« アルプスでスキーが好き | メイン | 『私はイスラム離反者』、アヤーン・ヒルシ・アリ -- ル・モンド記事翻訳 »

2006-02-12

コメント

fenestrae

お帰りなさい。いい時に休暇をとりましたね。休暇後リフレッシュしているとこで、エスプリ派だけさらうとはちとうらやまし
カナールの調子をほうふつとさせる訳、原文は読んでいないけれど、ゲラゲラというかニヤニヤというか堪能しました。感謝すべきことに読んで笑うことはまだ禁止されていない。

こちらは時間がないにもかわらず、どうせなり手のいないふらんこふらんせ共和国がちがちライシテ派をまともに引き受けたので、ちとしんどいですが、白い冷たい液体とともに、再始動。
遅れ馳せながらハラキリシャルリーエブドを買いにいったら3軒めでももう売り切れで、遠出したくないのでやめました。タバのおばちゃんの話ではやはりいつもと違う空気があるということですが、まあどうってことない話なのでパス。

猫屋

どうも。
前倒しBOBO的休暇を眼一杯楽しんできました。TVニュースも地方版がオリンピックばかりなんでほとんど見なかったし、ル・モンドも翌日のしか手に入らないので買ったのは水曜のカナールだけでした。読み進めるつもりだったレイモンアロン自伝もドゥルーズの“哲学とはなにか?”も、20ぺージぐらい進んだだけです。まさにヴァカンス・モード。

fenestrae氏のところは大変だ。
JMMの最新配信でデンマークの高田さんが、デンマークで最初にメディアに出たイスラム団体の性格(あるいは性格の不明瞭さ)などについて書いています。
以下引用--『ダマスカスでデンマーク大使館が放火された背景には、「コペンハーゲンでコーランが焼かれるらしい」というデマが携帯電話のメールで流されたことがきっかけとな
りこれに激怒したムスリムが大使館前に抗議のために集まったようですし、こうした
暴動を誘導する動きがあることも事実として浮かび上がって来ています。』---引用終わり。
今回の現象が、一部のメディアが紹介するような 『イスラムvs西欧』というシェーマからは程遠いポリティカルな多重かつモザイク構造をもってる事実はなかなか見えてこないのが現状だと思います。こちらのジャーナリズムにしても、社会学や歴史学者にしてもそれぞてのオリジンは複雑だし、(少なくとも良質な人間は)フーコーなりサイードを読んできた世代だということは指摘してもいいでしょう。

また、欧州にある『自由』概念には、かつてファシズムがどうやって台頭してしまったのか、、という“記憶”が大きく作用しているわけです。では日本ではその歴史がどう捉えられているのか、あるいは日本のジャーナリズムがそういった“歴史とエチック”概念をどう考えているのかももっと語られるべきだと感じます。“自由”というのは上から与えられるものではなくて、ほおって置いたらなくなってしまうものなんだ、というのはこちらでの共通概念かと思うんですが。

shiba

訳出、お疲れ様でした。

私自身はフランスで生活する中で、TV討論やらフランス人同僚との会話やらで西欧中心主義的な言説に出くわす事もあり、憤懣やるかたない気持ちになってうちで吼えたりしてるんですが、今回の件に絡んで日本在住者の意見が「文明の衝突」ベース、サイード「オリエンタリズム」的に西欧非難が多くて、時々の咆哮にも関わらず好んでフランスに住むものとしてはちょっと悩んでしまいました。
日本人がサイード「オリエンタリズム」に同化するポイントは西欧中心主義の犠牲者というところだと思いますが、あんまり度が過ぎてvictimisationにならないようにしたいです。

自由とファシズムについて自分んとこのエントリーで触れたのですが、このコメントを読む前(&オフ会話の前)に実はちょっと下書きを始めていました。奇遇。あと、fenestraeさんの力作まとめを読んで、今回の問題について考え直した部分などもあり、また、リアクションのリアクションというか(ってすごい反動的ですね)あんまり西欧非難に引っ張っていかれたくなかったのとで、今回は自分の中でバランスをとるのにちょっと苦労しました。

それにしても、政治的煽動という話は日本で報道されていないのでしょうか…。報道されていても、「そんなことは問題じゃなくてやっぱり文明の衝突なんだ」と言われるのでしょうか。なんか不思議。

猫屋

どもです。
今回のカナール記事、2人いる編集長の一人が書いてるんだけど、かなり本気のようでいつもの茶化し気分はない真面目な文体。結局翻訳は簡単でした。政治的煽動については上のコメント欄で挙げたJMM(今すぐならウェブでも読める 
http://www.jmm.co.jp/recent.html)のデンマークの高木さんやレバノンの安武塔馬さん。あとドイツの美濃口さん http://www.geocities.jp/tanminoguchi/20060207.htm が部分的には書いてるけど、欧州でも日本からの情報しか読んでない人は、イスラム圏での政治内部での抗争については気がついてないように思う。(かえって上の記事訳した時は考えなかったけど、ル・モンド関連記事読んでからカナール記事のジャスト・ミートさにびっくりしました。)

あと“オリエンタリズム”の問題は、ではオリエント側はどう対応すべきなのか、、ってとこだろう。サイードの本が出版されたのは1979年だし、サイード自身アメリカ国籍も持つキリスト教徒だ。そういった彼のアンビバレンツさが、欧州というのがオリエントを一種の鏡としてアイデンティティを形成していったというのを歴史のなかに見る本を書かせたと思う。では、対するオリエントにとって抽象としての西欧というのは一体なんだという考察をしなければいけないわけだ。おまけに現在の地政は79年当時のものとは大きく変わっているわけだし、サイードが望んだパレスティナはどんどん現実から遠のいてしまっている。

ブラック・アフリカもイスラム圏も、原油の値段が上がれば上がるほど政治的に不安定になっている。911の原因のひとつが、イスラム圏内での勢力抗争だったと言う視点は欧州以外の場所からはよく見えてこないんだろうとも思う。もっと大きいスケールで言えば共産圏の消滅と世界資本のフロンティア開拓にまで行くんだけどね。

またマクドナルドも燃やされてたりします。つまり、たとえばイランでは反米反イスラエルで国家のまとまりを作ろうとしてるんで、デンマークはさして重要じゃないよね。安武さんによるとシリアのデモは最初穏健なスンニ派イスラム組織だったんだけどこれに過激分子が紛れ込んで煽ったらしい。いやな図式になって来ました。米副大統領チェイニーは猟銃で間違って友人を撃っちゃったらしいしさ。

この記事へのコメントは終了しました。