保守メディアである週刊誌 le Point のウェブ記事なんで、タイトルのつけ方にちょっと引いちゃうんですが(クシュネールはかつてヒューマニタリアンのプロだったけど、外交・政治家としての資質とか知識はないわけでして、現仏政権内での影響力もきわめて限定されてます)、ひとまず黒海とグルジアでなにが起きてるか、ロシアとグルジア、ロシアと米国、それに欧州がどう動いてるのかの表層次元での出来事を追うにはお勧めです。
「ロシアはアウト・オブ・インターナショナル・ロー」とクシュネールは語る:HEURE PAR HEURE : la Russie "hors la loi internationale" selon Kouchner
夜見たらタイトルが《“冷戦ではなく”、ロシアは“予防策をとっているだけ”》に変わってました。
ところどころ、勝手なチョイスで訳出してみると、
グルジア政府はモスクワの大使館を縮小、大使は置かず外交官二名のみを残す。
元仏外相ド・ヴィルパンのFrance2 発言内容:
「この事態は許しがたいものだが、予測できた。(ロシアの反応の)理由としてはコソヴォという前例があり、また国境付近での“マルチカラー革命”連鎖に歯止めをかけたいという意志、そしてウクライナ・グルジアのNATO加入可能性やMD配置といったNATO政策がアグレッシヴであると受け止められ、それに歯止めをかける意志もあった。この報復とロシア囲い込みという精神状態を理解する必要がある。なぜならロシアはわれわれの二次的パートナーではなく、全面的パートナーだからだ。したがって、ロシアとの真の会話を再び始めるべきだ。コソヴォの独立がこのポジションを弱めるにしても、キーである領土問題を論点にすべきだ。」
監視:ロシア海軍は黒海でのNATO系船舶の監視命令を受けたと、ロシア軍副総司令官は語った。
援助:白色の船腹に"US Coast Gard"と書かれた米沿岸警備船ダラスが水曜の昼前にバトゥミ港に接岸、人道支援物資の荷下ろしにかかった。米軍によると船は作業終了後出航の予定。さる日曜にも米戦艦destroyer USS Mc Faul /駆逐艦マクフォールが同港で毛布や離乳食、日用品などの救援物質の荷下ろしを行ったが、同様に出航している。
こっちは、ル・モンドから。 欧州プレスによるロシア外交読み;自由貿易主義の砦、FTでメドヴェデフがなんか言ってますね:La presse européenne décrypte le coup diplomatique de Moscou
メドヴェデフ露大統領(ローマ法典が専門の教授だったという; しかし、ロシア節だなあ、の)@ファイナンシャル・タイムス意訳:
南オセアチアとアブハジアの独立を認めるというモスクワ政府の決定は、国際法にのっとったものだ。この独立承認はオセアチアとアブハジア住民の自由意志を尊重し、国連憲章の基本概念や他の国際法に準している。。。この決定のもたらす影響についても、火薬箱と形容される地域のすべて状況理解というものさしで計られ、ロシア和平維持軍はその炎上を防ぐ目的で行動した。(コソヴォに関し)国際関係においては、ひとつのルールを片方に適用し、もう一方に適用しないということはありえない。われわれは、コソヴォの違法独立宣言の(訳注;Nato圏による)容認のあと、コソヴォのアルバニア人には可能だったものが、オセアチア人とアブハジア人には不可能だとは言うことが出来ない、とわれわれは何度も繰り返してきた。
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27日のル・モンド社説です:Refaire l'empire /帝国再構築
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アフガニスタンではタリバンの人質になっていたペシャワール会所属邦人青年が死体で見つかっています。AFP報:Afghanistan: l'otage japonais des talibans a été tué
こちらの報道では、頭と足に銃撃の痕があったと報道しています。
今日発売のカナール・アンシェネは、アフガニスタンで“戦死”した仏兵のうち4人は人質となったのち処刑されたと伝えている。20minuts 関連記事Afghanistan : des soldats français exécutés?
どうも、パトロールにでる100人ほどの部隊に同行するはずの現地通訳が出発直前に消えうせてたらしい。こりゃひどい。
追記:カナール該当記事読みました。三面のおなじみすっぱ抜き欄であります。以下概約。
18日のパトロール任務(フランス兵約100名、アフガン部隊、装甲車数台)が出発する数時間前に同行するはずだった通訳が消え去っていた。これを異常と判断し行動予定を変更するなり、あるいはヘリコプターあるいは飛行機をとばして予定行程視察が必須だったするべき事態だった(カブール在留の仕官)。
タリバンからの攻撃が始まってすぐ、4兵士はタリバンに捕らえられ、すぐさま殺害された。実際の攻防は、夜をはさんで計9時間続いた。アフガン兵は何人かの負傷者がでたが、死者はなし;彼らは攻撃が始まった時点で近縁に村に逃げていた。
パリの上級軍人・仕官たちの意見:通訳なり警官かアフガン兵がタリバンに部隊の通過を知らせたに違いない。襲撃地の別の丘に待機させた別働隊から迫撃砲81あるいは迫撃砲120か、ミサイルmilan なり煙幕砲で援護すべきだった。なお、現地に送られている仏ヘリコプター2台はカルザイ大統領の護衛に使われている。救援の米アパッチとF15と A10の空からの射撃は、タリバンと仏兵が入り混じった戦闘だったため、効果をもたなかった。アフガン兵教育にはまったく効果がない。
ある仕官は「任務に必要とされる軍備がないのであれば、軍隊を国に引き止めるべき」”という。またフランス軍総司令官ジャン-ルイ・ジョルジェラン将軍も今年3月の時点で、「アフガニスタンはコントロールの効かないmerdier(ボーシット)になっている。われわれがこれ以上かかわっても何の利益もない」と繰り返していた。
なお、仏当局は複メディアからの問い合わせに対し、カナール記事の内容は事実ではないと返答しているようです。これは大体法的見地から言っても戦争ではないんだそう。仏国が戦争に入るためには議会の承認(投票)を得る必要があるんだが、それやってないから。
特にこの夏あたりからのアフガニスタン状態はますます悪化している。Operation Enduring Freedom とか言ってましたが結局イラクとおんなじ Enduring B・C じゃん。
ところでグーグル・アースにおけるアフガニスタンも白地図化しております。
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分割して統治、というのは覇権学の初歩なんだけれども、人種・宗教・部族とか、何でもいいけど分割しはじめたらきりはないんだよねえ。おまけに戦争と言うのは始めるのは簡単でも、終わらせるのは大変難しい。(+ いくらオイル・メジャー、あるいはオリガルシー、あるいは武器業界人がもうかっても、貧乏人はそれぞれのレベルで損ばかりである)
オイル業界系個人ブログで、ウクライナにロシアガス中継の、かなりおおきな天然ガス貯蔵サイトがあるって読んだんだけど(これガスプロム記事に書いたが消えた)、まだ裏とってない。でも、これが事実だとすると、なおさらウクライナがNATO(あるいはEU)に泣きつきたい気分は分かる。
WW2 のおしまい近く、ドイツに進軍したソヴィエト兵の戦いの進め方は、米海軍のノルマンディ上陸のようには語られないものの、猛烈なものだった。
ああ、このテラ飛行機にパイロットは乗ってないのだろうかあ。
うちのアパートには、奥さんが癌でなくなってから急にちっちゃくなっちゃったアルメニア人(仏生まれ)のじいちゃんとか、モスクワ生まれで40年来こっちに住んでるプーチン熱烈支持マダムがいるんだけど、2人ともこの頃ぐっと元気ない。