あんなアホどもに任せておくほど、政治っつーのはカンタンなものではございません。
それに、ファイナンシャルタイムスを貧乏人が読んでどうするんですか。あれはネオ資本主義の旗振りです。
世界経済を金持ちに任せといたらアイツラもっと金持ちになるのは道理。サブプライムで大損した銀行もあるけど(実は損してるのは口座持ってる、あるいは小金を投資したユーザー)、ウォールストリートやシティのブローカー(旧名;ゴールデンボーイ)の多くは大型ボーナスをちゃっかりゲットしとります。
株価が上がっても下がっても、売り買いの絶対数が増えれば中間業者(つまりなんとか証券etc.)は儲かるようにできてます。損するのはデイトレードで年金失う退職者や、米国では国家年金ないからリタイヤファンドで生きてる退職者。
結局、NYスイートがバレル100ドル越えたのだって、もちろんナイジェリアとか中東での紛争や、米国での原油ストック減少もあるけど、サブプライムに起因する株価落下を嫌ったリキディテつまり資本が、将来ますます少なくなることが分かりきってる原油に乗り換えた、要するにスペキュレーションに起因する部分が大きい。金(ゴールド)も上がってるでしょ。同じ理屈です。
今んところは92ドルぐらいで落ち着いてる。でも喜んじゃあいけない。なぜ下がったかと言うと、米国経済リセッション感が一般に共有されるようになって、同時に米国リセッションの世界経済に及ぼす影響が大きいってのは誰にだって明白だから、米国はもちろん世界での生産量は減少し、結果消費されるだろう原油絶対量も減る予想となり、原油に対する投機が(一時的にだけど)減っただけなんだ。
この投機ってのは株・原油はもちろん、コーヒーや小麦、不動産、金をはじめとした諸鉱産物とか為替やデリバティフつー超複雑な金融商品もその対象になってる。インターネットの登場で、個人も含めたデイトレイドが一般化し、同一商品がブローカーを通して一日に複多数の持ち主から持ち主に売り買いされてる。そのたびに価格は変動するですね。株で言えば、単なる噂やインサイダー取引が変動の大きな要素になる場合も多い。これはどの投機にも当てはまる。
この投機の動きは、マクロやミクロの経済学を駆使してもシュミレーションしきれるものではない。なぜなら、売るのも買うのも仲介するのも、すべて人間だからね。人間心理は分析しきれるモンじゃないんだ。チャートがあらわすのは単なる結果のトレースだけで、明日起こることは誰にも分からない。現在の世界状況不安定さの、投機に負う部分は大きいでしょう。
これはオルターの連中が以前から言ってたと思うけど、たとえばこのデイトレードにそれなりのタックスをかければ、上に言ったスペキュレーションはかなりな幅で防げるはずだ。問題は、金融界と政治界の誰もこれを言い出さないこと。だって、儲からなくなるからね。
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話題を変える。
たとえばサルコジは、「自分は購買力の大統領になる。」と公約、「もっと働いてもっと稼ぐ」をスローガンにして大統領に選ばれた。しかしだよ、この公約はまったくもって守られていない。購買力がガーンと増大したのはサルコジ自身とその楽しいお友達だけである。これに関して言いたいことがいくつかある。
- では、選挙前、サルコジには確固たる経済政策があってロワイヤルには有力な政策なし、と多くの人々が言っていたわけなんだが、あれって誰が言い出したのか???元をたどってみてください。 UPMかメディアでしょ。あとアンケート結果だ。大手メディアを誰が牛耳ってるかは皆さんご存知だから繰り返さないけれど、大手アンケート会社の持ち主はあのヨットのボロレ、サルコ選挙顧問だったジャコメッティ、MEDEF(仏経団連)のパリゾたちだ。
- サルコは映像に強い。あのルックとチックを見たら誰だって目が離せなくなる(最初から政治よりコメディアンを目指すべきだったんだよね)。結局サルコに投票した国民は、メジャーTVメディアと無料新聞のユーザーが多い。つまりオピニオン系新聞とか雑誌はあまり読まない、退職老人とかネットなしの貧乏人とか新聞読んでる時間がない勤め人だ。政治だって経済だって、最大2分で説明できるモノではないから、アタクシみたいに夜中すぎにピケティ経済教授の早口議論など見てる人間は極めて限られてた。そんな状況でTVやフィガロやアンケート結果が、サルコジにはしっかりした政策がある、それは「もっと働いてもっと稼ぐ」だ、と繰り返せば、パブロフの犬であるコンシューマーはころっと信じ込んだってわけだ。実際に経済を語ろうにも、数字やグラフを元にした分析なんて披露できる状況じゃないわけで、「もと働いてもっと稼ぐ」でみんな安心しちゃったわけ。。。17日にサルコはこう言ってる: « Lorsque certains font croire aux Français qu'il serait possible de distribuer du pouvoir d'achat tout de suite, sans travail et sans réforme, je reconnais la démagogie qui a fait tant de mal à notre pays depuis trois décennies » 「何人かの人々が、労働と改革なしに即刻購買力を分配できるとフランス人に信じ込ませようとするとき、これが過去30年間にわたってわれわれの国に多くの悪をなしてきた人々のデマゴギーであると私は認識する。Les Echos」。。。猫屋解説;購買力を選挙戦に持ち込んだのはサルコなんですよね。んで、過去12年以上政権内にいたのもサルコなわけで、これはいつものサルコ式論法。もう効き目ないってば。
- 一回も投票してないけど、もうフランスに来てから23年経ってる猫屋が経験した仏大統領選挙は4回目。サルコが3人目の大統領です。すでにドゴール時代から各政権にとっての重要事項のひとつが「失業問題」だった。一時的緩和はあったものの、フランスの失業率は8から10パーセントを行ったり来たりしていた。サルコジは失業率の代わりに購買力を公約に持ってきた始めての大統領候補だ。外国人強制退去や、フランスアイデンティティと移民を始めて結びつけた大統領でもあり、政治に宗教を持ち込んだ点でも(ペタンは別としても)始めての大統領である。つまり、最初から職のない、あるいはあっても滞在許可書のない、あるいはもっと働きたくても会社に注文書がこない、あるいはもっと働いてもペイしない(教師・医者・看護婦)、勉強しても就職先のない学生といった人々を最初から数に入れない、最初の仏大統領である。
腹が立つだけだから、ここでやめる。
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要はサルコの国において、ヌイイに生まれついていない以上、われわれには金持ちになる遺伝子もないわけだし、だったら別の行き方を考えるしかない。(彼のすべての考えに賛同できるわけではないが)バディウが言うように、何も持ってない人間こそ何にだってなれるんだ。自分の頭を使って考えることから初めて、バディウが言うように規律と連帯を武器にしていくしかないんだとアタクシは考える。
飽食に快楽を見出すのにも人間いつかは飽きる。手元にある食物をみんなで料理し、そして分け合って食べる喜びを知らない人間は幸福ではないだろうよ。そういうことだ。
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あれっ、今回は“自由競争という幻想”っつーのを忘れていた。これもまた今度。
翌日追記:若干書き加えました。
日本人より理屈っぽくて民主主義が浸透しているかと思っていたフランス人が、小泉のようなサルコジを選んだとき、とても失望しました。こちらの記事を読んでなるほどと思いました。日本とあまり変わらない状況になってしまっているのですね。
投稿情報: ヘリオトロープ | 2008-01-23 06:22
今、現在進行形の経済危機の影響が、米国大統領選挙もですが、どれくらい仏政治に影響を与えるか、という局面もあると思います。
米国や英国並の経済成長力を得るためには、民主社会主義から脱出する必要がある、、という確信があったし、政治とはメディアを独占するすればそれでイッチョ上がり、とサルコは踏んだわけです。それで、ブレアやブッシュのコピペをやった。
だが実は、ブッシュとそのクローンたち;アズナール・ベルルスコーニ・ブレア・コイズミはすべてイラクで転んでいます。
フランスは、その米国近似策を、他国に遅れてサルコジが始めた。それとあまりのはしゃぎぶり(コピーはつねにオリジナルを真似しすぎで愚劣までに到る)は結局フランスという国の“本質”から遠すぎるものだ。
移民も含む、仏国民の多くが今練っているのは“いかにしてサルコジを座敷牢に閉じ込めるか”作戦です。なにしろ腐っても革命の国です。ご期待ください。
投稿情報: 猫屋 | 2008-01-24 02:05