、つまり言ってみれば彼のアタマの構造具合に、あっけに取られた経験があるから、なんだ。
読後感想と、それからケペル先生の提案するところの「地中海経済ゾーン」と、現仏共和国大統領の言説との親和性などについては(読み終えることができたとして)その後に。
参考:ラジオのフランス・インフォでのインタヴュー(3月3日;6分23秒) Gilles Kepel : l’avenir du Moyen Orient
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関係ないんだけど、ジュネーヴ在住のトレーダー・ブログライターであるMichel Santiが、米国の軍産システムとドル、オイルビジネスなどなど、現世界経済地政学分析を、アゴラボックスでまとめてる。最新版は:Que reste-t-il de l’Empire américain ? アメリカ帝国にまだ残されたものとは?
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ポンピドゥー・センターでのルイーズ・ブルジョワ展 (Louise Bourgeois@Centre Pompidou)6月2日まで、
アルテで紹介してて、つい、見に行きたくなった。現在97歳のアーティスト、ルイーズ・ブルジョワは、フランス生まれだけどニューヨークで活躍、ここではあんまり知られてないんだ(そうです)。作品は、かなり気持ち悪いオブジェである。
興味はあるけどさあ、入場料12ユーロって、はっきり言って貧乏人、に加えて中間生活者層にも高すぎ。
クリュニー中世美術館(現在試験的、あるいは“あっち向いてほいのいいわけ的に”入場料ただ)がネットで物品販売大々的に始めて、ルーブル美術館のドバイ別館プロジェクトも出てきたりで、まあ、これも文化の商品化現象の一部分でしかないんだけど、なんか仏国立美術館に対する信仰度がドンと低下した。
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金アリ、と金ナシの棲み分けがどんどん進むわれらが共和国の市町選挙はあした(実は今もう朝の3時だから今日であるが)。ああ。
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