子供、結婚、離婚 :家族の変容
ル・モンド 2006年1月26日付け記事訳出わずか50年の間に、家族は静かに、しかし大きな変容を遂げた。結婚の後退、ユニオンリーブル(同棲関係)の増加、カップルの壊れやすさ、再構築家族(子連れ再婚) :2005年の家族は第二次世界大戦直後の家族には似ても似つかない。二世代交代より短い間に出現したこの突然変異現象を分析しようと、フランス議会議長ジャン-ルイ・ドブレは約1年前に、パクス法発案者の一人である社会党パリ代議士パトリック・ブロッシュに調査を依頼した。本調査レポーターの一人でUMPのスポークスパーソンでもあるヴァレリー・ペクレッスは、この400ページを越す最終報告で現在の家族像を描き出している。
結婚の後退 過去数十年の間にわたって結婚の減少が続いている: 1970年に市役所で行われた結婚式は約40万件だったが、2005年にはわずか28万件と、30パーセントの減少を見せている。「特に1970年代、『ブルジョワ的結婚』という伝統的制度に関する拒絶があったにしても、婚姻率低下は結婚拒否から直接来るものではない。」 と、1998年の「今日のカップル、親子関係、親性」 -Irène Théry, "Couple, filiation et parenté aujourd'hui- というレポートで社会学者イレーン・テリーは分析している。より根本的に見れば、婚姻制度の社会的位置がカップルという概念の変容とともに変わってきたと言えるだろう: 結婚するかしないかは、個人意識の問題になったのだ。
結婚に至る場合でも、カップルの決断はますます高年齢になってから行われる。1970年にくらべ婚姻平均年齢は6歳上がった:現在は女性では28.8歳、男性では30.9歳だ。
今日、多くのカップルが「過去に比較し、より頻繁でより長く続く」同棲( 訳注;l'union libre、以下ユニオン・リーブルと書く)を選ぶ、と議会レポートは強調する。多くの人々が、カップルでの生活をこのスタイルで始めている:1970年には10組のうちの1組だったが、今では10組のうち9組までがユニオン・リーブルで共同生活を始める。ユニオン・リーブルは、すでに多くの人々が経験した共生スタイルである、マイノリティな人々、あるいは年少者だけの生活スタイルではなく、反対に、すでに共同生活の失敗を過去に経験した多くの男性と女性の間に広がっていると調査レポートは強調する。
カップルの壊れやすさ 議会調査委員会に答え、国立人口研究所(INED)のフランス・プリウ所長は「つながりの不安定さはすべての共生カテゴリー内で増大している。」と言う。1970年には100件に対して12件に満たなかった離婚率が、現在では100件の結婚に対して42の離婚となっている。結婚および非結婚を合わせ、1990年前後に一緒になったカップルのうち15パーセントは5年内に共同生活を解消し、30パーセントは10年以内に解消している。
1998年のイレーン・テリのレポートは、この不安定性を近代カップルの『無責任さ』の結果とは見なさず、二重現象から帰結するとする:離婚が必ずしも否定的には見られなくなったという『事実効果』から、結婚破棄が不可能だった時代にくらべ、共同生活の失敗がもたらす不幸は軽減し、またかつて宿命と取られていた(アルコール中毒、暴力などの)状況の拒否があらわすように、パートナーへの要望が強くなったことだ。
結婚外出産 今日、ヴァレリ・ペルクレッスのレポートが示すのは、『結婚が出産にとって不可欠ではない』 事実だ。ユニオン・リーブルのカップルから生れる子供の率は1970年にはわずか7パーセントだったが、2005年には48.3パーセントになった。年長児に関しては、--- 2人目、3人目出産後に両親が結婚するケースが多いので --- 数字はさらに上がる:2005年では60パーセントの子供が結婚外で生まれている。「かつて社会規範に反していた出来事が月並みなものになった。」と1999年、フランシスコ・ムノズ-ペレーズとフランス・プリウは“人口と社会”紙で要約している。("Naître hors mariage/結婚外に生まれる" 1999年1月)
ほとんどの場合(92パーセント)子供は父親の認知を受けている。「結婚外出産の親子関係に与える影響は極めて少ない。」と議会調査レポートは認めている。結婚外出産は、子供の教育と生活に区別をもたらさない。2004年、パスカル・クレモン法務相はこの考え方の変動を受け、民法での(婚姻による)実子と(婚姻外の)私生児の区別を廃止した。「以来、カップルの法的立場がどんなものであろうと、子供の誕生が家族を社会的に生じさせる。」と、1998年の時点でテリ・レポートはすでに結論している。
半数近くの子供達が結婚外で誕生するフランスは、ヨーロッパ内でも伝統的モデルの衰退がもっとも強い国である:ドイツ・ポルトガル・ベルギー・スペインでは75パーセント以上の子供達が今でも結婚したカップルから生まれている。イタリアとギリシャではそれは90パーセントを越える。
片親家族と再構築家族 離別の増加により20世紀終わりには片親の家族と再構築家族が増大した。1999年、INEDによれば、子供の5人に1人以上は両親2人と暮らしていない(3百万人)。
多くの場合(63.2%)子供は母親と暮らしている。「女性の場合、離別から次のカップル形成までの期間の長さのためと育児教育負担のために、新たな共生生活への『復帰』はより少ない。『片親家族』と言われる家庭の子供は、片親とその(親ではない)パートナーと暮らす子供よりはるかに多い。」と議会レポートは指摘する。
40年間に、片親家族の数は倍近くになった:30年前には9.4パーセントだったが、1999年には18.6パーセントである。「母親だけに育てられる子供は確かにより多くなったが父親は存在している。なぜなら結婚外の子供の95パーセントは父親に認知されている。」とレポートを書いたヴァレリ・ペクレッスは強調する。両親の離別後、40パーセント以上の親は月一回以上子供に会っている。
再構築家族はさらに少ない:3百万以上の両親とは一緒に暮らさない子供のうち、28.2パーセント(80万人)が日常を義理の親と、時として義理の兄弟と共に暮らしている。
今日の家族 2000年代の家族形成は高年齢で--- 第1子出産は30代近くになってから---、そしてますます多くの場合子供の数は1人か2人だ。3人以上の兄弟を持つ家庭の子供は1968年には16.4パーセントだったが、現在は8.3パーセント --- しかし子供を持ちたいと言う欲望は今でも大変強い:(1人の女性に対して1.94人の子供という)出産率は、ヨーロッパ25カ国ではアイルランドにつぐ第二位にフランスを位置づける。1970年以来記録された家族の大きな変容は、驚くべきことにフランス人口のディナミスムに打撃を与えなかったわけだ。
隣国ドイツ・スペイン・イタリアの無気力さと対照を成すこのヴァイタリティは、極めて特殊な世界で繁栄している:フランスでは25歳から49歳までの女性の80パーセント以上が働いている。「ダイナミックな出産能力と労働市場での女性参加の両立というヨーロッパでの特殊性をフランスは示している。」と議会調査レポートは要約する。
この職業への大幅な投資にもかかわらず、女性は家庭労働と育児の2/3を負担する:平均して女性は男性の二倍以上の時間(一日5時間)を費やする。「結局、眼に見える変化がどうであれ、家庭内の義務分担に関しては大多数が伝統的モードを守り続けている。」とヴァレリ・ペクレッスのレポートは結論している。
アンヌ・シュマン/Anne Chemin
面白い記事、興味深く読了。ソースをたどってリポートをアマゾンにでも注文するつもりです。感謝。
投稿情報: 天神茄子 | 2006-02-03 09:22
いえいえ。
これ読むと、仏国の女性がなんでああなのかよく分かる。
ああ、というのは、ま、それ、言わないが花。
投稿情報: 猫屋 | 2006-02-04 00:21