多和田葉子さんの“犬婿入り”は、見事に面白い小説でした。
面倒臭がりやの女に言われて黒い犬がお姫様のお尻をぺロリぺロリと舐めた
そういう話です。この作品が1993年に芥川賞をもらったそうで。なんだ、案外日本語大丈夫だったんだな、と今頃思った。そのほかにも多和田さんの作品は、ペルソナと学園ものの球形時間を読んだけれど、作品全体の構成の弱さ、つまり完成度の問題はあるけれど、インパクトの強さはこの作品がぬきんでている。言葉の強さです。一つ一つの言葉がそれぞれの強さや光を持っていて、横やたてのほかの言葉と競合している。これはめずらしい、というか。たとえば、ご飯の米粒の一粒一粒が独立して光っているみたいに、言葉群が流れず、言い換えれば固まっていない。
作者自身もかなり楽しみながら書いたんじゃないか、これ。不真面目なところがすべてを救っている。たまには日本語の本も読んでみるものだなあ、と思いました。
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