右の写真は10月20日、年金法改正に反対して“審議”の進められているセナに向かおうとしてCRSに阻まれたデモ隊をロイターのカメラマン、Charles Platiau が撮ったものです。なんともいい出来なので、ボストン・グローブから勝手に借りてきました。The Big Picture のページにはこの他にもデモとストをめぐる40ほどの写真が高ピクセルで掲載されてます。
9月初めに始まった年金法改革議案ですが、担当労働相ウォルトのスキャンダル(大蔵大臣とUMP党財政担当責任者を兼任、夫人はロレアル大株主のリリアン・べトンクールに資産管理のためやとわれてた)に加え現行政府の強硬な態度(労組代表との会見はするがネゴはしない)に、国民の多くは反発。いままでに6回のスト・デモが全国で繰り広げられ、かなりの人が街に繰り出した。組合側の数字では最高で35万人(ル・モンドのページLa carte des manifestations du 16 octobre参照、なお19日のグラフは見つからなかった)
先週あたりの意識調査では、人口の70パーセント近くがストを支持、10日ぐらいまえの調査では人口の54%がゼネストが必要と答えていた。また労組と政府のネゴを求める率も70%を越えていた。
だが、金曜の夜にセナで“強行採決”が行われ(審議に参加していた議員は、、、77人)、石油精製所でスト中の組合員は“国防に関する緊急事態”に関する法により徴用されピケは解除。リヨンのベルクール広場ではヘリコプターも動員して集まっていた高校生・Casseurs を CRSが5時間にわたって包囲。TVや大手メディアもも19日ごろから報道内容を一変させている。
写真はパリの高校前にピケを張る生徒たち、右の旗には《13ans en taule, 16ans pas responsable, 25ans au chômage, 70ans ...au taf 》 とある。「13歳で刑務所、16歳は無責任、25歳で失業者、70歳は、、仕事中、」
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ル・モンドから若手哲学者ティンティア・フレウリのインタヴュー挙げておきます。上のが無料の短いヴァージョン。下のは会員向けロング・ヴァージョン。
Cynthia Fleury : " La démocratie, ce n'est pas la réciprocité des mépris "
Cynthia Fleury : "Diriger, c'est conduire un peuple avec son assentiment"
ティンティアが政治経済を語る哲学者なら、哲学を語る経済学者フレデリック・ロルドンのブログla pomp à phynance 記事も貼っておきます(長いのでアタクシはまだ読み終わってない)。 結局、国民の代表であるはずの仏政府は、国債のトリプルAを失わないために年金制度を改正する。つまり、国の主権は国民にあるのではなくて《金融市場》になったんだ、と書いています。Le point de fusion des retraites
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こちらは年金制度改正を一般人に解説したEco89の記事:Retraites : le débat expliqué aux nuls et aux jeunes insouciants
うちのブログに何回か登場したトマ・ピケティ教授のヴィデオ記事はこちら(今年3月のもの)Universaliser le droit à la retraite; Entretien avec Thomas Piketty
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マルセイユではゴミ収集車のストで大変だったようですが、結局は徴用令が出た。イタリアのナポリでも、自然公園内にゴミ処理場を作るってんで市内ゴミだらけ騒動になっているようです。ドイツではシュツツガルドの新駅建設をめぐって反対運動が盛り上がっているし、となりベルギーでは分裂騒動の流れで無政府状態。スペインではすでに何回もゼネストが行われた。
イギリスでは新連合政府の打ち出した金融引き締め政策で、合計45万人の公務員が解雇される予定だそうです。
結局のところ、ショック・ドクトリン(ナオミ・クライン)のシナリオどおり、金融危機が社会福祉システムを破壊し、(少なくとも欧米では)金融経済がメタ国家として帝国化するに至るわけだ。
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報道ではSNCFパリ郊外線は2本に一本が運行中とあるが、我が家の方では走ってるのは八本に一本だけ。今フランスはtoussaint の学校休暇中ですが、全国的財政困難症の結果ヴァカンスにでるのは人口の20パーセントだそうであります。
寒いし。
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年金法改正とは直接関係はしませんが、トヨタ式新型マネージメントがどこでも導入されて、“労働”あるいは“雇用”の概念自体が大きく変わった。グロバリゼーションが進んで簡単に国境を越えるキャッシュ(資本)や企業・製品は、国境なき競争を推し進めたわけです。
現行の通貨戦争は長く続くだろうし、欧州・英国の財政引き締め政策はさらに不況を悪化させるだろう。生産過剰と大型不況は必然的に労働条件の悪化と給与の低下、大型の失業を引き起こす。
そんなわけで、元PTT(仏郵便電話局)から民営化されたフランス・テレコム内での労働条件を扱ったEnvoyé spéciale の番組ヴィデオへのリンクも貼っておきます(画面の下のほうのボタンを押すこと)。
Que s’est-il passé à France Telecom ?
france3から、“労働条件”がテーマのもうひとつのドキュメンタリーです。
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