リチャード・ホルブルック元米国国連大使へのル・モンドNY支局 Corine Lesnes インタヴューを訳してみました。
《国連は大国の“いじめ”の対象になっている/L'ONU est le souffre-douleur des grandes nations》 ル・モンド9日付け
国連の問題点とはなんでしょうか?
大国の支援が足りない。大きな国々は、協力/コーオペレーションの場所と言うより、彼らの不一致のフォーラムとして国連を使っている。その完璧な例がダルフールだ。フランスとアメリカは(見解の)相違を乗り越えることができなかった。これは国連が原因なのではない。フランスとアメリカの失敗だ。ダルフールに関する失敗は、ルワンダやボスニアと同様に、ニューヨーク(国連本部)で起こったのではなく、(大国の)首都で起こったのだ。私の国際政治経験全体でいっても、国連に関してほど大衆の認識が間違っている問題を他に見たことがない。ダルフールに関して、何故フランス(の失敗)なのですか?
フランスはダルフールに関する重要な決議に反対した。結局のところ中国は反対しなかっただろう。チャドがその例だが、フランスはこの地域に歴史的つながりを持っている。国連は主要国家/nations が支持しなければ力を持たない。参加国群以上の権限を持つことはできないのだ。東チモールやアフガニスタンのために行ったように、国々が協力して初めて国連は機能する。この4年間、ブッシュ政権は国連内に地雷をばら撒くことで重大な間違いを犯した。フランスが国連を強化するという試みを行うよう私は願っている。それはフランスがやっていることではないですか?
分らない。私が言いたいのは、フランスと米国の両国とも、国連を格闘の場に使ったと言う事だ。2003年1月安全保障理事会でドミニック・ド・ヴィルパンがコリン・パウエルを攻撃した時、保守系の少なからぬ人間が国連を非難した。2月5日、コリン・パウエルが歓迎されないプレゼンテーション --イラクに対する証拠 --を披露した時、またしてもかなりの人間が国連を非難した。国連は都合のいい攻撃/イジメの対象になっている。12月はじめ、コフィ・アナンに対する批判が最も大きかった時点で、あなたは彼を夕食に招待していますね。何故ですか?
ジョルジュ・ブッシュ再選の後、私たち何人かの人間が、国連と米国の関係を改善する時が来たとコフィ・アナンに提案した。私たちのほとんどはケリーに投票している。しかし国連がワシントンに対立した場合、国連はうまく機能しなくなる。国連がブッシュ政権との関係を改善するよう強く主張した。彼も話すことを望んでいた。その時点以来、国連首脳部では多くの変化がありましたが、、、
コフィ・アナンはふたつの重要な変更をした。事務総長についで影響力ある事務総長官房、イクバル・リザイ/Iqbal Riza の辞任を受け入れた。マーロック・ブラウン/Malloch Brown が職を引き継いだが、彼は大変にダイナミックな人間だ。そして彼は、セクシャル・ハラスメントが疑われていた ルッド・ルベルス/Rudd Lubbers --国連難民高等弁務官 -- に辞任を強いた。彼は辞任すべきだったのでしょうか?
もちろんノーです。なんで辞任する必要がある?(任期は)まだ2年残っていた。なんで彼に辞任を要求すべきなのか私には分らない。--oil for food 疑惑に関する--調査結果には、どんな形にしろルベルスの関連したいかなる疑惑もない。コフィ・アナンが息子のしていたことを知っていたと考える根拠はどこにもない。だいたいが私自身、彼の息子が何をしていたかなんて知りはしない!もしも事例が変われば、問題をもう一度検証してみることもできるだろう。けれどあの辞任に今異議を唱えることには正当性がない。国連にとって、2005年は成立の年1945年と同様に重要だと言えますか?
いいえ。1945年は決定的だった。現在は、強化と再構築のプロセスだ。コフィ・アナンは任期を終える。そして彼は無理やりに職を去ることはないだろう。彼は自ら信じるところにしたがって戦い続けるだろう。問題は誰が後任者となるかだ。これが本当の問題だ。次の国連事務総長はもっと影の薄い人物になるのではないかと予想する人も多いのですが、、、
もう一度繰り返すが、国連組織は事務総長職に着く人間より、重要国家群が国連をどうしたいかに因る。、国連がよりよく機能すれば、特にアフリカに関して、それは米国にもフランスにとってもプラスとなるだろう。
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訳者解説: ホルブルックはクリントン下の米国連大使。前フランス国連大使ド・ヴィルパンによる回答も読んでみたい。インタヴュー中にある、夕食会については村上龍主催のML、JMMで春 具さんがホルブルックの名前抜きでサスペンス風に書いており、面白かった。残念ながらそのレターはゴミ箱にポイしてしまいましたが。
なお前国連大使ダンフォースはブッシュ政権と折り合いがつかず、米国連大使職を辞任しています。oil for foods 問題をきっかけにコフィ・アナンを刑務所に送ろうとキャンペーンを張った米共和党右派を批判し、アナン擁護をした。
ダンフォースに代わり、ネオコンのボルトンが任命されました。これはル・モンドによれば“外交官達にとっては最悪の悪夢”だそうです。いったん前進に向かうかと思われたダルフール問題もこれでまたこじれるかも知れない。
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