4月11日カナール・アンシャネの5ぺージ小記事即訳です。この新聞の味はなかなかトーシローにはかないませぬが、放っておくのはもったいない。で、駄訳出稿。
Parle à mon gène... 自分の遺伝子に語る...
サルコジは毎日ネタを見つけ出す。少なくとも、古い話題から新しいなにかを作り出す。今回は遺伝子ネタだ。哲学者ミシェル・オンフレイとの対談時に、彼によれば“ペドフィリアは生まれつき” なのだと主張した。同様に年間1200から1300の青少年自殺者は “なぜなら遺伝的に弱く、あらかじめ苦悩を持っている” ために自殺すると公言している。古い話だ:人間は、パパとママの遺伝子を装備して、すべて出来上がって生まれてくる。レゴとまったく同じに、すべては箱の中に押し込まれており、それから起こることは、つまり生まれた場の環境内で育ち、教育を受け、配慮と注意を受けて、あるいは受けずに成長するわけだが、それらは宿命にさほど影響を及ぼさないというわけだ。遺伝子はすべてを、あるいはほとんどすべてを決定する。ラカイユ(ごろつき)はラカイユとして生まれる。不正行為を働くもの(fraudeur)は不正を働くものとして生まれる。朝早く起きるものは、朝早く起きる遺伝子を持っている、エトセトラ。すべては遺伝子なのだ!たとえば、ヌイイの住民がいい例だ。サルコジはこう言っている、「ヌイイに住む人々は偶然にここに住んでいるわけではない」。 なぜなら、「ここの住民はこの市に住むことを選んだ意思によって特別なのである。」 まさにそうだ:金持ちは意思の遺伝子を持っていて、運のない貧乏人はアルジョントイユでまったくさえない毎日を送っている。この男にはまったくのところ疲れさせられる。われわれはくどくどと同じことを繰り返すはめに陥る。とんでもない昔の話にわれわれを引き戻す。19世紀にセザール・ロンブロゾは、犯罪者は共通して犯罪のクロモゾームを有すると言い張った。しかし誰も犯罪のクロモゾームを発見しなかった。その後にも、ホモセクシュアルの遺伝子、あるいは暴力性の遺伝子を隔離したと主張する人物は絶え間なくいた。けれど誰も何も見つけ出さなかった。米国の研究者はこの手のバカな研究のスペシャリストだ(バカな研究者の遺伝か?)。定期的に、彼らの一人がユウレカと叫び、たとえば白人が有するところの、つまり黒人は明白に有さないところの、インテリジェンスの遺伝子を見つけたと出張する。ピポー。これらの背後には、ある一般論が見え隠れする。われらの豊かな社会において、苦しむ、あるいは苦しませる人々とは、つまり気違い・犯罪者・貧乏人・マイノリティ・失業者・出刑者は、結局彼ら自身が責任者なのだ。遺伝子のせいなのだ。《気の狂った資本主義》を告発する人間には、ここでは何もなすべきことはない。われわれの社会は、不正義にも、アリエネーションにも、支配にも基礎を置いていない:これで大変よろしい、なぜ変える必要がある?
ここでわれわれは、《コンプレクスを捨てた保守》という、サルコジの大事な信念を想起する。彼は、1980年代の、Alain de Benoist の Grece に負うところ大である 《Fig-Mag(訳注;新聞ル・フィガロの日曜版)》 からアイデアをピックアップしている。Greceはルペン主義者にも大きなインスピレーションを与えているのだが。。。サルコジはわれわれに警告する:私が約束する《未来のフランス》では、山ほどの負け組み(perdants)が出現するだろう。みじめな、ルーザー(losers)、職が見つからないヤカラ、自殺志望者、他人すべてがライバルである絶体絶命競争に耐え切れない人物。これらの人物に関して、私の両手はすでに洗ってある。私に一切責任はない。ヌイイで見つかるような、善き遺伝子を持つべきなのだ。
Jean-Luc Porquet ジャン・リュック ポルケ
訳後記:当記事のウェブ版なしだけど、まだキオスクで売ってますので猫屋訳に疑問のある方は買って読んでください(笑)。後後記:記事貼りました。
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もうひとつサルコジ関連ル・モンド記事を貼っておきます。エコル・ノルマル(高等師範)で教えてる若手社会学者(専門は仏と米国のジャンル研究)、エリック・ファッサンによるサルコジ論理分析。ディスオーダーに対する対策はないと、みごとにサルコジの非“論理性”を論理的に説明している。仏語読みの方、必読。タイトルは サルコジ、あるいはコンフュージョン・アート
また、同じエリック・ハッサン(♂)によるリベの記事 選挙戦におけるセクシズムも見つけました。
サルコジは、遺伝決定論や、社会ダーウィニズム、優生学の信奉者なんですか?こりゃまた、なんとも古めかしいですね。この手の思想がいかにヤバイか、ヨーロッパ人は、第二次世界大戦で十二分に学んだと思うのですが。そもそも、変えられない自然的要素に抗って、社会を改善していくことが、人工の自然たる社会の設計に携わる政治家の仕事だと思うのですが。この失言で、サルコジの人気が急激に下がったりはしていないのですか?
投稿情報: saisenreiha | 2007-04-14 05:29
猫訳よりもリタイプかスキャンしてくれたほうがうれしいかも。
投稿情報: rdytr | 2007-04-14 16:02
でも時間がないかも。
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-14 21:49
seisenreiha 氏、
と、思うでしょう? しかしここはフランス、WW2で変な勝ち方してるから衛生学免疫がないのかも。あと米国でのIDの話にしたって知ってる人が少ない。あとは変な危機感が盛り上がってるから、国父みたいなマッチョに頼りたい父なし子が多いし。あと個人タクシーとか小商店主、あるいはブルジョワ年金退職者や企業家が税金対策に引かれてのサルコ支持は理解できるけど、(以前はルペン支持だったりする)学校にも行かない職もないなんて若い連中がサポーターだったりします。ブッシュ的なところが、如何せん、あるねサルコ。
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-14 22:00