立て続けに出てくる経済系速報を読んでるんですけど、素人ながらもいいニュースがないってことぐらいは分かる。
昨日はドルが急落して、今日は上昇の方向だし、ドル安と金融不安から株式市場を嫌った資本が流れ込み、原油価格が120ドルぐらいまで上がった。もちろん金は高値を続けてる。
日本の金融がリーマンやモーガン・スタンレーの(部門)買収に入ったらしいけど、こりゃかなり危ない。たしかに、株価的には買い時だけど、これからの世界金融には厳しい規制が引かれる可能盛大だから、その限定された活動内ではいくら有能なトレーダーが揃っていても、これまでのような高リスク・高リターンの金融商品開発の可能性は低いだろうし、たとえそれが可能としても、今回と同じようにフォンダモンタルのない砂地にトランプで城を積み上げるようなもので、結局バブルとその崩壊を繰り返すばかりだろう。
市場は不安定要因を嫌うはずが、いつの間にか不安定スパイラル磁場になっちゃった。
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サルコはなんと国連で、「今回の金融危機の責任者は罰するべし」と言ったらしい。大統領選挙運動時には、“サブプライム”型、低収入家庭向け不動産金融制度を進めると言っていたのもこの男だし、大統領就任後メデフ(仏経団連)の会議に仏大統領として初めて出向いて「企業運営上の法的違反へのコントロール緩和」を提唱したのもこの男だ。
でも誰が、責任者の指名と罰の決定を行うのでしょうねえ(責任はブッシュとグリーンスパンにあると考えるエコノミストも多いんですが、その場合はどうするんだろう)。大体、政治と金融・経済界の密接な関係(たとえば政府と金利操作、石油・軍産・航空・原子力産業と外交の密着化)は、今回の危機と無縁じゃないだろう。経済・金融のレギュレイターとして機能してるはずの政治に携わる人物が言うべきことではない(そのために司法があるんでしょうが、違う?)。
大統領職にある期間は一切の法的追求を逃れていはいるが、地元ヌイイ市長、のちのパスクワの後を継いだ92(オー・ド・セーヌ、ビジネス街デフォンスを含む)の知事を務めたこの男の、特に建築業(親戚・友人)との“密着した”関係を考えれば、国連での発言にはますますこちらが恥ずかしくなってくる。しかし、なんで、うどん屋のなべ(ゆーだけ)@国連なんですか?政治をするんであれば、具体的対策をオファーするのが仕事じゃないの?
これはついでですが、仏共和国大統領は夫人とともに、ニューヨークのマディソンアヴェニューから5th アヴェニューにかけてジョギングしたんだそうだ(そこはジョグするブロックじゃないってば、ああホントに恥ずかしい)。どうもセントラル駅近くのハイソ・ホテルに滞在かと思われますが、ジョギングに最適なセントラル・パーク沿いに、仏国保有の大使館用宿舎ビルがいくつかあるんだけどねえ。税金があ、また漏れてるよ。
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余談はさておき、IMFの長であるストラスカンが、 FT とル・モンドに「システミック危機にはシステミックな回答が必要だ」と書いている。
ファイナンシャル・タイムズ:A systemic crisis demands systemic solutions
ル・モンド:Strauss-Kahn : "une crise systémique implique une solution globale "
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欧州各国政府も、日本も、ワシントン政府が望んだ“汚染資産”の国家買取案は取らない方針だ。欧州議会のキマリで、国家財政赤字はGDPの3パーセントを超えてはならない、ってのがあるからね。日本の財政赤字もギネスブックに載りそう(もう載ってるのかも)な額なんで、これも無理。今のところ、欧州金融は監査が厳しいので不良負債絶対数が限られているからその必要はない、ってのがこっちの各政府おおやけ発表になってる。
だが、ある意味市場はよく知っていて、リーマンやAIGの証券・株を所有してた、あるいはサブプライム債権を所持する銀行の株の下げ率は高い。仏銀行の買収・合併も始まるはずだ(たしか一週間ぐらい前、上海銀行が仏ロチルド銀行株を20パーセント買収した)。
デリバティヴ中身の実際の混ざり具合やスワップ取り引きの内容なんて、1週間や2週間で蛙を解剖するみたいに分かるもんじゃないだろうし、市場自体がこれだけ変動してたら適正価格なんてあってないようなもんだ。
しかし、米政府は最高7000億ドルを汚染資産購入にあてるというけど、その価格だってどうやって決めるんだろう。汚染資産総額なんて誰にも分からない。米国の財政赤字は4390億ドル(ル・モンド関連記事で拾った数字)だそうだが、この後どうなるんだろう。まあこの政府買い付け案も議会の承認が必要だから、即実行というわけじゃないしさ。それに、これだけの金額を銀行救済のために注ぎ込んでも、この対策は、末端の、そして最初のシステム犠牲者である“サブプライム”、つまり急に上がった金利に付いていけなくて持ち家を失った人々の救済ではない。
--- 知らなかったんだけど、サブプライムはもともと低収入家庭でも家が持てるように組んだ“社会政策”だったんだそうだ。ただ、ローンの金利は固定性ではなく、変動性で、不動産価格が上昇していた間はいいけれど、不動産ストックがだぶつき評価価格が下がり、返済金利上昇で金利返済ができなくなった場合に持ち家をローン込みで売ろうにも売れなくなる。
どうも米国では、ローン返済不能になった場合、貸し出した銀行(ファニー・メイ;米連邦住宅抵当公庫とフレディ・マック;米連邦住宅金融抵当金庫は、当初政府援助法人だったのちに株式上場。なお英国ではノーザン・ロック:現在ではいずれも国家管理下)が該当住宅を抵当として取り、残る借金はチャラにする、というキマリであるらしい。おまけに上記銀行は、ローン自体をリスク込みで別銀行に売り、それを別銀行、たとえばベア・スターンズ系ヘッジ・ファンド、が金融商品の中身一部として商品化してた、という流れ(らしい、、以上はあくまでシロウト理解だから、間違ってても許してね)。----
米赤字財政をまかなう米国債を多く保有するのは中国や日本だけど、ドルがこれから大きく価値を下げても、たとえば中国は持ってるドルも米国債も急には手放せない。大量放出したら、ただでさえ脆弱になってる世界金融・経済がもっと不安定化し、中国経済自体がひっくり返りかねないからだ。。。
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分かっているのは、少なくともこの数ヶ月間は、緊張した状態が続き、金利が高くなって企業、とくに小さな会社の倒産が多くなるだろうし、結果として雇用状況も悪化するだろうってことだ。やだなあ。
自分の貧乏もいやだけど、でももっと怖いのは不況が原因でおきる民族主義や孤立主義だし、変な方向にだけは行ってほしくない。この飛行機のパイロットはどこにいるんだろう。
で、アタクシはどうするかというと;ひとまずへそくりが残ってるうちにうまいもんでも食べに行こうと思っているのだ。
10年前にどっかの国でも見たような風景が今アメリカで繰り広げられてますが、その時はよその国が救ってくれなかったけど、今回は日本の企業がどーんと肩を貸しているようですね。
リーマンが沈んだ時MUFGは「泥舟を買う奴などいない」と言って支援を断ったそうですが、リーマンが泥舟でモルスタやゴールドマンは豪華客船なのかと言うとそうではないわけで…
一緒に沈まないといいですけどねえ。
仕事柄、リーマンの人とはつい先々週まで話してました。その人が今では職を失っていると思うと、「諸行無常」の4文字が頭から離れません。
リーマン・ショックの話をしていたら、BNP Paribasの人が「そういえば、1年前はパリバ・ショックとか言われていたのに、今やみんな忘れちゃってますねえ」と苦笑していました。
投稿情報: ヒナキ | 2008-09-24 04:36
今日のル・モンド記事に、Challenger, Gray & Christmas発表の米国金融セクター解雇者数が出てて2007年が153 105、今年はこれまでで103 000 だそうだ。プリンストン大学の教授は“去年は卒業生の半分近くがファイナンス業界に就職してたけど、来年は流れが変わるだろう”って言ってるですよ。
まあ、トップのトレーダーたちは、これまでの超ボーナスを“オールド・エコノミー”なやりかたでキープしてるだろうし、商売替えするか若年リタイアしても問題ない。けど、失業するのは彼らばかりではないからねえ。。。これからが大変です。
投稿情報: 猫屋 | 2008-09-24 14:52