今回はひとりで映画館まで行きましたら、館内はお子様だらけ。秋休みにアニメ映画ですから当然と言えば当然。まわりで、ポップコーンのにおいはするわ、3歳-10歳ぐらいのチビどもが喋りまくるは食べまくるわ。。でも、映画が始まってから最後まで、あいつらみんな口をポカーンと開けたまま静かでしたね。アタクシもですけども、ぽかーん。
タイトルの AZUR et ASMAR はフランス読みですと「アズュール・エ・アスマール」になります。アズュールはコートダジュールの海のように青い眼をした中世フランスの王子、アスマールは王子の乳母の息子の名です。双子の兄弟のように育てられた二人ですが、王子は少年になると、帝王学を学ぶために城を離れるんですね。同時に乳母とアスマールは城から追われてしまいます。
王子は大人になって、子供の頃乳母が語ってくれた地中海の向こうに行こうと決心する。北アフリカです。だが、船は難破してしまう。海岸に流れ着いた王子に待っているのは、飢えと疲れと絶望です。さて、王子は乳母が語ってくれた『ドラゴンやライオンとの闘いに勝って、大宮殿に住む妖精をお嫁さんにもらう』ことが出来るんでしょうか。アスマールと乳母にもう一度会えるんでしょうか。。。
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ストーリーで言えば、竹取物語や流譚篇の流れです。『むかし、むかしあるところに、、/Il était une fois, un homme....』ですね。これは世界共通のテーマ。新しいのは、グラフィックです。ディズニー系のCGアニメとは違って、3Dではなく、イメージが平坦。でもそれがイスラム絵画テイストに不思議にあっています。フランドル絵画(ファン・アイク兄弟)やユニコーンのタペストリとも通じる美学です。
一言で言えば、かつて欧州が夢見たオリエント、千夜一夜の世界。天文学・数学を初めイスラム世界が先端だったころです。関連記事を読んでみたら、建築はアルジェリア・モロッコ・チュニジアから、衣装は16世紀のイランをモデルにしたとか。
古い聖書も出てきますし、シナゴーグも廃墟化したキリスト教会も出てきます。アラブのプリンセスのグラマーさも忘れられません。
一部の会話、文学アラブ語だそうですが、訳がスパー・ポーズで画面の下に出てこないのも特徴。外からやってきた人間に外国語が分からないのは当然だからなんだそうですが、なるほど。あと、映画冒頭に、乳母が2人の赤ん坊におっぱいを飲ませるシーンがあるんですけれども、アニメでも米国とかシンガポールではおっぱい部分はカットするそう。病気かおまいら、とかおもっちゃいますが。
もう一回、友人の子供を借りて見に行こうと思う。DVDもいいけど、大画面がすてきです。
後記:この作品はヨーロッパ映画となっている。資本が欧州複数国から出てるわけですね。
いや~、楽しそうな、それでいて世界がわかりそうな映画ですね~。私も友達の子供借りて(いない)行こうかしらん。くま抱いて行けばいいか。(気持ち悪い)
投稿情報: りよんくま | 2006-11-05 00:33
フランスではまだアニメは子供のモノだって意識がありますよね。休み明けに行けばいいんじゃないかな。くまはバッグにでもかくして、暗くなってから出せばいいし(入場料も安くて済む)。
投稿情報: 猫屋 | 2006-11-05 02:22
うわー、私これ、絶対好きです。
イスラム美術、特にあのブルーとアラベスクを見ると「酔う」んですよ。時々しらふで酔っぱらうために大英博物館とかに行きます。
映画公開予定をチェックせねばなりませんね。
投稿情報: ぴこりん | 2006-11-05 11:05
ブルーとアラベスクを見ると「酔う」、ってのはわかる。一種の“宇宙観”とでもいうか、、、サマルカンドな。
あと、リベルティみたいな花畑とか、アニメなんでにおいがないのが残念なバザールのスパイス売りとか森とか、色がいいです。で、全部平坦絵なのね。パースペクティヴや影を意識的に無視してる。オリエンタル。
投稿情報: 猫屋 | 2006-11-06 00:52
猫屋氏どーも。わかってますよ、のrenqingです。
リンクの紹介ありがとうございます。そうですかぁ、日本と因縁浅からぬ人だったんですねぇ。
人と人は少しずつ「馴染む」ことで、コミュニケーションの可能性を広げていきます。心理学では、人間のコミュニケーションの糸口を、ラポール(rapport)と呼ぶそうです。言わば、向き合っている2人の間に、川が流れていて橋がない。そこに、どちらかの努力でとりあえず橋を架けること。これがラポール(rapport)です。
作家ミシェル・オスロは、アニメを通じて、異なる人々の間に、ラポール(rapport)を築いているのでしょう。初めて架ける橋は、美しく幸福なものでなければなりません。それは大人、子ども、に関係ない。その意味でも素晴しい作品だと思います。
投稿情報: renqing | 2006-11-12 14:14
ども、renquing 氏、
rapport って“関係”のことですよね。まあ資本制度にすべてを還元しちゃうのは間違ってるけれど、現在のシステムがすべての関係性を(人と人ばかりではなく、人と動物、あるいは人と自然の次元でも)、経済原理から解析していく。解析するのはいいんですが、どこかで倒錯して、関係自体を経済原理で置き換えてしまう。そうすると、実際のコミュケーションというのはいろいろな意味でリスクもあればコストもかかるわけだから、無人の世界で人は生きてるような仕組みになってしまう。と、話は飛んでしまいますが、実際の生きた“他者”に対する興味を、こういった寓話が子供に持たせてくれればいいんですよね。拒絶や恐怖ではなくてね。
投稿情報: 猫屋 | 2006-11-13 17:45
ごぶさたです。
ようやく、日本でも公開されました。美しかったです。前半のフランスでの挿話は、やけにリアリスティックで、後半、イスラムでのお話が、随分とファンタジックなのがちょっと、アレっていう感じですが、よいでしょう。
眼福でした。
投稿情報: renqing | 2007-08-18 07:24
どうもです。
やっぱり、我々にとってはオリエンタルは夢なんだと思います。いい意味でも悪い意味でも。
このあいだ、カンヌで上映されたフランスに住むイラン女性が作った作品もなかなかよいようです。まだ見てないんですが、見たらご報告いたします。自分のブログで紹介した作品を見ていただくとやはりうれしいですねえ。ありがとうございます。
投稿情報: 猫屋 | 2007-08-21 15:32
いえ、ご紹介、感謝です。
投稿情報: renqing | 2007-08-21 19:38