これは、ニコラ・サルコジという一人の男の野望とその結果である大統領職就任から9ヵ月目の成果と、彼の個人的政治戦略と、世界経済状況と、それから世界政治状況が複雑に絡んでいるので、簡単には解説できる話ではない。と、まず最初に書いておく。そうなんですよ。
まずはサルコジへの評価市場調査結果が、今年に入って、特に2月あたま、スッタモンダのすえのカルラ・ブルニとの“電撃結婚”以来、急に落下したという事実がある。
実はサルコジ人気は、ヌイイ市長時代の幼稚園人質事件でメディアに大きく報道されてから、当時はRPRだった仏第一保守党内でシラクを裏切ってバラデュール支持した時点(1995)で大幅に下がり、1997年にド・ヴィルパンの計らいでRPRの書記長に就任するまでは党内でも孤立、結局2002年のラファラン政権で内務相に就任した時点から、第二夫人セシリアを正規官房長に任命してTV番組をはじめパリマッチ誌などでの家族を交えたメディア戦略を展開し始め、このブレア方式(つまりメディアを制するものが政治を制するというやり方)をフランスで一番先に展開した結果として、確立された、というバックグラウンドがまずある。ああ、息が切れます。ゼイゼイ;今回は主語と動詞をどうにかつなげることができました。
ただ同時に、スピーディー・サルコ(メルケル女史によればデュラセル乾電池)はいたるところに敵を作ったし、たとえば大統領選挙前のセシリア駆け落ち劇のお相手アティラも、UMP党大会を米国共和党党大会なみに派手にする目的でサルコジに雇われた広告業の人である。なお、関係ないがセシリア・サルコジとこのモロッコ国籍企業家アティラももうすぐ結婚だそうで、めでたいというべきなのかどうなのか。。。
ところで、このところネット界でもサルコジ軍団が再び活性化しているわけだが、それにはいくつかの理由がある。猫屋得意のリストアップで紹介したい。
- まず国内政治理由:3月始めに仏国全国市長選挙があり、サルコジ不人気を背景にUMPは大敗、という見方が強くなっている。結果、サルコはロレーヌ地方の閉鎖される予定の製鉄工場(インド製鉄王ミタルが買収済)の600人からの労働者たちに対して“国は見捨てない、絶対雇用を確保する”と約束(なおサルコジは現地に45分間滞在だそうだ)。また、アタリ・レポートの、タクシー料金を下げさせるためにパリのタクシー台数を増やすという条項に反対し、水曜日タクシー運転手たちがパリでストを行うと即、アタリの該当条項削除を政府は発表。また低所得退職者への一律200ユーロ臨時手当支給も発表。国庫はカラのはずなのに、選挙前になると突然予算が沸いて出る不思議に誰もが首をかしげる今日この頃なのである。ソースはリベでどうぞ:A un mois des municipales, Sarkozy chouchoute les électeurs de droite
- つづいて外交問題①:チャドがヘン編。つまりチャドで“人権団体”アルシュ・ド・ゾエの活動を取材中、一緒に逮捕されたジャーナリストを迎えにパリとチャドを往復フライトしたほどのサルコジなんですが、このところフランスと、ただいま反政府コアリションと紛争中チャド政権とのかかわりに、どうも了解不能な部分があるわけ。これもはしょった説明しかできないんだけど、ダルフール絡みでチャドに拘留されていた“ヒュマニティー団体”であるアルシュ・ド・ゾエ派遣団員6人はチャドでの裁判で8年の公共労働の罰に処されたんですね。ところが、チャド現地でこの刑罰を終えるかとも思われた隊員たちはフランスに送還された。ところが、ところが、チャドのデビ大統領(Idriss Déby)は隊員たちをフランスに送還するための恩赦をする用意があると言い出してきたんですね。フーム。ここからがメンドクなる。現地に飛んだ仏国防衛大臣モランによれば、仏国はチャド現政権を支持し、現政権の反政府勢力との紛争にも直接の軍事援助を行っていると発言してる。参考ラ・クロワ紙:La France a permis à Idriss Déby de sauver son régime しかし現在モーリタニアに出張中の仏外務相クシュネールによれば、フランスとチャド政府の軍事提携契約では、仏国軍隊はチャド軍隊へのテクニカル面での支援は行うが、それ以上チャド国内の政治紛争での軍事関与なしと発表しているわけ。オプス記事:Tchad : Kouchner dément l'intervention des "forces spéciales"
忘れてならないのは、チャドがダルフールの隣国であること。また、アフリカにおいては国境という“一般的”概念は通用しない事実と、アフリカに限らず世界中どこでもなんだが、独裁者と民主主義で選ばれた大統領との間にある一線というのも実はそれほど明解ではないのだという事実である。
なお、何時間か前に読んだ、クシュネールの仏政府外交路線批判“彼らは過去から何も学んでいない素人だ”という発言記事が、今ではネットのどこにも見つからなくなっていることも書きしるしておく。
実は、新婚初夜(おお、こんな前世紀的単語をまだ覚えてイタゾ!)翌日の3日ヴェルサイユ宮殿のお庭をお散歩された仏大統領御夫妻って御報道に隠れて、翌日4日にコソコソ行われたヨーロッパ憲法再批准ヴェルサイユ投票って話題もあるし、ネック・ウルトラな、現時点でもっとも人気のジャーナリストアパティの8日朝のラジオ番組で、チャド問題を語るはずの人権大臣ラマ・ヤデちゃんが、なんとチャドではなくサルコジのsms訴訟問題に関してちゃぶ台をひっくり返すという荒業に出た、という話もあるのだよ。
予告:一応ご存知ないレクターにご紹介しときますと、サルコジは結婚一週間前に、セシリアに向けて“帰ってきてくれたら、いっさいキャンセルする”という携帯メッセージを送ったけど返事はなかった、とウェブ・オプスが報道したんだ。これをサルコジ大統領は民事ではなく刑事法で訴えたわけ、、、。シャレのワカラン男に仏大統領職は務まらない、という内容の帝国の逆襲②、ラマちゃんヒューマンボンブ化する編は、またあした。
政治家っていうのは、嘘をつくのも仕事だけど、最初っから全面に「これ、嘘なんだけどさあ。」とぶつけられる政治には、本当にもううんざり,頭に来る。 だれか、この悪魔の黙示録から早く救い出して下さい。
2月のEDF,GDFの請求書を見て,死にそうになったのは私だけでしょうか? 毎日夜9時、10時まで、日曜日も午前中開けるようになったスーパーに売っている、鶏肉の値段が1,5倍になってるのに気がつかない人はどこにいるの? 昔は、お金がなくてもそれなりに楽しめたフランス生活、どうして今はこんなに暗くなってしまったのでしょうか。 昨日は、アパチも怒ってましたねえ、、、。
投稿情報: k | 2008-02-09 11:36
39%ですねえ。関係ないですが、フランス人はストライキやデモで悪名高いですが、実態は国民の4パーセント程度なのだそうで。猿氏の言葉を借りれば「少数派反抗分子」。氏のロジックでは少数派の意見は聞くに足らず。なら氏はもう。。。。ねえ。ヌィイーも混乱の様子で息子のしゃべり方が21でパパ・ドッペルゲンガーなのには脱力。。。
投稿情報: Amina toujours en résistance | 2008-02-12 00:31
貧乏はそれなりに慣れるけど、大見得きっての嘘と成金見せびらかしは、アタマに来る。
バディウも書いてるけど、歴史を動かすのはいつだって少数派なんだよっ、ねっ。サルコジは最終的には墜落すると思うけど、それにしても代価が高すぎるですよ。
投稿情報: 猫屋 | 2008-02-12 04:56