“謹賀新年、現状俯瞰”なる記事を用意してたんだけど、リンク先とか確認する間に、新しい情報がどんどん入り、結局まとめられない。
で、ひとまず“七草粥”の今日中に、御挨拶であります。
皆様と皆様の御家族に、健康と平和の一年が訪れますようマジで祈っておりますです : 猫屋寅八
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二週間ほど前ですか、欧州議会でフランスからの議員ふたりが提出したレポートによると、世界に流通しているデリヴァティフとフォレックス(為替)のキャッシュ・フローは、世界全体のPIB(GDP)の10倍だそうです。あきれる。
これは、ネイクド・ショートとか、かつてアーサー&アンダーソンがエンロンをめぐって展開し、同じ要領でギリシャ財政をめぐってゴールドマン・サックスが使った、負債を証券化しアクティヴに化けさせる方法で(サブプライムもおんなじ仕組み)、どんどんヴァーチャル・キャッシュ・フローが膨れ上がった結果です。
また各国政府は2007年2008年の金融危機発生時に、それぞれのプライベート国内銀行破綻を防ぐ目的で、大型の融資を行ったが、それに対する交換条件は出さなかった。本来であれえば、国家が大型融資するということは国有化、あるいは国家から銀行上部に監視部員を送り会社管理をコントロールするんだが、それは皆無。
同時に、各国中央銀行は、国内銀行間の相互融資が枯渇していく状況下で、ほぼタダ金利で各銀行に融資した。
銀行は早々と国家からの借金を“返済”し、“本来の”業務(ビジネス・アズ・ユージュアル)に戻って、最大のゲイン、と結果する最大のボーナスと最大のストックオプションを自己オファーするまでになった。
バーナンキはQE1 とQE2 で市場に超大量キャッシュを投入したが、最大の問題である米雇用は今でも活性化する様子はない。
欧州中央銀行も、ユーロゾーン規定内では不可能だったはずだが、欧州各国の債券を市場で買い集めているけれど(ここいらへんの事情はまた別に書くつもりですが)欧州とユーロゾーンの大量出血を止められないでいる。
そして、
今同時に懸念されるのは、世界各地で始まった“インフレ”です。ちなみに欧州のインフレ率は、12月のユーロスタット発表で2.2パーセント(11月での数字は1.9だった)。
雇用・給与の上昇を伴うものなら、ある程度のインフレは経済・社会を活性化させる要因でありえます(ちなみに欧州中央銀行の許容インフレ率は2パーセント、IMFのストロスカンの説では4パーセント)。
けれど、今ここで起こっているのは、深刻な失業問題と、それに伴う平均収入の低下、それと国家による失業者・低収入者への援助削減です。賃金上昇を伴わないインフレは、経済危機時の一般市民生活をさらに厳しいものにする。
NYTでクルグマン教授は、この価格上昇は、新興国の産業が伸び、それら各国が原料を大量に買っているからだと説明している。The Finite Would
だが、たとえばバルティック・ドライ・インデックス(乾いた原料を運ぶ輸送船インデックス)を見てみると、いったんは上昇したもののここのところ急激に下がり、現在数値は危機真っ只中にあった2008年とほぼ同じレベルだ。つまり、先物価格は上がっているが、実際に取引されている現物は少ないままだということです。
説明してみます。
まずは数字:小麦値段はこの一年で2倍になった。原油は19パーセントアップ。金は25%。銀は83%。数字をメモした産物はこれぐらいですが、他の原料も急上昇しており、綿・天然ゴム・大豆を含む各種穀物・コーヒー・砂糖・ニッケルetc. 一番上がったのは銅:記憶で言えば、この2年で3倍に上がっている。ロンドン市場で銅を買い占めたのはJPモーガン・チェイスだ(ペーパー上の指数ではたしか80パーセント以上)。
こりゃ、ちょっと考えればアタクシにだってわかる論理だ。
ほぼタダの金利で放出された“キャッシュ”は、リアルな経済を潤すかわりに、スペキュレーションに流れた。
現在では、小麦や砂糖やカカオを自分の倉庫に持っていなくても、好きな時にヴァーチャル世界市場のなかにいる誰にでも売ることができる。おまけに、株式やフォレックスで使われているHFT(ハイ・フレコンシー・トレーディング)が先物市場でも用いられ始めた。まあ、流れとしては当然だろう。ヴァーチャル世界市場でのアクター達は、原料の種類は異なっても、株式や債券といった古典的フィールドから、さらに規模の大きな市場へとその活動を拡大する。その主要アクターとは、メガバンクとメガ・インシュランスとメガ・リタイヤ・ファンズ、そしてそれら関連会社のヘッジ・ファンズだ。産出国も、売り控え、原料をストックしやってくるだろう価格上昇を待つ。流通量が低下し港に停船しているタンカーや製油所に、原油や天然ガスはよりよい価格を待ってストックされる。それらのストック場所のすぐとなりで、地元の人々が飢えても、それは経済・金融合理性にとっては些細なディテールでしかない。
また、南米諸国やアジアや南アフリカの新興国にキャッシュを大量に投入し、インフレを起こさせているのも同じアクターたちだ。たとえば、今のところブラジルはドル購入で対抗しているが、これはドル準備金が限定されてる以上、際限なく続けられる政策ではない。
大雪のあとは大雨のフランスからもそんなに遠くないアルジュリア・テュニジアの大・中都市での、若者たちの反政府反抗行動が、先週あたりからこちらのメディアでも報道されるようになりました。
直接のきっかけは、砂糖や小麦の値段が一挙に20パーセント上がったことだそうだ。でもその背景には、(学歴があったとしても就職できない)若者たちの高い失業率がある。
これは、どこの国でも同じです:ギリシャがそうだったし、スペインもそうだし、ここフランスも(バンリュウでの若年者失業率は46パーセント)。これは英国でもリアルな問題になりつつある。かつて、フランスでバンリュウが燃え上がった理由でもある。
この次には、ここフランスで直接目にする状況も含めて欧州全体の問題、また米合衆国や中国で起きている事象とも共通する各問題点や、バンクオブアメリカ(とGS)の新情報を公開しようとしているウィキリークスの可能性なんかについても書くつもりです ←考えただけでもため息出ますが、、、まあ、やってみようと思う。
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健康と平和を分かち合うために、我々に必要なのは何なのか、もう一度考え直さねばならない一年に、2011年はなると考えます。
今夜のおまけ:オペラが好きな方はどうぞ;これが欧州のいいところであるね。
Vive, la Vie !
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