まずは前の2記事の内容訂正。
12月17日に、警察に売り物を没収され、焼身自殺を図ったBoazizi が入院先の病院で死亡したのは翌日ではなく、今年1月4日だった。市場の人々は17日からすぐさま抗議を始めた。それに一般市民が加わった。入院中に元大統領ベン・アリも見舞いに行ってる。なお、ベン・アリ下のチュニジアでは、警察および民兵(大統領護衛隊、これも内務相の管理下にある)の数、および権限が大きかった。ウィキリークスが公開したように、米国外交官公電は『ベン・アリ大統領夫妻とその家族は、当国の政治・経済・司法のすべてを牛耳るマフィアだ』と書いている。Boizizi は許可がないという口実で市場で手押し車と商品の野菜・くだものを警察官に没収された:要するに、警官に要求されたワイロを払わなかったんだろう。
これはイスラム圏ではじめての革命、と書いた記憶があるんだけど、それは間違い。正確には、アラブ圏で初めての革命だ。かつてイランでホメイニ革命というのがあったことを忘れていた。こちらで放送さてたtvインタヴューで、当地のおじさんが「これがチュニジアはじめての独立だ」と感極まって泣いてた。
これまた、通りでおばちゃんがインタヴュアーに対して何にもいえなくて笑ってごまかしてた:「23年も、言いたいことを言っちゃあいけなかったから、何言ったらいいか分かりません。」
これはネットで読んだ:街頭でだれかが言ってた「54年の間、チュニジアはふたりの大統領を持った(注;ブルギバとベン・アリ)。でもこの24時間で3人の大統領だよ。(注;ベン・アリ、ガンヌーシ、メバザ)」
実に、23日間の市民抗議運動が、23年間続いたベン・アリ独裁政権を終わらせたわけだ。
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原油や鉱資源にめぐまれる北アフリア・中近東の国々が、軍備に大きな国家財源を投資したのに対して(軍備の売り手はどこの国?←猫屋の視線の先ね、、)、ブルギバとベン・アリは女性解放も含む教育に多く国家予算を費やした。しかし、ベン・アリの第2夫人のレイラTrabelsi (もと美容師、スキャンダル多き女性)とその家族は、チュニジアの大手企業の多く(約50パーセントと見られている)を支配下におくため、企業本部に出向いて「だれそれ(親戚とか婿とかetc.)を社長にしなさい。いやなら会社は潰します」とやった。チュニジアの人々は学歴があっても、銀行なり、企業なりに就職するためには、これまたワイロを関係者に渡す必要があった。
結果、チュニジア産業・報道・テレコム、司法までもがベン・アリと夫人の親族によって独占され、近年の年間5パーセントという経済成長率も、一族とその周辺の人々の懐を豊かにしても、一般市民にまで恩恵は届かなかった(どこも似たようなもんだな)。
これはネットのコメント欄で読んだけど、チュニスに駐在してた仏人が言うには:「家の家政婦さんが大学で英語を学んだ若い女性だったり、タクシーの運ちゃんが教師資格持ってたり、ピザの配達人が数学の専門家だったりして驚いた。」
なお、ル・モンド報道によると第2夫人レイラ・アリ・トラベルシは1.5トンの金塊を持って、数日前からドバイに逃げてたらしい(仏諜報部発)。
現在、ベン・アリ元大統領はサウジのジェッダに短期滞在中のようだが、この後はカダフィーのリビアに向かうようである。
最後のTV演説で、ベン・アリは「Je vous ai compris.」というド・ゴールのせりふをアラブ語で言ってた。
チュニジアでは警察と民兵の数が非常に多い。警察官だけで約15万人(国民数は約1100万人。たとえばアルジェリアでは人口3300万人に対して警察11万弱)。これに民兵を加えたら20万人という説もある(コーン・ベンディット発)。なおチュニジアの軍隊は3万5000人。
ベン・アリ元大統領のデモ隊への実弾発射命令に対して、陸軍将軍はそれを断って左遷されてる。また、チュニジア航空のリヨン行き飛行機の若い機長は、離陸直前に5人の追加搭乗を知らされたが、それがレイラ・トラベルシの親族と気づき、離陸を拒否した。その5人は乗客らによって拉致された模様。なお、このすぐ後にチュニス・カルタゴ空港は軍が包囲する。したがって、その後の大統領機の出発許可は軍の判断と考えていいだろう。
この警察国家と拷問と単独政党とメディア支配および報道規制(YouTube, dailymotion, 仏新聞リベもダメ)、国家およびエコノミーの腐敗・汚職の一般化、司法の私物化が続き(まあ、チュニジアだけの話ではないがね)、対して国内外でいろいろ学んできても(司法・政経学・歴史・語学・文学・哲学)就職もできず、同時にネットやパラボラで外国TVや映画を見て、ケイタイやチャットも使いまくり、それでもいつまでたっても変わらない独裁者とその奥方のブリング・ブリングを見せつけられたら、腹が立たないほうがおかしい。おまけに石油やパン、砂糖などの値段も上がる。出口なしだ。
ベン・アリが去って、まず最初に焼き討ちにあったのが大統領夫妻に近しい家族の邸宅とその車、それからモノプリだとかジェオンとかのこれまたトラベルシ一家が経営するスーパーなど。略奪にあったのもそれらの店の模様。
2日にわたって続いた夜の市街戦も(軍vs民兵;民兵は黒服を着てる、また住民・自衛団は隣人たちと横丁にバリケードを作って白いTシャツを着用し待機、襲撃を防ごうとしている)今夜は治まったと信じたい。元大統領夫妻に近い親戚一同はほぼ、飛行機・四輪駆動・高級ヨットなどを使って国外脱出したようだが、民兵たちは街頭で暴力行為におよんだあと、大統領官邸に閉じこもり軍からの攻撃を受けた模様。
スウェーデンからサファリを目的で滞在していた13人は、持っていた猟銃のせいで住民から攻撃を受けた(ブラック・ウォーター民兵だと思われたんだろう)。
仏・チュニジア2重国籍のポスドク助教授(たしか36歳)は、休暇で里帰り中デモに参加し警官に撃たれて死亡。チュニジア系スイス人看護婦もベランダにいたところ流れ弾に当たって死亡。金曜日のチュニス、内務省前の集会(チュニジア国家をみなは歌っていた)を取材中、催涙弾の直撃が眼に当たった32歳の仏・独のカメラマンは、いったん死亡が伝えられたが、今は手術を受けたあと人口的コーマ状態にあるようだ(しかし、カメラマンが眼をやられたら辛いだろう)。
この月曜に暫定的新内閣が発表される。無政府状態の中、リーダーのいないチュニジアで治安を取り戻すのは簡単じゃない。独裁者を追い出したらそれでおしまいじゃないのはイラクを見れば分かる。民主主義は外から作れるものでもない。民主主義とは、国民主体だったはずだ。だから国民が国を作り直すのだ。
理想主義に終わりはない。食べ物やカネや石油も必要だけど、理想や愛や夢や美や歴史を共有して、やっと人は共存できるんだよ。革命は成就されて始めて革命なんだ。始まりのあるものには必ず終わりがある。HOPE !
書きなぐりまして、時間ないので誤字・テニオハはあした直します。
リベから、ヴィデオ付きチュニジア・クロニクル
La «révolution du Jasmin», de Sidi Bouzid à la fuite de Ben Ali
Rue84から、レイラ・トラベルシ一族への軍による報復について
indulgente avec Ben Ali, l'armée est sans merci contre les Trabelsi
ル・モンドから、ウィキリークスの公開公電のうち、チュニジア政治腐敗に関する抜粋:WikiLeaks : Corruption en Tunisie, "ce qui est à vous est à moi"
またネットで見られる報道系仏TVのうちチュニジア関連ではiTELEが詳しい。
なお、一番上のアニメーションは、チュニジア発。
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翌日に一部加筆いたしました。
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