ただいまGMTで13時22分。
長期化するエジプト動乱(13日目)は、これまでに政府発表で11人。国連発表では300人以上の死者を出している。シンボルとしてのタハリール広場以外でも、ジャーナリストが不在なアレキサンドリアやスエズ、その他の町でも抗議運動は続いている。
今日のニュース速報ソース
アルジャジーラ英語版特別ページ:EGYPT'S DILEMMA ←このページ中央のヴィデオ(約2分半)は昨日の状況のいいレジュメになっている。右横のLive Stream は今日の沸騰するタハリーリ広場の様子も時々写し、多方面の人々へのインタヴューや他の各地の情報も流している(昨日より内容充実)。だが、当局カイロ特派員Ayman Mohyeldinがタハリール広場で軍によって逮捕された模様(よって再び報道が制限される恐れあり)。
ガーディアン速報 Egypt protests - Sunday 6 February
ガーディアンLiveUpdate 2月5日も参照(より読みやすくなってる):Egypt protests - Saturday 5 February
BBC速報:EGYPT UNREST
ル・モンドマガジンのポルトフォリオ(写真と音声)、エジプト蜂起の出発点である若い世代の活動家を紹介している:"Le Monde Magazine" : Ces jeunes qui ont soulevé la rue égyptienne
アルジャジーラLive Stream では3日木曜の夜、橋上にいるアンチ・ムバラク派がスナイパーに狙い撃ちされるところを流している。昼間のアレキサンドリア街中で抗議派の男が銃で撃たれるところも流していた。スナイパーはプロだろう、頭か首を狙っている。昨日死亡したエジプト人ジャーナリストもスナイパーに頭を撃たれている。追記:アルジャジーラは、最初facebookにアップされた上記の狙撃画像を載せてきる:Shocking 'Egypt images' emerge
またチュニジアの地方都市Kef などではこの日曜午後、ベン・アリにつながる地区警察署長の辞任を求める市民と警官の間で抗争があり、4人の犠牲者が出た模様:(リベ)Tunisie: nouvelles violences dans le nord-ouest du pays
ル・モンドによる米国主導の中東外交ジレンマを解説した記事:Washington donne le "la" diplomatique et jongle avec des objectifs contradictoires
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上のヴィデオはアルジャージラの Live blog-Egypt protests からさっき借りてきました。GMT23時現在、Live Stream は機能してない。
猫屋:これまでの猫屋エジプト速報を読んでいただければ分かると思うけど、今起こっているのはアンチ・ムバラク派(=プロ・民主主義) VS プロ・ムバラク派(警察・秘密警察と元軍人からなる現ムバラク政権、そして雇われ壊し屋+国営TVを見てる市民。バックアップするのはイスラエル・米国)という図式であって、タハリール広場に始めは自然的に集まった抗議集団の平和的抗議活動に対し、プロ派は騎馬やらくだや投石や火炎瓶、やがては周辺建物からのスナイパーと攻撃方法を過激化させ、抗議派は自己防衛としてコンクリート片を投げ始めたというプロセスを経てきている。抗議派ははっきりとしたリーダーもいなかったし、明確なグループもない一般市民たちだ(大学の先生・医師・弁護士・軍人・学生・サラリーマン・教師・貧乏人・老人・家族連れ・失業者・多くの女性・ムスリム信徒・カトリック信徒etc.)。エジプトは青少年の人口割合が高い若い国だというのも忘れてはいけない。若い世代は、階層によって違いはあるだろうが、衛星TVやネット、twitter、facebook やSMSを使って情報を交換する。年長者が多い欧州や日本・中国などとは違ったオピニオンのダイナミックさがある。← これを、いわゆる多くの「オピニオン・リーダー」は分かっていない。同様に“民主主義”とは民衆が主権であるという原理を忘れ(怠惰からか自分たちのオーダーを守りたいからか)スタテュ・クオ(現状維持)に必死になってる。チュニジア動乱の初期に仏議会で、アイヨ・マリ仏外交相は『イデー(思想)のために死ぬなどというのは信じらない』と言っている。これは政治の政治たるところも分かってないし、世界歴史への無知もはなはだしい、自分たちの利益しか考えない今の政治家の考えをよくあらわしている。
今日のタハリール広場とカイロ市の様子、エジプト新政府とムスリム同胞団の関係、各国の指導者の発言など、もう少し調べて、のちに書きます。
(猫屋はライヴの英語と読んでる英・仏語と書いてる日本語で、頭ゴチャゴチャ、haha 。結果、肩がひじょーに凝ったのでさっきアルジャジーラ聞きながらストレッチした。)
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タハリール広場では、軍戦車・装甲車が移動する気配を見せ、博物館前では移動を阻止しようとした3青年が軍に逮捕され、博物館内に拘束された。周囲の抗議派は“我らの兄弟を返せ”と繰り返して抗議。結局その3人は解放されている。
また、軍戦車が今までの広場周囲から広場内部に入ろうとする動きを抗議派は座り込みで阻止。
広場は、数々のテントが張られ、人々はゲームをしたり歌ったりして時間を過ごしていた。また、今朝早くにはキリスト教徒(コプト)の祈祷も行われた。
カイロ市内では、銀行が3時間のあいだ窓口を開き、商店もすべてではないにしろ商売を始めた。広場では、外国メディアは自由に取材できるが、街中での取材では市民からの攻撃と逮捕があった模様。また交通整理など、警官も再びその姿を見せている。
今日2月6日は副大統領スリマンはムスリム同胞団、4月6日運動青年活動家、エル・バラダイ派などの反対派を招いて話し合い、同胞団はこれまでと同様ムバラクが退陣しないかぎり政府に参加する意志はないと会談後発表。しかし、タハリール広場での『選挙に向けた』アピールを始めたようだ。なお同胞団は蜂起運動の三日目頃から抗議に参加しはじめている。
猫屋:なお、ムスリム同胞団は、これまで政治反対勢力のほとんどが非合法化されるなか、非合法でありながら議会に議席を占めるなど、ムバラク政府とはきわめて微妙な関係にある。同胞団の性格自体も判断が難しい。エジプト社会内ではヴォランティア活動や大学の先生などのメンバーを表に出し社会内で大きな役割は果たしていても、実際には中央のラディカルなメンバーが党の方針を決めている(かつての共産党をモデルにしたのかもしれない)。フランス、あるいはスイス・英国に住んでる読者は知ってるかもしれないけど、スイス生まれで今はオクスフォードで教えてるタリク・ラマダンがいい例だろう。ラマダンは極めてスマートな(頭の切れる)男で、英・仏・アラブ・エジプト語(もっとできそう)を問題なく完璧に使いこなし、おまけにカッコもいい。だが、同胞団の起草者の孫にあたる彼の真の魅力はいけしゃあしゃあと嘘つくところ(二枚舌というやつ)。アルジャジーラにラマダンとスラヴォイ・ジジェクのエジプトをめぐる討論ヴィデオがあって見始めたんだけど、ラマダンがクールで完璧ないい男で、ジジェクが太りすぎパンダなんで、ゲンナリして見るのやめた。完璧すぎというのは、どうも臭いのだ。
今日、先日のムバラク・インタヴューを始めて聞いたんだけど、ムバラクは『今退陣して、エジプトをカオス状態に陥らせたくない。私が退陣したらムスリム同胞団が選挙で勝つだろう』と言ってる(猫:メディアは自分の都合で勝手にカットするのだ)。ヒラリー・クリントンのミュンヘンでのスピーチも結局は同じライン:このままではカオスが君臨することになる、だからetc.
同胞団が選挙に出ても、フランスでのル・ペンのように獲得票は15-20パーセントだろうと言う専門家もいる。トルコやクエートのように、イスラム政党が議会に参加しても問題ない、と言う人もいる。ここはかなり微妙;未来は誰にも分からない。
エジプトの歴史;かつて世界でもっとも大きなユダヤ・コミュニティがあった国であり、現人口の10パーセントはキリスト教徒であるマルチ・カルチャーと歴史を持ったエジプト市民が、イスラムのファトワという ←大間違い;シャリアという“法”(同胞団はコーランの説くシャリアにもとづく政治を呼びかける)を国家形態基盤として受け入れることはないだろうと思える。
今回のエジプト蜂起は、住民の65パーセントが20歳未満で、年間経済成長率は6パーセントであっても豊かさは限られた特権階級にばかり流れ、学歴があっても仕事はなく、言いたいことがあっても沈黙を強いられ、政治は腐敗し、おまけにパン・ガソリンの値段が急上昇したエジプトの青年たちが、ネットとケイタイを使って始めたP to P、つまりpeople to people 運動から始まった(この考えはAyyam Sureau から借りた)。その運動は、あらゆる階層の、あらゆる地方の、あらゆる年代の人々を巻き込んだ。彼らには、リーダーも政党も組合もない。これは今回の運動の強みでもあれば弱さでもあるだろう。だが、この運動の持つ“多様さ”というキャラクターがエジプト自体のの多様性・寛容さと重なり、ライシテをキーにした法国家(報道・発言の自由、司法の独立、自由選挙、拷問と秘密警察の撤廃)を築くことができたら、それこそ本当の北アフリカと中近東、さらにはもっと広い地区での“民主主義化”も可能になるかもしれない。
(もちろん一日2ドルで生活するエジプト人口40パーセントの人々のことも忘れてはいけない)。
なお、米国の外交方針はいまだにはっきりしない(つまり“国際社会”全体の方向性がはっきりしてない)。
はっきりしているのは、エジプト国民の多くは反米的でありムスリム同胞団ははっきり反米だが多くの都市部エジプト住民に同胞団は毛嫌いされており、米国はプロ・ムバラクだったけどイスラエルのこともあるし、米世論はエジプト抗議派を支援し始めたし、ムスリム同胞団以外にめぼしい反ムバラク勢力はないし(他にも心配事はありすぎで、おまけにこれ以上戦争始めたくないし、金ないし)どうしたらいいのか分かってない。← わかった???
参考
BBC:Egypt opposition wary after talks
ガーディアンからエジプトの特権階級に関する記事:A private estate called Egypt
フランスキュルテュール(仏ラジオ、視聴できる):Égypte : une transition au risque du chaos, avec Twefik Aclimandos et Ayyam Sureau
ガーディアン・ライヴアップデイトは、ウィキリークスが公開したムスリム同胞団に関するスリマン発US宛て公電(ロイター発表)の抜粋を掲載している。
ガーディアンのEgypt ページ 同じくガーディアンから写真集:Egypt protests: Tahrir Square in pictures
追加:(これもガーディアン経由、アルジャジーラのヴィデオ後半と同じだがより長い)アレキサンドリアのアパートの屋上から撮影された抗議派(非武装)と彼らを狙い撃つ警察と見られる男たちを取ったYouTube画像(28日と思われるがはっきりした場所と時間は今のところ不明)。最後にひとりの抗議青年は無残に銃撃されてしまう。平和主義の人は見ないほうがいい。
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以上で猫屋ライヴもGTM01時10分に終了。
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