とにかく、親方日の丸の看板だった日航が上場廃止しトヨタは全世界で800万台(この数字には自信なし)とかをリコール。京都の四条河原町の阪急も、有楽町の西武も閉店。まあ、有楽町西武は前を通ったことはあっても入ったことないから感慨は湧かんのだが、京都の阪急閉店はかなりさびしい。なにしろ京都は高校生の頃から時々く遊びに行ってた街で、四条河原町といえばセンスのいい、でもちょっと冷たい感じの(大阪の子に比べればと言う意味)女の子がさっそうと歩いてるって記憶があるからだ。京都駅の伊勢丹は便利だけどなんか地下を除いて“キョートの”という風情がないし、、といっても昨今のショッピングセンターってのはワールド・ワイドにおんなじコンセプトなんだからしょうがないんだろうが。。。
ついでにローカルな話になるが、アタクシの行ってた近所の新聞・雑誌・タバコ屋も一月末から閉まったままである。困っている。パリ三越も9月末で閉店だとか。不況もワールド・ワイドに猛威を振るっているのだ。
*
ドルが急落するんじゃないかと思っていたら、なんだ、ユーロが危ないそうである。どこがどう危ないのか、プレス読んだりエコノミストの言を聞いたりしたんだけど、どうもすっきり分からない。母国ブログ界では、非専門家でも各種問題に『これはこう』とちゃんと論調なさってるエライ方々がいるようだけど、アタクシなんぞはこの頃なんも分からん。すぐ『陰謀』説に行く御仁もいるが、あれもなんか的が外れてると思う。明らかな『陰謀』と非『陰謀』の間に線を引くのがプロだし、責任なしで何でも言っていいのがアマチュアである。最悪は、最初から操作する意図を持ってガセネタを流す“プロ”だろう。
まあ、アタクシは書きながら考えを進めているだけの『文章修行』目的のアマチュアで、読んでくれてる方々の数も極めて限定されてるんで、気が楽なんですよね。
*
一月の米国失業率が若干下がった関連で、早くも不況脱出の声が聞かれたけど、実際はパートタイムの仕事を2つとか3つ掛け持つ勤労者が増えたことと、仕事探しをあきらめて失業登録しない人口が増えたことに所以する、という説がある。
リーマンショック以前にすでにリセッションに入っていたフランスでは、今年中に失業手当が打ち切りになる失業者の数がかなり多いんだが、彼らは現在の失業者数にはカウントされてないし、日本や米国同様にパートタイム・短期雇用が一般化してきたから、今の10パーセント前後という失業率全体数も、注意して検討するべきだろう。現在の不況はまだ4・5年は少なくとも続くと思われるが、世界の雇用環境はこの間に大きく書き換えられるだろう。
世界的に言って、昨年の経済成長率上昇を支えていたのは、国家援助が大幅に投入された自動車業界好成績の影響が大きかったはずだし、自動車ってサイクル型だからね。いったん買ったら3・4年、今の御時世では5年ぐらいは買い換えないんじゃない?オバマの米国が軍備費拡大してるけど、民間航空業界や観光業はどこでも大幅縮小してるし、頼みだったドバイだってああなっちゃった。中国の成長率は相変わらずスゴイけど、あの国の示す経済指数はいまいち信用できない(なにせ、国家統制経済だ)し、汚職・汚染・自然(人工)災害や社会問題の実情も明確には分からない。元のレートを上げず、経済危機大型政策後の不動産バブルを、中国政府はどうやって防ぐんだろう。
アタクシには分からないことだらけなのだ:で、ボヤっと考えてる間に時間は過ぎていく。で、ブログも書けない。
そしたら、今朝のラジオFRANCE INTER でダニエル・コーエン教授が出てて、いつものすごいスピードで説明してくれた。教授の話を聞いてみよう;以下はアタクシが分かったところの猫式レジュメであります。
**
1) EU経済危機のはじめはギリシャなんだけど、まず、格付け機関(民間)3社がギリシャ国債のランクを下げた。それに対して欧州中央銀行の中の人がうかつにも『年末までにギリシャの格付けが危機以前のものに戻らない場合、欧州中央銀行はギリシャの借金を保障しないかも』と発言。実際には、ユーロ導入の時のお約束で、欧州中央銀行はユーロの金利を定める(=インフレを抑える)役割はあるんだけど、欧州各国の経済政策の独立性を保障するためそれ以上の介入はしないんだ。そこで、各国は国債を一般金融機関に売却し、それを格付けが変わらない条件で中央銀行が買い受ける仕組み。だが、中央銀行の発言が金融界に波紋を投げ、ギリシャ破綻可能性の話に続いていった。ここで、コーエンは2007.2008年のクラッシュ(サブプライムとリーマン・ブラザース)を予見できず該当金融機関をAAAと格付けしていた民間機関が、一国の破綻を予言し、EU組織あるいは欧州中央銀行が緊急処置を取れないでいる現状を批判している。たとえば、国家赤字をGDP(PIB)の3パーセント以内におさえ、それを越えた国家からは違反金を取るという当初の決まりを、現在の大規模経済危機時にも当てはめるのはまったく非常識だと教授は言う。欧州と欧州銀行が欧州内の国をすべてバックアップすると示すだけで今回の騒ぎは収まるだろう。また、実際のギリシャ経済の1/3は表面に出てこない(税制を免れる目的の)パラレル経済活動でささえられている。これは、数字には出てこないがギリシャ経済の隠れた力だ。なお、ギリシャの赤字は12.7%(猫屋;ちなみにフランスの赤字は7.9%)なんですが、これはギリシャの保守前政府が数字の操作をしていためで(選挙前の国家赤字は3.7%だった)、新しく政権に就いた左派系政府はその大型赤字を背負い込む形になった。
2) シティで言うところのクラブ・メッド、最近はPIGSと呼ばれてるポルトガル・イタリア(以前はアイルランドだった)・ギリシャ・スペインがユーロの虚弱国家といわれてる。つまり、金融アタックを受ける可能性が高いんだが、実はポーランドとチェコを除いた東欧諸国の実情もかなり厳しい。危機以前、西欧あるいはアングロサクソン系金融が入って大幅にユーロを貸し出し、あちらも消費・不動産ブームになってたが、実際の国内経済は充分発達しない(給与が上がらない)まま経済危機に突入、欧州のサブプライム化し金詰りが起こったわけです。そうやってプレスは報道しないが、人知れず危なくなってる国は欧州だけじゃなく世界中に存在してる。--- 猫屋コメント:欧州理事会の新議長も外交担当責任者も、各国は自国の利益を第一に考え、結局は政治力・影響力・行動力の少ない極めて影の薄い人物を選んじゃった。結果、EUは外交面でも経済面でも統一した声を持てないでいるんですねえ。こちらのギャグで、オバマがEU代表と話そうと電話するんだけど、録音メッセージが流れて『ドイツと話したい時は1、フランスは2、スペインは3、、、の番号を押してください』って言ってるのがあった。まさにそれです:ああ、情けない。ついでの話ですが、今回のギリシャ騒動の報道ってFTあたりから出てきたような気がする;たとえば、Short View: Greek bonds。(ブラッド・ピットとアンジェリナ・ジョリの別れ話もかの国のゴシップ紙が書いて、それを全世界のプレスが一斉に大報道した:これと同様なメカニスムで金融系も単一報道を、裏づけとか批判とかなしにそのまんまイッキに世界中の業界人に流通してしまう、という恐ろしい複雑系の時代になりました)。たとえば米国カリフォルニア州の赤字もギリシャといい勝負の12%だったはずで、ギリシャが大変なのは事実だが、ヨーロッパでも東の国々、あるいはアジアの国々の経済状態もかなりひどい。なぜ今ギリシャが槍玉にあがったかと言うと、相変わらずキャッシュがあまってる(=相変わらずスペクレーションしてる)ヘッジ・ファンドとヘッジ・ファンドとつながる金融業者たちが、ギリシャを狙ってる模様:クワバラ。どうもCDS(credit default swap)、ギリシャのデフォルトで儲かると言うデリヴァティヴ買ってるらしい。ル。モンド記事:Rumeurs, paris irrationnels : les spéculateurs attisent l'affolement des marchés こちらはリベ系ブログ:Grèce : les marchés redoutent une intervention de la zone euro
国家が大量に資金導入して破算を食い止めた金融業が、いったん“生存競争”に勝ち残り、競争相手が少なくなったらまた大型ボーナスの支給を再開し始め、同時に(系列会社を通して)リスキーな投資も始めている。タックス・ヘヴンが本当になくなったという話もないし(相変わらず多国籍企業の多くはそれらの地に会計の籍だけ置いて各国国家への税申告を免れている)、ヘッジファンドも元気を取り戻した。そりゃないじゃん、と高い税金払ってるアタクシは悔しいわけです。レギュレーションなんて経済活動の足かせにしかならないし、やっても市場はすぐその裏を掻いてしまうから無意味だとするネオ・リベラル無政府資本主義派の主張に対しては、それがトムとジェリーの果てしない追っかけごっこのようなものでしかないとしても、市場は永遠に拡大するわけもなく、ストッパーとしてのレギュレーションを設定しないかぎり、利潤追求(=リスク追求)システムはやがて自己破壊という壁にぶち当たるだろうとしか答えようがない。また、ここでは詳しく書けないけれど、国際レギュレーション機能の失敗例としては、H1NIのA型インフレインフルとWHOの報告問題があるんだが、これは強力なロビーとWHO内オーソリティーのつながりが原因なわけで、こういった癒着に対してはシステム外からのフィードバック(ひらたく言えば民主主義)機能を強化してくしか対処の方法はないんだろう。サブプライム・リーマンショック時は、該当金融機関のCEOでも自社が扱っている金融商品の中身を把握していなかった。これが私たちの複雑系単一普遍文化(=マネー;そこでは借金も資産として数えられている)システム社会のリアリティーである(付け加えれば、このシステムへの反動として極端なナショナリズムが出てくるってのは歴史の教えるところであるね)。以上、猫屋コメント終わり。
3) ロシアの問題は簡単:あの国の経済は、原油と天然ガスだけに依存している。オイル価格の下降変動が大きいから、ロシア経済の変動も大きい。それだけ。ロシアにはこれまでに溜め込んだ資本がある。
4) トヨタ:GMの破綻後に世界ナンバーワンになったトヨタだが、現在のリコール問題は、かつてのフォーディズムに比較しうるトヨティズム;コストダウンを目的としてカー・コンセプション以外を現地外注に任せたトヨタ・システムの最初の危機だ。
(猫屋コメント:トヨタと同じプラット・フォーム工場で作られてたプジョー・シトローエンもかなりな台数のリコールが出た。トヨタもムーディーズの格付けが下がってて、ギリシャのこともあるし陰謀説を唱えたい気分なり。)
5) もちろんフランス破綻も格付け会社内部では想定しているし、これはナンセンスなんだが米国がAAAを失う可能性まで話として出てきている。ドルを刷ってそれを国債として借款している米国は、インフレの場合はあるとしても破算しようがないし、するとしたらそれは世界中全部の破綻をもたらすだろう。また、ユーロは加盟国を2007・2008年のクラッシュから欧州諸国を守った。ユーロを放棄する理由はどこにもない。。。などなど。
ヴィデオ貼っておきます。一つ目はインタヴュアーの、二つ目はラジオ視聴者からの質問に答えてる。
***
コーヘン教授の新刊紹介ぐずぐず後回しにして、まだ手つけてない:もうすぐやります、というかやりたいです。
****
経済ばなしのあとは、同じくフランス・アンテールから辛辣お笑い系オマケ:テーマはクリアストリーム。現在のところ最強の反サルコ勢力であるステファン・ギヨンのラジオ・クロニック・ヴィデオなり。かの君を狂牛病にかかったアル・パチーノと形容しております。
コメント