ブッシュ米大統領の大型減税(DGPの1パーセント=約1500億ドル)アナウンスもウォールストリートの株価ダウンをストップできなかったようです。たしかに、減税のためにはまず議会の承認が必要ですし、その減税(国民一人当たり500から800ドル相当だそうです)が実際にキャッシュを必要な人々に当てられるのか、あるいは実際に雇用を生み出すセクターを対象にした“消費促進”が目的なのかによっても効果に違いが出てくるでしょう。またイラク戦争での国家出費の流出に加えて、この大型減税が米国自体の財政をさらに悪化させる可能性ももちろんあるわけで、これからのワシントンとウォールストリートの動向には目が離せません。
1月17日のリベラシオンに、かなりペシミスティックな内容ですが、米国シンクタンクに属するディーン・ベイカーへのインタヴューが掲載されていたので訳してみます。
«Cette récession sera la plus féroce depuis la Seconde Guerre»
《このリセッッションはWW2後、最も厳しいものだ》
経済情勢。米国人ディーン・ベイカー/ Dean Baker は世界経済にペシミスティックな視線を投げる:聞き手クリスティアン・ロッソン/ CHRISTIAN LOSSON
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米国経済後退(récession)の兆候が日増しに強くなっていますが?
はい、疑いはありません。不動産クラッシュのインパクトは膨大なものです。最新の見積もりによると、住宅価格は年11.3%というリズムで後退しており、事実上2兆2千億ドルの損失に対応し、これは1千億ドル以上の消費減少に行き着く。。。権威(oracles)たちはは最初、危機は単にサブプライムに限定されたものだと考えました、あの高名な抵当貸付のことです。けれどある時点から、危機は私たちの経済の70パーセントを占める消費へのインパクトを持つのだと分かった。人々は彼らの家屋を抵当にし、クレジットで消費できなくなった。。。
この急変の規模はどのくらいのものであるのか、また、どうしてこの展開が予測されなかったのでしょうか?
エコノミストは決してリセッションを予告したりしません。彼らは、リセッションがすでに腰を据えた時点でそれを認識するだけです。現在拡散しているケースは、第二次世界大戦以降もっとも凶暴なものとなるでしょう。なぜなら、金融バブル崩壊に由来するリセッションからの回復が、もっとも困難だからです。インターネット・バブルの結果である2001年のリセッションは失業率上昇をもたらしたが、それは引き続く次のバブル、つまり不動産バブル形成による経済刺激によって抑えられた。(景気刺激のため)金利緩和で人々が金を借りやすくするという伝統的方法は、今回はもう機能しない。
その上、2007年のインフレーションは4.1パーセントで、これは17年以来の最高記録です。。。
そうです。これが危惧であり、そのために連邦準備理事会(FRB、フランスではFED)の操作範囲が限定されてしまう。なぜならまず、それはFRB議長のベン・バーナンキが設定した規定(インフレ)率の二倍だからです。次に、経済再活性化を試みるため、さらに金利を下げることは極めて難しいからです。10年金利はすでにインフレーション率を下回ってる。。。
誰がこの危機の責任者と見なされるのでしょうか?
まず米国でのリセッションに対して、テーブル上に50パーセントの掛け金を用意した人間です。この人物は自らバブルの形成を手助けした:アラン・グリーンスパン、FRBの元ボスです。クレジット市場に、乱用を限定しえたはずのレギュレーション導入というアドヴァイスを、彼は無視した。今日、彼は自分のミスを帳消しにして歴史を書き換えようとしています。サブプライム・スキャンダルを知らなかった、あるいは知らされていなかったと彼は言っています。これは事実ではない。単に最も富める人々をさらに富ませる結果になる、このレベルでの不注意、つまりレッセ・フェール(放任主義)は許されるものではない。世界の各株式市場は転落、成長率予想は低下に修正されています。この感染はどこまで広まるのでしょうか?
わたしたちのところで起こっている事は、間違いなく他の地にも影響するでしょう。まず、米国は世界最大の輸入国である。次に、他の地域も同様に前代未聞の不動産バブルを抱えているからです。フランスでの状況と規模は米国に比べて異なっているにしても、特にスペインとアイルランドでは。米国と異なり、やってくるだろう危機の消費に対する影響は少ないとしても、結果は現実的なものでしょう。すでに多くの損害を出している銀行の、これからの損失はさらに大きな規模であるだろうし、以前には見られなかったクレジットへの条件引き締めが行われるでしょう。
再資本投下のための、君主国家資本(des fonds souverains)への援助依頼
は、脅威なのでしょうか、あるいは打開策なのですか?銀行には選択の余地がありません。全体的に言って、銀行は絶望的状況にあります。キャッシュ、現金が必要だ。その後問題になるのは、政治であり外交です。特に中東諸国が、米国経済に対する影響力をますます強めています。
この危機は米国大統領選にインパクトを与えるでしょうか?
インフレーションに加えてリセッションが発生する、これはつねに権力にあるチームにとっての大きな脅威であるわけです。これから選挙に向けての(経済)再活性プランについて、大統領サイドである共和党と議会の民主党間の意見調整は難しいでしょう。。。彼らにはリセッションをストップできないだろうし、ただ若干甘味料を加えて緩和するだけだろう。天は灰色だし、2008年は際立って難しい年になるはずです。
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19日にこのインタヴューを翻訳し始めた段階では、ベイカーの発言をやや誇張しすぎてるんじゃないかと感じたわけですが、連日の世界株価報道を追うごとに、ますます自分自身ペシミストになってきたわけ。
2001年インターネット・バブル時には、(猫屋的には)それなりのへそくりをデイトレイドで手痛く失いまして、まあなんとも高い勉強代を支払って以来、アタクシは(ほぼ)オルター・グロバリシンパになったのでありました。
ミア・クルパはさておき、結局FRBは金利を大幅に(0.75ポイント=現在3.5)下げました。一時的に株価は上昇したわけですが、いったいこれは長期的な動きであるのか。。あまり、そう思えないわけですが、なぜそう思えないかについては、別の機会に説明したい。つまり、経済成長率と、実際の物価と実際の購買力と、クレジットと数字のオバケってのが、アタクシが書こう書こうと思って、まだ書いてない主題なんで、、まあ、いずれ。
なお、ル・モンドに“バンカーたちの異常なボーナス”という記事があったので貼っておきます。
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