エジプト蜂起も14日目、すでに2週間がたちました。ここパリは久しぶりの暖かい好天気で、家中の窓を開け放って空気を入れ替えています。
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カイロ、タハリール広場では今日もエネルギッシュな抗議集会が開かれていますが軍はしだいに集会会場を狭め、抗議派は中央のテント村を取り囲んで、数万と思われる人々がスローガンを繰り返し、 Ahmad Mohamed Mahmoud ;射殺されたエジプト人ジャーナリストの棺(シンボル)の葬列も繰り広げられています(アルジャジーラ・ライヴ映像)。
またバングラデシュも抗議行動が広まっているようです(アルジャジーラ映像)。
今日のニュース・ソース
ガーディアン・ライヴアップデイト:Egypt protests - Monday 7 February
アルジャジーラ:Anger in Egypt ← カイロ支局は機能してませんが、時々カイロ・ライヴ映像を流しています。
エジプト政府は抗議派に向けた譲歩として、憲法改正委員会の設置を公表、憲法改正の可能性を示しましたが、街に出ている抗議派はあくまでムバラク大統領の即時退陣を望んでおり、エジプト政府は時間稼ぎによって抗議派の疲労を待っているように見えます。
米国でオバマ大統領はインタヴューに答え『エジプトはもう後に戻れない』と語っている。
現在GMT12:00、本日のレジュメは夜になってから書きます(大きな変化があれば速報)。
今夜はじっくりメモをとりながらガーディアン・アップデイトを、リンク先やヴィデオもチェックしつつ読んでおりました。仏ニュースTV局も、大きな展開はないからでしょうが、エジプトに関する報道はきわめて短い。
アルジャジーラもロンドンとドーハ、それと開拓中の米国からの報道が多かった。米国大統領はエジプト動向をアルジャジーラ英語版で見守っていたという話ですが、米国とカナダの衛星放送網にもケーブルtv網にもアルジャジーラは入ってないんですねえ(猫屋宅にもだが)。これは、911後ベン・ラデンのメッセージがアルジャジーラから流された後遺症だろう。で、ここんとこアルジャジーラ英語ネット版の視聴者の55から60%は米国とカナダが占めるようになった。米国ではTVオペレーターに対して「アルジャ」をブーケ・リストに入れろという運動が始まったらしい。アルジャジーラのCEO Wadah Khanfar は「アルジャジーラは、米視聴者がフォックス・ニュースやデゼスペレート・ハウズワイヴズを見る以外のオプションを可能にするかもしれない」といったそうです。参考:Al Jazeera English Finds an Audience
さて本題のエジプトに入ります。現地での派手なアクションは(幸福なことに)少なかったものの、ガーディアンの本日ライヴは大変内容豊かで、英国プレスの幅の厚さと若いジャーナリストの熱気が感じられる(日本では毎日特派員ががんばってますが。。。比べてはいけない)。速報なので、エディトリアルからの制約も少ないだろうし、チュニジアとエジプトがシンクロナイズしていたと同じステップで、他メディアやtwitterからの引用やリンクを多く使って流動性もあって、こういう形はこれからの報道モデルになりえる、と思ったよ。
で、今度こそ本題:時間がある方はガーディアン・ライヴアップデイト:Egypt protests - Monday 7 February で読んでください。← 冗談だよ。
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先月25日から警察に拘束されていたWael Ghorim が解放されました。グーグルの北アフリカと中近東マーケッティング部のヘッドである彼は、蜂起に参加して2日目に街中で私服の男たち3人に逮捕され。実に12日間、捕まっていたわけだ。その間、ひどい待遇は受けなかったと言っています。リーダーのいないプロ・デモクラシー派は彼を英雄扱いしているそうですが、本人は「ただ、これまでの腐敗したエジプトが耐えられなかっただけで、皆と同じように抗議派facebookを友達と作って、街での運動にも参加しただけだ。ヒーローなんかじゃない;みんなが街で戦っている間、12日間寝てただけ(以上要約)。」といってます。なお、釈放後すぐtwitter で「Freedon is a bless that deserves fighting for it /自由は、そのために闘う価値のある祝福だ」とメッセージを送っています。彼のTVでの発言も興味深いものですが、アタクシ時間ないし、大体ガーディに記されてる英語翻訳は出来が悪いそうで、やりません。
人権リーグ・センターで36時間の間逮捕されていたDaniel Williams の証言も衝撃的です。突然オフィスに一人の私服警官ともう一人の制服の警官がやって来て、スタッフに向かって床に座り両手を頭の上にのせろとさけぶ。「お前たちはモサドから来たんだろう。スパイだ。」 彼らはオフィスの窓ガラスを壊し、オフィス内を破壊する。スタッフの後ろ手両手に白いプラスティックのバンドをくくりつける、各自のバッグにPC・財布・パスポートなどを詰めさせて押収。それから2階に上がらせ、そのまま数時間の間床に座っているよう命令、さまざまな暴語を浴びせ、途中で別の若い男が通りからやって来てスタッフの一人の頬を殴る。そして若い男は言った「Wellcomme to Egypt. This is Egypt!」。(猫:この原文読んでて映画LA コンフィデンシャルを思い出した。カイロ2011年はLA1950年代なのかあ。。。それともエージェントが米映画ファンなのかなあ。。。両方なのかも知れんが。。。)
ガーディアンによる、新しく明らかになった逮捕者リストの部分です。
independent film maker Samir Eshra and Abdel-Karim Nabil Suleiman, who blogs under the name Karim Amer. Amer was the first blogger to be prosecuted in the country, when he was jailed for four years in 2007 for insulting Islam and the president (http://www.guardian.co.uk/technology/2007/feb/23/news.newmedia). He was released in November last year.
オバマやスリマン、ムスリム同胞団の動向・発言はここには紹介しません。他のプレスやメディアで見つかるからね。
ヒューマン・ライト・ワッチがエジプトの病院や死体安置所で確認した死者数(これを上回る可能性あり)
- カイロ 232名(内217名は1月30日に死亡) (2月2・3日のプロ・ムバラクとプロ・デモクラシーの攻防での死亡者は15名)
- アレキサンドリア 52名 (内2名は2月3日死亡)
- スエズ 13名
カイロ・エジプト博物館で損害を受けたオブジェは70。ヒョウの上に立つツタンカーメン像、3500年前の木製サルコファージュ。2頭蓋骨(ミイラではない)。博物館はもうすぐ開館される、そうだ。
なお、多くの銀行と商店が業務を再開したが、学校とカイロ株式市場は今も閉まっている。株式市場は土曜に再開のみこみ(猫:早く開けて大下げはよくないし。。。)
興味深いリークはふたつ。
・ムバラクのドイツ長期療養説:シュピーゲル・オンラインは、現在エジプト軍部と米政府が、ムバラクがかつて手術を受けたドイツの、バーデン・バーデン近くのSPAつきクリニックに“精密医療検査”のため滞在というシナリオを内密に検討中という噂があると報道。これに関して質問されたSPDスポークスマンは、それが実現すればエジプト安定のためにドイツが貢献できる、とコメント。(猫:アタクシ英国のジョークは外人向けのぐらいは分かるが、ドイツのは全般まったくわかんないのだ。) ちなみに、ガーディアンによればドイツは2010年に全額30 000 000ドル、2009年は77 500 500ドルの軍備をエジプトに売却しており、その内の自動小銃は、エジプト警察で使われている。
・インディペンデントの中東特別特派員フィスクによると、ワシントンからの“個人的”特使としてカイロでムバラクと会見したフランク・ウィスナーは、2年前からニューヨークとワシントンにある法律事務所Patton Boggsに顧問として働いている。だがその法律事務所の大型クライアントのひとつがエジプト政府だという話です:US envoy's business link to Egypt
本当に“あの”世界は狭い。
では、こちらの“世界”の話題です。
このヴィデオは、タハリール広場を見渡せる建物の屋上で友人たちとテントを張って監視にあったってる、ビジネス・ディグリーの資格はあっても仕事は見つからない若いエジプト青年がインタヴューに答えて、チュニジアのこと、現政府のこと、自分たちの運動のことなどを熱を込めて話しています(英語字幕つき)。チュニジアでの街の声でも、人々の現状判断力と未来への希望の強さに驚かされましたが、この若いエジプト青年のクールで同時に熱っぽい意思には驚かされる。必見。なお下のバーのイングリッシュをクリックすると字幕が読めます。
他にも紹介したい事象・書きたいことは色々あるんですが、今日はおもてを歩きすぎて疲れた。あとでまた続けます。また、大きな変動がない限り、毎日猫屋エジプト速報は一時中止。もう少しノンビリモードで続けます。
ただ、エジプト状況は、米政府の態度は毎日方向が変わるし、今実際のエジプト政治を牛耳ってるのはスリマン。対する組織化された反対政党はムスリム同胞団のみという情けない状況ですが、タハリール広場に踏ん張る人々を中核としたプロ・デモクラシー派はカリスマリーダーも組織もスポークスマンもないままがんばってる。チュニジアもそうですが、“民主主義”が根を下ろすには何十年もかかる。でも、それは思いがけないところで始まったし、彼らが道を示すなら、そして、とんでもない罠にはまることを避ければ、他の国々でも(たとえば仏国でも)、まっとうな“民主主義”への道を求める市民のばらばらな声が、ひとつにまとまる契機になるかもしれません。チュニジアとエジプトの行方からは眼が放せません。
では最後に、タハリール広場からのむちゃ騒がしい(きのうの結婚式のあとかも)ヴィデオでオヤスミナサイ。
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