昨日見損なったグラン・パレでの 《Mélancolie》 展に行ってきました。この展覧会は仏国立美術館ユニオンとベルリンStaatliche美術館が企画しそれにパリ・ピカソ美術館の協賛で開催されていて16日にパリでの展覧が終わった後はベルリンのニューナショナルギャラリー(2/16-5/07)に移ります。二時間ほどかけて回ったのですが、元旦と言うこともあるのでしょう、かなり人も多く(走りまくる子供までいた)、大体私の知識と集中力ではカヴァーしきれない。コンセプトからして難しいというか豊か。一言で言うとヨーロッパ思想史における憂鬱の移り変わり、、とでもなるのか。もちろんそこには哲学・神学・魔術・占星術・さらに下っては文学・絵画・音楽・一般医学も精神分析も関連するわけで大変です。(当然アラブ文化の影響もあるわけ)。
きわめてコンセプチュアルな構成になってて、必ずしもクロノジカルに250からの作品・オブジェが並んでるわけでもないので、全解説を読んだわけでも、リンガ・フォンも借りなかった私には全体像がつかめていない。会場は以下の8部に分かれています。
La mélancolie antique / 古代のメランコリー
Le bain du diable. Le Moyen Âge / 悪魔の沐浴(ルターの言葉のようですな)、中世
Les enfants de Saturne. La Renaissance / 土星の子供達、ルネッサンス
L’anatomie de la mélancolie. L’âge classique / メランコリーの解剖学、古典時代
Les Lumières et leurs ombres. Le XVIIIe siècle / 光(複数)と影(複数)、18世紀
La mort de Dieu. Le romantisme / 神の死、ロマンティスム
La naturalisation de la mélancolie / メランコリーの帰化
L’Ange de l’Histoire. Mélancolie et temps modernes/ 歴史の天使、メランコリーと現代
となりまして、主要展示作品には、Dürer, Ron Mueck, La Tour, Füssli, Goya, Friedrich, Delacroix, Rodin, Van Gogh, Munch, De Chirico, Picasso… 他にもクラナッハ、ボッシュ、Wブレイクや、ホッパー、アルトーの作品に驚かされた。18世紀の3体の胎児骸骨とミイラ1体を使った祭壇なんてものまでありました。
時間が許せば16日の最終日前にもう一度行ってみようと思います。夜10時までやってるnocturne の夜がいいかと、、しかしカタログも欲しいし、他にも行きたいエクスポは多いし金欠だし、、、セールも始まるのであった。
なお、あまり深く考えるとこっちまでメランコリしそうなので、ひとまず軽く見たい作品だけフォローするってのもひとつの手ですかね。平行して音楽コンフェロンス・映画上映もあるから半日かけるつもりで空いてる時にあっち行ったりこっち行ったりするのもいい。全体的にフーコー考古学的編集作法が見えますが、フーコーの名はレフェランスとしては出てないと思う。同様にフロイトやニーチェへの言及もさほど多くないと感じた。アンソールの絵があるかしら、と思ったけど見た記憶ないです。
参考:nocturne/夜10時までの日 1月6・7・8・13・15日で一般入場料10ユーロ、割引8ユーロなり、予約要の模様。
追記:すぐ上のBocklinの絵は映画『指輪物語』そのもの、また全体的に言うと頬杖ついて+時として三白眼人物、が多すぎる印象もありました。そういえば、ユイスマンスとかギュスターヴ・モローも不在だったような、、(モローは個人美術館所有だからかな)今度確かめてきます。それと展示の端ズンドマリがサルトルの『嘔吐』からの抜粋文と“太め・欧州おっさんのヌード座り込み巨大像”。これが最後部ではないんですが。
なお行きたい展覧会は以下、しかしいつの間にか入場料が倍になってる気がするんですが、、でもNYのMOMAなんかもっと高いらしいし。。。今日のグラン・パレ、イタリアの教授っぽい美しい女性が多かったです。
ウイーン1900 グラン・パレ
日本妖怪展 パリ日本文化センター
ダダ ポンピドゥー・センター 9日に終わってしまいます。同センターではウィリアム・クライン展もやってる。
ユダヤ・キリスト・イスラムの聖文書 国立図書館
アラブ世界の科学
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翌日追記:リンクし忘れた、このメランコリー展企画者 Jean Claire へのアルテ・インタヴュー記事。構想と準備に10年かけたらしい。またリベによるとこの展覧会一日1500人の入場を想定していたけれど、実際の有料入場は4600を超えてるようです。また国立美術館ユニオンとガリマールが共同で作ったカタログは既に3万冊売れたそうだ。(59ユーロという値段なんで買ってません、が欲しい!!!) また、リベの関連記事、“現代の宗教、メランコリー”というタイトルで Nancy Huston (トドロフの奥さんですね)は出展されている作品について絶賛しながらも、それらのオブジェを単に西洋文化のダーク・サイドばかりで捉えるのはカナワンといった批評をしている。それもそうだ。ミラン・クンデラを引用しながら、彼女は“メランコリーは創作の傍らにあっても、創作の源泉ではない。” といったようなことを書いてます。
たしかに個々の作品は暗く、かつ私達の生きるこの時代も暗いわけですが、それでも創作行為自体が作家にもたらす、また作品をみる私達が受ける“enthousiasme /感動”やまた作家と受け手、また作家同士、あるいは“作品同士”の間に生まれる enthousiasme としてのコミュニケーションはあるんで、と思ったわけであります。フーコーの『真理』とかドゥルーズの『欲望』について考えてみたりするんだが(やはり読まないといけませんがね)。