相変わらずイタリア・ルネッサンスにハマッテおります。
フィリッポ・リッピという人物は面白い:宗教と俗がミックスしてる。
まああのころのアムステルダムやフィレンツエやシエナとかのレパブリック都市、ベニスもそうですがブルジョワの街が羊毛とか絹、それプラス東からやってくる物品の商業貿易で栄え、古今東西の価値ある文芸・建築技能知識が集まってくる。もちろん金も集まってるわけです。
十字軍の流れもあるし、東ローマ帝国消滅なんかもあったしね。するってーと都市間の競争になって君主・商人たちは勝れた人物を雇い入れるんですね。アトリエ/ファクトリーが発達し、コラボが可能となり才能のあるものが(生まれはどうであれ)名を成すようになる。で、フランドル各都市でもメディチなんかもそうだが、宗教画に地元名士の肖像を描き入れる:注文主、つまりパトロンだからね。で、リッピはその宗教絵画の片隅に自分の肖像まで描き込んでいるわけです。ここいらへんで、職人;artisan と芸術家;artiste が分かれていくんだね。メチエ/仕事と、桎梏の意のラブールから派生した単語トラヴァイユ/ 労働が分かれていくのもこのあたりだろう。
その背後で、ダイ・ハードにパトリアルカルなヴァチカンが当時どういう意味を持っていたか、つーのはよく分からんですけども。。。
イタリア・ルネッサンスの進み具合もとんでもない勢いで、実際の年代記は、数字オンチですから正確には思い出せませんが、30年ぐらいの時間差でとんでもない画法やテクニックが『前進』するわけです。これは各画家の個人変容史を見ても同様だ。まあ、アタクシが今のところ見てるのは絵画と若干の彫刻やレリーフだけなので、これを文学(ペトラルカやダンテやゲーテ)、建築も比べたらかなり面白くなりそう(もちろんそういった研究をやってる人は山ほどいるはずなんだけどさ)。イメージであれば、地震が起きる前に複数の地殻が地下でぶつかるモデルみたいなもんじゃないか?知的考古学を、地学モデル風音つき3Dでやったら面白いかも。
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たまたま、どこにも行かない夏休みで、今年もやってるラジオ(フランス・クルテュール)のミシェル・オンフレのコンフェロンスを暇な時に聞いてます;ポッドキャストで拾ってiPodにて料理しながらとかストレッチングしながらとか。
オンフレ哲学談義のいいところは元気があるとこだ。話半分で聞いてますが、半分にしても面白い。学ぶ心が起きてきます。刺激になる。カントとヘーゲルをぶっ飛ばす元気が、あんなの読めんもんとめげてた人間にはありがたいわけだ。意外だったんだけどオンフレイはプルーストをかなり評価しておりまして、もう一回プルーストに(今度はプレイヤード版で)挑戦しようかという気になりました。
France Culture:Michel Onfray et de l'Université Populaire de Caen
ポッド・キャスト:France Culture - Conférences de Michel Onfray
で、得もしたりする。ニーチェにいたる哲学譜のルネッサンス関連で、スイスの歴史家ヤーコプ・ブルクハルトの名をはじめて知った。残念ながら彼の著作はフランスでは絶版の模様ですが、日本では文庫で出ているらしい。この人は、ルネッサンスの文学建築絵画彫刻を(もちろん政治も)含む全体像をちゃんとつかんでる。読まなきゃ:読んでそれから、も一度イタリア行こう。。。
フーコーも確か講演だったかで言ってましたが、ギリシャへの回帰というのは、ある社会が腐敗・停滞する時期に出て来るんだが(ルネッサンス、あるいはワグナー・ニーチェ)、それは古典ギリシャ社会が理想だったからあの社会に戻ろうという運動ではなく、西洋文化の要というかメートルというか、次の時代に向かう飛躍前のダッシュ・ボードの役割をなすんだ。だとすれば21世紀の今、ルネッサンスが取りざたされるのもきわめて当然なんだろう。
ブルクハルトのフランス語訳は(読みにくいけど)Gallica にあります:仏語ウィキから観覧可:La Civilisation en Italie au temps de la Renaissance と Le Cicerone : guide de l'art antique et de l'art moderne en Italie
日本語翻訳されてるので読みやすい(買いやすいの)は中公文庫/中公クラシックスの:《イタリア・ルネサンスの文化》。
というわけで、アタクシは学者でもなんでもないので、個人的興味だけで動いておりますし、あとからもっと(無料)資料も読み込むつもりなんだけど、案外楽しい夏休みです。
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