サルコジのフランスで、どうやって生きていったらよいのでしょうか、というのがテーマです。
- 極力客観的に政治動向を見る。無料新聞は読まない。もちろんTVはみない。
- 同時に具体的な政策面での変化を観察し(特に移民法、税法、刑事法などの中身を充分研究し)今後の対策を練る。
- 具体的に反対しえる法案等に関しては、デモも辞さず。
- 住民・同僚・家族など、横のつながりを重視。メディアは単なるネタと考え、実際に周りの人間と討論してみる。
気をつけるべき改革案
- 本住居購入時の借金金利(の一部)をパーにする計画:財務大臣はサルコジ大統領就任日以降の売買契約が対象といったん発言したものの、サルコジは自己の公約どうり契約日とは無関係に(つまり現在返済中の)すべてのクレジットが対象であると、釘をさしている。なお控除額は個人の収入税金額から差し引かれるそうだが、フランスの国民の半分は収入税を払っていない。この案が実現化されると、不動産バブル再加熱の可能性もあり、かえって社会賃貸住宅建築のほうが低賃金家族の支援になるとの批判がある。いずれにしてもかなりの国家支出が見込まれるプランである(ブイグは儲かるだろうけど。)
- 学区制の廃止。2007年秋には、現在の学区制の20パーセントが廃止される予定。これまでも、アンリⅣなどのハイレベル高校では学区を越えた生徒募集が行われている。また、親戚の家に住所だけ変更したり、小アパートを近くに借りたりして有名校に子息を送る、あるいは学区内によい学校がない場合は私立に入れるなどの例が多い。しかし、現政府の考えるようにすべての学区枠を取り除いた場合、優秀校と非優秀校の差がさらに大きくなるのは必至である。なお、社会党が大統領選挙前に提案していたのは、学区制度の手直しであって廃止ではなかった。
- 刑法改正:重犯者に対しての情状酌量および執行猶予の撤廃(peines plancher)。これは、各犯罪は個別に裁かれるという仏刑法基本精神に矛盾する。これまでの18歳ではなく(重犯の場合)16歳から成人と同様な刑罰を処する。現在でも、定員を大幅に越えていて世界人権団体からもクレームがついている仏刑務所環境と、こなすべき審判件数の絶え間ない増大の結果、ウェイティング・リスト長すぎ仏国裁判所の組織構造問題はどうするのだ、と法曹界からも批判は多い。(どうでもいいけど法相のRachida Dati/ラシダ・ダティ;サルコのコンドリーザ・ライスね、ピアノは弾けないみたいだけど、、、ってなんであんなに悲しい顔してるんだ?)
- 相続税の撤廃。高額収入者の(付加価値税除く)全体税額上限を全収入の50%とする。(減った分の税収入をうめるのは付加価値税引き上げ策か?)
- 超過勤務手当てにかかる税額を無税とする(雇用主の払う税については未定だったなず、これも財源不明。今でも超複雑な税体系がこれでもっと複雑化するわけだ AFP関連記事)。
- ストライキの際、国民がこうむる不都合をなくすための、最低サービスを義務化する。(各労働組合と相談の上、同意に達しない場合は議会が関連法を制定の流れ、ってもう決まったようなものであるな)。
ちょっと考えて思いつくのはこのぐらい。でも全部記憶で書いてるから不正確だし、具体的数字もないんで申し訳ない。(内容に間違いがあったら指摘してください)。
ああ、あと「国民アイデンティティと移民省」というのがあった。今のところ、この省の本当の目的とか意味とかは話題として出てきてない。メディアでの扱いは極めて小さかったのだけれど、この省発足に抗議して、ねブロでも前に名前が出てきた、la Cité nationale de l'histoire de l'immigration (CNHI) というプロジェクトから8人の歴史家が辞職している:Marie-Claude Blanc-Chaléard (Paris1), Geneviève Dreyfus-Armand (BDIC), Nancy L. Green (EHESS), Gérard Noiriel (EHESS)
, Patrick Simon, démographe (INED), Vincent Viet (IDHE), Marie-Christine Volovitch-Tavarès, Patrick Weil (CNRS-Paris1) 。
選挙運動中は、トルコのEU参加に絶対反対と元気のいいことを言っていたサルコジだが、実際のEUアジェンダにすでにあるトルコとの交渉を、彼ひとりの意見で変えられるわけもなく、絶対反対の意思もいつのまにかソフトになった風情であるね。ユーローを下げるぜ、というのも同様だ。
ルペン支持票を狙った選挙運動をして、結果はサルコの期待を上回る出来だった。「アイデンティと移民省」は作ったものの、強固な移民策を打ち出せば強固な反対にあうのはわかりきっている。この省がハリボテのまま終わる可能性だってある。
上にあげた種々改革案にしても、同様にいつの間にか萎んでしまう可能性もないわけではない。ここの読みは難しいです。敵対者が具体的に目の前にいる時は、脅威の闘争心を燃やしてかかるサルコジだけど、今は国のトップにいるわけなんだ。状況が違う。先代シラクと同様、なにもしない大統領化するのかも。(しかし今回の選挙の結果、UMPが議会での80%の議席を占めてしまったら、、、と考えると陰鬱になるわけだ。)
忘れてはいけないのは、サルコジには経済と外交に関する土台がないこと。おまけに、周辺に、自分を越える能力のありそうな人間を配したくない、いわゆるワンマン型(これって日本語でしたね)だということ。そして、学生時からRPR・UMPという政治団体内でエヴォリューしてきた人間で、シラク政権内での大臣職も長く経験しているってこと。そんな男が、これまでのフランス政治を根本的に変えることができるのだろうか。
ニコラ・サルコジという人間の強みは、そのエネルギーとコミニュケーション(メディア・経済界との関係作り、しゃべり力)にあるんだけれど、エネルギーとコミニュケーションだけで国が統治できるもんなんだろうか。おまけに敵を作る能力にも長けちゃってるんだし。同時に、なんでも自分でやりゃなきゃ気がすまない性格みたいだけど、一国を治めるってのは一人じゃできんでしょう。(イエスマンばかりに囲まれて、国を廃墟となした独裁者の数は歴史上数え切れないほどいるですね。なお、かならずしも読書好きではないサルコジですが、若いころ偉人伝を読み漁って将来の自画像を描いていたとか。)
と、まあエントリーはじめに戻って、今しばらくは観察を続けるしかないってわけだ。
追記:若干手を加えました。今気がついたのですが当エントリは、ね式ブログ第500本目の投稿。なんともはや、我ながらアキレカエリます。継続は力なり(ホントか?)ケロケロ。