極東でのナショナリズムの広がりと、中国・韓国・北朝鮮・日本、、+アメリカの絡む現状況と日本歴史のブラックホール、そして歴史否定主義について、(確かバンコク支局の)ドロンと東京支局長のポンス氏の記事訳出です。
極東での対話欠如
Dialogue manqué en Asie orientale, par Francis Deron et Pilippe Pons
ル・モンド記事(06.01.18日付)
外国排他ナショナリズムの広がりは、新しい潜在的冷戦の形をとっており、中国と日本の対立から、アメリカ合衆国と中国の対立へのシフトとも見てとれるだろう:北西アジアで立ち上がる緊張を描く危険なシナリオには事欠かない。内政への影響を計算した政治関係者の(各国間)不調和利用の後ろには、一方に中国と北朝鮮の関係悪化が、またもう一方には中国と日本の関係悪化があり、それらは新たな紛争の原因となりうるだろう。
いくつかの疑念要素が、世界のこの地域を不安に陥れる。ここでは意見の違いを議論し同意の基礎となすような対話の場が不足している。中国の経済発展という重みが日本から地域リーダーとしての立場を奪い、国内では軍事大国という属性への野望が活性化する。かつて親米反共の砦だった韓国ではアイデンティティ意識が強調され、北朝鮮との和解が促進、社会・政治変革が進んでいる。
これまでは、制度機構間の歩み寄りよりもプラグマティスムが、アジア共同体を押し進めた要因だった。大幅な人口増加にともなう地区の消費渇望は、地域内での交易の増大を生み、やがて必然的に経済と政治のより大きな統一性が求められる。しかしながら、12月中旬マレーシアのクアラルンプールで開かれた16カ国参加の東アジアサミットは、この地域の文化・政治・経済の多様性と相容れるような 『開かれた地域主義』 へ向かうべき決定的一歩を見せることはなかった。反対に、リーダーの不手際によって化膿してしまった過去の傷のためにプラグマティスムは躓き、その限界を見せた。リーダーたちは、現実の共同体組織に必要な最低の相互信頼(確立)に着手する。
特に中国と日本の敵対関係は、歴史的係争と地政学的ライバル意識、そしてエネルギー獲得競争に起因しており、地域の将来に大きく影響する。
呼び起こされた議論の重みを抱えたこの雰囲気の中では、ささいな偶発事も新しい論争の火種となる。中国情報局からの脅迫を招いたとされる2005年12月に明らかになった日本上海領事館エージェント自殺の件がこれにあたる。軍事予算増加率が二桁におよぶ中国からの『深刻な脅迫』についての日本国外務大臣Taro Asoの発言は、北京にショックを与えた。現在の中国と日本・韓国の関係において、極東には現実としての経済力がもたらすはずの親和原動力が、奇妙なかたちで欠如している。
小泉純一郎日本国首相の度重なる靖国神社訪問 -- ここには14人の戦争犯罪者、うち7人は極刑、を含む祖国のために死んだ魂が奉られている -- は、隣国から、過去の領土拡張主義の免罪化とみなされている。北京とソウルの延期依頼にも関わらず行われた前回10月の首相当神社訪問は、日本の尊大さの表明と受け取られた。東京によれば、小泉氏は日本の、過去を繰り返さないという使命を 『瞑想する』 ために靖国に赴くと言う。けれど、靖国に奉られた魂のなかには日本がサンフランシスコ講和条約によって受諾された国際法廷判決有罪者が含まれる。さらに、日本国首相は事を最小化する代わりに、新年演説の中で、中国および韓国が予定されていた会合を未期限延期した態度を激しく非難している。
日本における否定主義の復活
東京では、首相の靖国参拝の取り止めは中国の態度を変えることはないだろうと言われている。日本を孤立化させ、また地域内に確立させたい政略的パートナーシップ着手を目的に、中国は過去をツールとして利用している、というものだ。けれど(靖国)訪問を非難するのは中国ばかりではない。日本植民政策の犠牲者である韓国も同様な態度を取っている。そして、それ以外の同地域諸国(が小声で発する意見:原文では mezza voce )も、北京とソウルのとる観点からさほど遠いわけではない。それの反応として、これまで東京国際裁判判決に異議を唱えてきた日本右派は、直接近隣国に対する世論の感情的ナショナリズムに呼びかけようと試みる。
アメリカ合衆国はクアラルンプールに招かれてはおらず、会談は北京・東京間の強まる敵対心を目立たせるものだった。合衆国に密接に結び付けられた日本は、これまでの地域会談において、支配的強国システムの一部という立場をとっていた。今回の日本は単独で中国に対面した。
小泉政権は、ワシントンとの同盟に支えられ、自己の歴史観を中国に強いることが可能であり、また韓国もそれに倣うだろうと考えているようだ。中央アジア三国間の緊張に関して、アメリカ合衆国はこれまでのところ一歩引いた立場を取ってきたが、日本での否定主義といった現象が他諸国へ与える影響について、懸念を持ち始めている。
歴史書替えに関して、中国には教訓を与えうる資格などないのだが、1945年の敗戦以降、日本が平和主義を守り開発援助を通して地域経済興隆を助けながら、公的歴史において軍事時代の責任については明確にしない点をうまく利用することができるだろう。
小泉政権内で、この『ブラックホール』が自民党右派のカムバックと結びつき、安全保障上の利益を危険にさらすリスクがある。いずれにせよ、東京の態度は地域統合の障害となる。
『戦争犯罪者の前で頭を下げるこの人物』に関するいくつかのキラー(原文:assasines )台詞をもって、中国は現状況下では、これまでもその選択ではなかった地域マルティラテラル/多元主義カードを出す準備がないことを表わしている。中国は9月に予定される小泉後継者を待っている。その時までアジア2大国間関係が悪化し続けるリスクがある。
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ところで全然関係ない話なんだけど、パリに舞い戻ってきたイスラエル娘と話してて、「なんか日本は合衆国の51番目の州だとか言ってる連中がいるんだよね、日本で。」って言ったら彼女「あ、それ間違ってる、だってアメリカの51番目の州はイスラエルなんだもん。」と反論されてしまいました。困ったもんだ。この現象を合衆国51番目の州ユニバーサリズムと名づけようかとか、、、いや別に意味はないですが。
追記:BSなんて高尚なもんはキャッチしてない同胞(猫屋を含む)宛のクリップ。NHK-BS1の番組「アメリカは日本をどう見ているか」を見たTORA氏による実況中継です。阿修羅から。
是非ともこの記事の概要教えてください。
猫屋さんの意訳でおねがいしますだ。
投稿情報: クノちゃん | 2006-01-19 03:48
今は朝4時なんで、たぶん明日やっつけてみるつもりですだ。
投稿情報: 猫屋 | 2006-01-19 03:54
こちらにもお邪魔しました。>猫屋さん
ガヤトリ・スピヴックによれば、日本は東洋のイスラエルだそうです…
投稿情報: 骰子一擲 | 2006-01-19 07:48
つーか、たしかアジアだったか。
パレスチナの地もヨーロッパにとっては「オリエント」な
わけだから。
投稿情報: 骰子一擲 | 2006-01-19 07:50
骰子一擲さん、らっさーい。ブルゾン似合ってますか?
極東のイスラエルね。知らなかった。でもどうゆー経過でそうなるんだか、、、
なんか、日本でもイスラエルのヒトになりたがってるのも多いみたいだけど、やめたほうがいいのにねえ、ラーメン食べられないし、、、映画 Lord of War で主人公の父親がコネクションほしさにユ系ウクライナ人だってことにして、それでだんだんシナゴーグに通ったりしてそれなりにカシェールになっちゃったりってエピソードは笑えました。変な民族だよね。ま、民族の幻想性があそこまで“真実”になっちゃった例はめずらしいけど、、、ってーと、日本も似てるか、、うーん。パレスティナの中の内の人はいい迷惑なんだけど、てか、ひどすぎ。
投稿情報: 猫屋 | 2006-01-19 09:12
おはようございます。パスカル・オジェ並みの足が欲しいです…(しつこい。現在徹夜で作業中ですので。
たしかイギリスの名前も挙げていたので、おそらくはアメリカにとって、という意味なのでしょう。
ところで、猫屋さんに秘密でアドレスをお送りすることはできないのですか?
投稿情報: 骰子一擲 | 2006-01-19 09:35
クノちゃん、
今夜は夜遊びして、訳が出来るのはちょと遅くなりそうで、、、と
ご報告まで。
投稿情報: 猫屋 | 2006-01-20 00:31
僕の周りでは,猫屋さんとこのイスラエル娘の51番目の州の話し、うけて、うけて。
しかしその後に続く話しは「日本は州以下か,やっぱ植民地か」が程んとで,さすがイスラエルと51番目の州を争う話しにはなりません。皆さん,よくわかっているようです。
投稿情報: クノちゃん | 2006-01-20 02:07