日曜の午後、散歩に出かけてみたらやっぱり近所の沼が凍っていた。こんな風景は久しぶりだ。10年ぐらい前だったかには、凍った同じ沼の上をバイクまで走っていた。しかし、のんびりしたもんだなあ、ここ。凍った沼上には『スケートをしないように』と、置かれた駐車違反用の標識に書かれているだけである。
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《民族とネイション》とタイトルされた新書をぼおっと読み始めたわけだが、どこかでイスラエルと言う国のことが引っかかる。
かつて米英国のイラク攻撃に反対した時のように、ヨーロッパではパレスティナ支持のデモが各地で繰り広げられている。
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ガザ市から11日に帰還した2名のノルウェー医師によると、イスラエル軍は DIMA: Dense Inert Metal Explosive も攻撃に使用しているようだ。これはタングステン・コバルト・ニッケル・鉄などを混同した炭素からなる小さな球体が10メートルに飛び散るのだそうだ。医師たちによると、落下地点から2メートルにいる人間は二つに引きさかれ、8メートルの距離では両足が焼かれて吹っ飛ぶという。以上の情報はル・モンド記事から:医師たちはガザでの新型兵器の使用を言及
地下トンネル破壊のためなのだろうか。
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これはル・モンドの特派員コリン・レスヌのブログから、
ガザにおける攻撃に使われている武器についての New America Foundation のレポート:U.S. Weapons at War 2008 / Beyond the Bush Legacy によると
- Israel’s intervention in the Gaza Strip has been fueled largely by U.S.-supplied weapons paid for with U.S. tax dollars: ·
- During the Bush administration (from FY2002 through FY2009) Israel has received over $21 billion in U.S. security assistance, including $19 billion in direct military aid under the Pentagon’s Foreign Military Financing (FMF) program. ·
- The bulk of Israel’s current arsenal is composed of equipment supplied under U.S. assistance programs. For example, Israel has 226 U.S.-supplied F-16 fighter and attack jets, over 700 M-60 tanks, 6,000 armored personnel carriers, and scores of transport planes, attack helicopters, utility and training aircraft, bombs, and tactical missiles of all kinds. ·
- During 2008 alone, the United States made over $22 billion in arms sales offers to Israel, including a proposed deal for as many as 75 F-35 Joint Strike Fighters worth up to $15.2 billion; nine C-130J-30 aircraft worth up to $1.9 billion; 4 Littoral combat ships and related equipment worth as much as $1.9 billion; and up to $1.3 billion worth of gasoline and jet aviation fuel.
なのだそうだ。。。
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エジプトからガザに通じるトンネルは、エジプト側で300、ガザサイドでは1000から1500の入り口(つまり出口)があると聞いた。このトンネルは封鎖されたガザに物資を導入するために作られた非合法ものであり、ガザ住民が必要とする食料・医薬品に加え、カラシニコフや小型ロケット砲も含まれてる。
他の多くのイスラム国と同様に、親米である政権は、国民たちのガザでのパレスティナ人に対する同情を無視するわけにはいかないから、エジプト政府もこのトンネルの規制には乗り気ではない。繰り返すが、このトンネルを通して運び込まれているのは武器だけではなく、ガザ人口が必要としている生命線;食料・医薬品・日用品が含まれている。多くのパレスティナ人を内包する周縁国家が恐れているのは、ハマスと自国内の強硬イスラム主義者たちが横の連帯を持つことだ。
この非公式トンネルを、ハマスを撲滅したいイスラエル軍が攻撃しているのだが、いかんせん、トンネルの上には人間が住んでいる。密集して住んでいるんだ。
ヨーロッパなどの送る支援物資は、なかなかガザに届かない。イスラエル側との境には高い壁とチェック・ポイントがあり、すべてはイスラエル政府にコントロールされている。
かろうじてガザに入った赤十字のトラックさえ攻撃を受けている。
イスラエル国家は、実は政治危機で解体寸前なんだが、『攻撃された以上、自己防衛する』として、ブッシュ米国政権の支持を得ている。
対するパレスティナ『自治区』では1987年に始まった第一次インチファーダで石を投げていた子供たちが青年となり、現在『パレスティナ解放軍』としてハマスの一部をなしていたとしても何の不思議もない。同時に、イスラエルや『国際社会』が認めるファハタは、汚職問題とイスラエルによる支援打ち切りにより弱体化し、政府として機能せずにガザ住民の支持を失った。
ハマスの起源はムスリム同胞団であり、現在でも公式にはイスラエル国の存在を認めていない。2006年の議会選挙結果ハマスが過半数を占めたが、テロ集団だとして公の『国際社会』はその存在を否定している。だが、過去にはファハタに対抗する勢力として米国およびイスラエルからの援助を受けていたことも事実だ。
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ガザで大昔、日本語のガーゼ・仏語のガーズ、つまり傷口を覆う目の荒い医療生地が発明されたのだと昨日知った。
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国家とはなんだろうと考え続けているんだが、それぞれの国家がそれぞれの特殊性を持っているにしろ、イスラエルと言う国の(米国にも一部当てはまるかもしれないが)特殊性は、歴史的政治的地域的に見てもかなり変わってると思う。ひらったく言えばイスラエルはパレスティナに植民したんだと考えるんだけど、そこに『聖書的事実』が登場する。20世紀欧州での『歴史的事実』も絡んでくる。
いわゆる『共同幻想』がある民族なり国家なりの基盤思想をなすにしても、その『幻想』が他者=外部に認められない限り、それはリアルな意味をなすとは思えない。そこには『事実』がないからだ。
少なくとも近代以降の考えでは、国境とは接する複数の国家の同意によって成立すると認識している。対して、壁とは一方的に作られるものだ。ベルリンの壁、パレスティナを囲う壁、米国とメキシコ間の壁、etc.etc...
知り合いのイスラエル人と話したり、BHLとかの知識人の話を聞いていると、よく出てくるのは『真実は、聖書に書かかれている』という言葉だ。議論がある一点までくると『(旧約)聖書にそれは書かれていた。この地は約束されていたのだ。われわれは選ばれた民族だ。』と言われることになる。
ブッシュの米国にしろイスラエルにしろ、選ばれた民族と自己を規定してしまっていいんだろうか。だったらそれ以外の国・民族・個人は、自らは選ばれていないとあきらめるべきなのか。
共存から遠く、そうやって抗争が続いていく。パレスティナの地には、二つの歴史が重なって存在してるんだが、壁の向こうで何が起こっているのか人々は知らされないままだ。
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本当はこのインタヴュ-を紹介したかったんだけど、なんかパレスティナ系で今夜は腹が立って、部分紹介する時間がなくなっちゃった。
1996年、つまり今から12年前にある女性写真家が『アメリカのカップルたち』というタイトルの本を作った時のインタヴューです。答えているのはミシェル・オバマとバラコ・オバマ。このインタヴューは本の中には採用されなかったそうだ。
ウェブ版で3ページありますが、彼らの誠実さと二人の性格のコントラスト、そしてそれぞれの知性が見事に浮かび上がっている。(思わず、アタクシが住んでる国の元首に足りないのは身長だけじゃないよなー、とため息をついたのだったよ。)
バラコバマについてアタクシ何も知らないけれど、彼の書いた『父の夢』という本を読みたくなった。
しかし、米国大統領となるオバマの負うべき責任は大きすぎるのではないか。
ガザはもう一週間待たなければいけないのか。。。ガザでの死者は900人を越えた。
>落下地点から2メートルにいる人間は二つに引きさかれ、8メートルの距離では両足が焼かれて吹っ飛ぶという
並の砲弾・爆弾でもそれ以上の破壊力があると思われます。
また、新兵器(?)を取り上げて批判することは、むしろ今回の紛争において批判すべき焦点をぼかすことにつながりかねないと考えます。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2009-01-14 14:05
なるほど。
アタクシとしては、気になった空から降ってくる記事を紹介してるだけなんで、その点には思いが及びませんでした。
イスラエルは攻撃開始前にガザに入っていた外国人に退去命令をだしています。この二人の医師はそれでも残っていた例外的存在で、現在ジャーナリストたちはエジプトやイスラエルで周辺取材しかできない。
1000人をこす死者がでていると言われていますが、これだって確認できない。
ガザに関する話は、めくらたちが象について語り合っているようなものなのです。
投稿情報: 猫屋 | 2009-01-15 10:39
>確認できない
おっしゃるとおりですね。
たいていの戦場はそうでしょうが、当事者同士(被害者か加害者かは別にして)しかいない訳で。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2009-01-15 13:55