ヨーロッパでの米弾道ミサイル防衛導入をめぐる記事です。今のフランスは大統領選で沸いており、なかなか欧州が話題に上ってこない。実際には防衛・移民政策・税制度・社会政策・産業問題・エコロジー・金利など、欧州レベルでなければ進まない課題が多いわけですが、肝心のヨーロッパはあのEU憲法がポシャッタところで停滞しているんですね。訳してみました。
米弾道ミサイル防衛ヨーロッパを困惑させる、ダニエル・ヴェルネ
ローマ条約調印周年にあたって、ヨーロッパはこれ以上分裂するべきではないと声明したアンゲラ・メルケルは正しい。しかし、アメリカとロシアは新たな分裂の機会を作ろうとしている。慎重さを怠れば、ヨーロッパはまたしても罠にはまる危険性がある。米国による弾道ミサイル防衛システムのポーランドとチェコ共和国配置は、1980年代の中距離弾道ミサイル配置が引き起こしたと同じ(欧州)分割を引き起こしかねない。再び、ドイツは議論の中心となりうるのだ。
何が問題なのか。米本土を狙う間大陸核弾道ミサイルを空中で破壊しうる、当初 National Missile Defense (NMD) と呼ばれたこのプログラム開発を、合衆国は数十年前から続けている。彼らは核抑止戦略の欠陥を埋めようと望んでいるのだ。 “確実なる相互破壊”という(ヴァーチャル)ゲームを仮想しない、すなわち反撃への恐れから原子爆弾使用を控えることがないテロ国家あるいはテログループが核兵器を所有した場合、(この核抑止戦略は)あきらかに有効性を失う。
巨大なロシア軍備と、“無法者国家”の破壊力のないミサイルを無効化する完璧な盾のアイデアは、今のところ単なるユートピアでしかない。けれど米国は、少しずつではあるが空中インターセプトの技術改良を実現し、人口を完璧に防衛するわけではないにしろ、防衛の新しいディメンションのエレメントとでもいうべきアンチミサイル・システムを配置し始めている。
これらのエレメントである、数基のインターセプターがポーランドに、また敵ミサイル探知レーダーがチェコ共和国に配置されようとしている。ロシアはすぐさま抗議の声をあげた。慣習から、 ロシアは自分の旧衛星国が打診することもなく決定した事実を受け入れがたい。また戦略上の理由から、 ロシアはオールド・ヨーロッパと自国との間に一定領域を挟みこみたいと望んでいる。最後に教義上の理由から、弾道ミサイル防衛は恐怖の均衡ドクトリンとは相容れないものであるから。
ヨーロッパにとって何が可能であるのだろう。まず、米国はいまだ試験段階にあるし、いずれにせよこのシステムは決して機能しないと、ダチョウの政治を実践する、つまり見て見ぬ振りをすること。あるいは、すでにドイツのソシアル・デモクラット勢力がやったように、モスクワの影響力を受け入れ続けるかだ。2009年の選挙でアンゲラ・メルケルに対抗し首相となりたいソシアル・デモクラット党首カート・ベックは、“新たな軍備競争”を告発する平和主義語調を再現する。いずれの場合も、まるで同じ共同体内にないかのように、ポーランドとチェコ共和国に、個々独自に解決法を見出すよう放任する。
しかしヨーロッパは、核拡散と抑制戦略という不幸が、取り組むべき真の問題であると認識することもできる。ヨーロッパの安全に関わる限り、弾道ミサイル防衛は間大西洋同盟の重要議題となるべきだろう。驚くべきことに、NATO 議長は自組織にはこの問題を扱う能力がないと判断している。だがNATO ・ ロシアフォーラムは、モスクワの危惧を一掃するための最適の場であるだろう。
そして、もしチェコとポーランドに、ヨーロッパのパートナーへの打診なしで決断する権利があるとすれば、EUもこの機会に、今まで明白な理由から避けてきた核軍備問題に取り組むことも可能なのだ。これは高い望みだが、ヨーロッパ防衛とは単にコンゴにおける選挙投票監視にとどまるものではない。だれもが、ヨーロッパの保全は分割しえるものではないと言ってきた。今はその統一性を示す時なのだ。
翻訳後記:軍事オタにあらざる猫屋訳ですので、テクニック・タームはかなり適当でスミマセン。なお、19インチ液晶モニターで翻訳作業はかなり楽になりましたが、かといって翻訳時間が短小されたわけではございませんでした。
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