結局、EU憲法批准フランス国民投票ペケ

仏時間２２時の数字　（ＴＶ FR2 による予想結果）
５５パーセント　ＮＯＮ
４５パーセント　ＯＵＩ

投票率がかなり上がったので、これはきっと、などと無駄な期待をしてしまいました。

*
22時の結果（最終的数字ではないにしろ、信頼できるもの）のあと各ＴＶ局（3ケ）では、政党代表、ＴＶジャーナリスト、アンケート社代表などが集まって恒例の討論会。私は見なかったが、選挙直後としては珍しく、シラクが短いスピーチをした。『この選挙結果があっても、フランスはＥＵから脱退しない。ＥＵはその道を進む。』 といった内容（のようである）。

それら番組には、ル・ペン親子、ド・ヴィリエ、ゴルニッシュ、シュベンヌモン、エマニュエリ、ブザンスノ、ビュッフェ、、、といったＮＯＮ派達がそろって『勝ったもんね』ディスクールを繰り広げ、めげた私は黙って狭いアパートの中をグルグル、、、結局ワイン瓶はすぐ空となり、Quel esprit tordu ! Bon sang などとわけのわからない言葉を発しているわけです。あー

『この結果はフランス民主主義の勝利である。』とは奇跡の人、シュベンヌモンの言。おいおい、上に上げたＮＯＮ派親玉の顔ぶれを見て、誰が“民主主義の勝利”を信じられると言うのか。いや、 “現政権への拒否勝利” あるいは “ポピュリズムの勝利” ではあるかもしれない。

友人・知人のうち、ＮＯＮに投票すると息巻いていた連中のことを考える。最近会社がつぶれた失業男、離婚を2回経験しながら独りで子供たちを育てる仏版肝っ玉母さん、、、。

パリではお目にかかれないが、時代に置いていかれた感のある、たとえばベルギーに近いパ・ド・カレなどの（失業率の高い）地方の生粋仏人達。日本で言う、“負け組”人口が大幅にＮＯＮに入れたと想定すると、わが社会学者たちが語るフランスとはまた違ったもうひとつのフランスの姿が見えてくる。

ポピュリズムとは、国民の無知が必ずしもその原因であるわけではないだろう。

過去数年に、フランス人口における中間層の生活レベルが大きく後退したと感じる。失業し、あるいは転職の自由が消え去り、離婚や度重なる再婚があり、同時に生活費は増大する、、といった悪循環が、結局中間層を最低賃金生活者レベルに押し下げる。

同時に、かつて存在した下層から中・上層への上昇が難しくなり、社会全体がレベルアップする時代はいつの間にか終わっていた。しだいに中間層が消滅し、ごく一部のエリートと最低賃金層、そしてアンダー最低賃金/失業者からなる最下層という現実のシェーマ/図式、が目の前にある。　

もちろん、どんどん膨れ上がる高齢者達の投票傾向も視野に入れるべきだ。　豊かな老後をエンジョイできるリタイヤ組は別としても、限られた年金で暮らす孤独な老人たちが、ＴＶで繰り広げられる“ヴァイオレントでテクニカルな”現代像を見て大いなる不安あるいは恐怖を抱いたとしても何の不思議はない。

今夜のＴＶにダニエル・コーン・ヴェンディットの姿はなかった。私は今一度、先日の彼のように、頭を抱え込む以外になすべきことが見出せない。失われたものは実に大きいのだ。

そして、ジャック・シラクはＥＵ憲法をコケさせた男として、歴史にその名を残すのである。

**
後記：昨夜は変な酒の飲み方をしたせいか妙な時刻に目が覚めてしまいました。丑三つ時にググッて見つけたのが、4月20日リベラシオンに掲載されたもうひとりの仏社会学者 François Dubet の文章転載　Derrière le social, la nation、かなり過激な“左派”批判です。どうやって仏左派がナショナリズムというトラップにはまってしまうかの分析。結局、昨日の国民投票は、フランスにおける左派が“social-democrate”と“共和ナショナル”派に分かれ、言い換えれば“保守左派”と“社会リベラル左派”となった分節点と読むことができます。
---　なお（自分はまだ読んでないけど）このリベ記事が掲載されている Multitudes web サイトで４月１３日付けのトニ・ネグリ/ Toni NEGRI の長ーいインタヴュも読めます。

Comments

[投稿情報:]

「負け組」みたいなくだらない日本の発想に依存して物を言っているあなたのようなひとが、一体どうして「反グロ派」と同じ思想基盤に立っているなどと考えられるのかよく分からないですね。失業者や離婚経験者についての傲慢な意見にも恐れ入りましたが。

[投稿情報: nekoyanagi]

恐れ入ります。

[投稿情報: Mari]

やっちまいましたね。私はＢＢＣを昨日見ていて、浮動票が・・・と彼らも希望的観測を述べていたので、「ま、じゃあ明日の朝」と寝てしまったのですが。　大差とは。　
ＥＵ憲法でどうも世の中よくなると納得でけん。　な人が多かったんでしょうね。　うつ病と同じで、「いや、アンタは大丈夫だって」と言っても当然効果は無し。　長期的美しき展望より目先の団子。　「国民投票」自体が敗因なのねん。　でもまあ、ＥＵをつまづかせても国民の総意を求めるのが大切（とシラクなんかは想像してなかっただろうけど）。　そういう国も大国メンバーなＥＵなのですから、仕方がない。

今回でかなりな足踏み。しかし、アジア圏のもめようを考えたら、ＥＵがちょっと遅れを見せてもまあ、いいか。先は長いデス。　終わってしまったことは仕方ない。ため息をついて、お酒を飲んで、寝て、それから元気を出しましょう。（あと美味しいご飯ね）

[投稿情報: nekoyanagi/猫屋寅八]

mariさん、
まったくその通りで。しかし、東洋の魔女はやはり優しい、と言うか。
オラ、もー不良しちゃう、なんてことはなしで海鮮ゴーモン復帰の予定です。

ただ、猫屋、明日からこの冬のスキーで傷めたね式本体パーツ修理のためクリニック行き。いや単なる２・３日の修理ですが、本当はＨＤ交換が必要という声もあり。久々の病院食を満喫できるぞ、ヘホー（仏）ヨーロレイヒー（スイス）。

[投稿情報: fenestrae]

お疲れ様でした。こちらもワイン消費量に転化されました。こんなところで慰めあってもしょうがないわけですが。
François Dubet のテキスト、読みました。かなり思い切ってますね。
。
３月の世論逆転の前後に何が起ったか、左派のノンの性質と役割が気になって、夜中にぼちぼち見ていました。とくにネット空間を中心に。
反グローバル派の発言の裏に見え隠れする、国家主権派的発想の基盤や由来が気になっています。シュヴェヌマンティストの役割が気になるとまで言うとちょっと陰謀論じみてくるわけですが。
ネグリらがAttacウィ派宣言をだしたのが5月13日、これはほんとうに遅かったです。
フランスの左派は今回の論争における立場決定の分水嶺の意味を考え抜き、それに基づいて自己構築していかなければ、単なるポピュリストになるか、左派ブランドを維持するために前者に遠慮したディスクールをくり返しながらその実中身はUDFぐらいの存在になっていくしかないと危惧しています。
そんなことを考えながら、やっとこさ、転んでもただでは起きないという気分になってきました。もっとも汎欧州的にみれば迷惑な話で、他国ではそんなウジウジはとっくに決着済みといわれればフランスの左派は立つ瀬がないわけですけどね。
クリニックでのリフレッシュと完全整備をお祈りしてます。こちらは、新自由主義的市場経済活動への義務的適応生活に沈潜しユイシエと闘いながら、ぼちぼち考えていきます。

[投稿情報: ふらんす]

フランス、かなり重症ですね。自分の周りは圧倒的にOUIの人ばかり（パリ地方でしかも会社の中間管理職、というプロフィールではそれも当然）でしたので本当にNONが勝つとはもうびっくりです。お大事にー。

[投稿情報: nekoyanagi/猫屋寅八]

fenestrae さん、
どうも大変でした。あんなに怒り（なんだろうな）が沸いてきたってのは久しぶりでした。昨夜同様な感情を持った人間は多かったんだろう。必ずしもフランス人ばかりでなく、必ずしも仏国内ばかりでなく。

これから今日分のブログ書き出すつもりですが、何が書けるのかはいつものとおりとわからないんです。自分は、書いてやっと見えてくる事象というのがあって、あくまで自分のために書くという徹底したエゴイストなわけですが、きわめて短かった掲示板時代にしても、今回のブログ経験にしても、タコツボ内でグルグル自己醗酵するのと違った方向性が出てきて、おもしろいな、と思っています。

ネグリのウイ宣言、そうだったんですか。まあ、同時に私のような人間がヤバサに気がついたのもかなり遅くなってからですからね。ただ、“ストラテジ”の不在は悔やまれます。左派/ゴーシュがどうやって生き延びるのか、あるいは死に絶えるのか、、ですね。サルトル・カミュのとこまで後退してみるべか、ともやっぱ（わからん）フーコー読みで人生終わっちゃうのか、、とか。た・めー息のでるよーな、、選挙あと。

ユイシエかあ、ゆゆしいですが。。。ご健闘を祈ります。
話はずれますが、斉藤さん、やはり亡くなっていたのですね。ただ、惜しい。
*
フランス さん、
パリ市内の選挙結果を見てもそうですね。逆に、北のほうや南仏では立場が逆転していますから、一種の感染状態だったのかも知れません。２００２年の失敗をまたやっちゃった。どこかを根本的に変えないといけないんだろうが、その力はあるのか、どうか。難しいですね。これはフランスばかりでない、世界中での政治制度の課題だと思います。

[投稿情報: メディ]

猫屋さん、こんばんは。皆さん早い！
私ももー疲れましたが、なんとなく充実感（うちのブログを見てやってくださいまし）。
どうして？を探す一助になればと…。
ところで…スキーで何やっちゃったんですか？
フランスの病院食、私はあまり良い思い出ないですが（笑）、整形外科系なら関係ないのかな？
どうぞごゆっくり休んでください。

[投稿情報: nekoyanagi]

メディさん、こんばんは。
ブログ見ました。過酷な身体労働の翻訳ばかりじゃなくて豪華可憐なプレゼンテーションまでやっちゃうんだから、単なる“言いたい放題屋”は困っちゃうわけです。今夜は寝不足の猫屋、考えがまとまらずこのままドロンと寝るですよ。

スキーで膝を傷めました。ＨＤもだし、メモリもスキンも全部変えたい気分です。いや19ｘｘ年ぐらいにリストアしたほうが、、、とも行かないので積読書を何冊か抱えて、結局爆睡になりそうですが。（メディさんソースで状況分析、時間があったらやりたいんだけどね）

[投稿情報: Mari]

今頃はパーツ修理中ですか？　お大事にー。　わたくしなんぞは外装全て塗りなおし、みたいなことをやってみたいです。　スイスならそんなクリニックがありそうな。しかしこれもロト当てなければ。　ドイツの病院食を思い出しました。ドイツですから。　想像して余りあるものがあると思います。　

[投稿情報: 猫寅]

猫寅（メンドウでどんどん名前が短くなりますが）無事戻ってまいりました。病院食も結局まともに食べたのは２食のみ、よって、あまりの空腹のおかげか美味かったですよ。